第6話 ストーカー
坂本を倒した後、その建物を出る。入る前にいたサラリーマン風の男に仕事が完了したことを伝え、帰路につく。
「あの、いつまでついてくるんですか?」
それまでずっと感じていた気配に声をかける。
「やっぱり気付いてたか。」
電柱の間から男が出てくる。
「一さんですよね。今は授業中でしょう?」
「夏樹だ。高井夏樹。まぁ偽名だけどな。」
(別に名前は聞いてないけど)
「何かご用ですか?」
「お前が零だろ?」
「はい」
「あっさり認めるんだな」
(特に隠してないからなぁ。)
真意の見えない相手にどうしたらよいか分からず、とりあえずお辞儀して帰ろうとする。も、もちろん行く手を阻まれた。
「本当に零なんだな。俺、俺・・・」
「・・・・・・」
「俺ファンなんだ!!!!」
「え?」
予想外の展開に頭が処理しきれない。てっきりこのまま殺し合いにでも移行すると思ってたのに。
目の前の青年はキラキラと瞳を輝かせてこちらを見つめてくる。
「俺のこと、弟子にしてくれ」
「イヤです」
即答し、相手が呆気にとられている間に横をすり抜ける。
が、またもや前方を塞がれる。
「待ってくれ。理由、理由だけでも教えてくれ」
「・・・・・・・初めてちゃんと会ったときに、虫唾が走るって言われたから。」
「あっ。あのときは、その悪かった。ごめんなさい。」
(急に小型犬のように謝られても、別に情は湧いたりしないけど。)
「貴方も他の生徒達のように噂を鵜呑みにして、私を出来損ないだなんて思ったんでしょう?それに、私が実際に出来損ないだったとしても、相手を侮っちゃだめ。噂に振り回される人を弟子にしたいと思わない。」
蛍が何かを発するごとに、顔が険しくなっていく。
(言い過ぎかな?まぁ、弟子なんて面倒だし。適当な言い訳だけど)
パチンと両手を合わせる。
「今日の教訓。噂を鵜呑みにせずに、自分で情報収集しましょう。あくまでも噂は参考程度に。」
それだけを残し、今度こそ彼の横を通り過ぎる。
しかし、完全に甘かった。この日以降、授業中も休み時間も私はこの高井夏樹に追いかけ回されるはめになったのだった。
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