第5話 ターゲット 坂本優屋

起き上がり時間を確認する。現在時刻10時半。学校のみんなは2時間目ぐらいだろう。とりあえず起き上がり準備をする。

準備を終えるとパソコンを開き、坂本優屋が所属している組織のパソコンにハッキングする。坂本優屋に関する噂は何度か耳にしたことがある。しかしそれは噂に過ぎない。蛍は毎回、噂は参考程度とし、自分自身で調べることを重要視していた。

「坂本優屋38歳。今までに暴力団を一人で制圧。その他にも同業者殺しでも結構な名を挙げてるなぁ。ふーん。得意な武器は銃か。」

プロフィールを閲覧した後、映像ファイルがあったため、それも拝見する。

普通はハッキングから時間が相当かかるものだが、蛍の場合それすらも簡単にやってのける。

「うーん。なるほど。25分かなぁ。あの人に渡しておけば良かった。」

映像を確認した後、そのままパソコンを閉じて部屋を出る。

「まぁ、仕事は仕事だしなぁ」

そんなことを考えながら、電車などを乗り継いで坂本が潜伏しているであろうアジトを目指す。先ほど、映像とともにメッセージアプリにもハッキングし、坂本と依頼者のメッセージを確認したため、大体の目星はついていた。

電車を降り、一つのマンションの前まで向かう。そこには、スーツを着たサラリーマン風の男が立っていた。

「零様。お待ちしておりました。近隣住民の移動、マスターキーの準備はできております。」

「ありがとうございます」

彼は暗殺をサポートする事務局の者だ。毎回どのようにしているのかは分からないが、近隣住民の避難や遺体の処理など様々な仕事をしてくれている。

中に入ると、受け取った鍵を使ってエントランスに入り、そこから彼のアジトまで向かう。

部屋の前までつき、インターホンを鳴らす。

「はい」

中からはけだるそうな、警戒しているような声色が聞こえてきた。

「すみません。私、隣の隣に住んでいる者なんですが、他の住民の方が急にいなくなってしまって、何かご存じですか?」

「知らねぇな」

彼の声色は一気に警戒モードに変わる。

(そりゃぁそうだ。だって住民が急に移動したなんて変だもん。そこに登場する私。警戒する理由しかない。)

蛍はそれを理解した上で言っていた。暗殺者の部屋を訪れる客なんてほとんどいない。それこそ、依頼者以外は自分を暗殺しようとしている同業者くらいだ。だからこそ、相手に自分が同業者であることを知らせる。その方が出てきやすくなるからだ。坂本のように、自分の腕に自信があるタイプはほぼ必ずと言っていいくらい。

案の定、ドアはすぐに開いた。坂本が銃を構えた状態で。

パンッ。

銃声が響く。蛍は瞬時に下にしゃがみ右足を勢いよく伸ばして相手のスネを蹴った。入り口は狭いため、威力は落ちているが、相手はよろける。

(体幹もまぁまぁか)

そのまま、銃を持っている右手を押さえ肘にローキックをお見舞いする。

相手は銃を握っている手を緩め、銃が滑り落ちる。落ちた銃を右足で後方に蹴り飛ばす。相手は頭突きをしてきたため、袖からナイフを滑らせ、そのまま相手の前頭葉のあたりに刺す。

 (仕事はこれで終了だ。)

仕事完了のメッセージを学園長に送信する。

ナイフはそのままにし、銃を回収し遺体を部屋の中に移動させる。

今回は証拠隠滅などの仕事はとくに重要じゃないため、そのままにして外に出る。


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