第3話 学園長と零
血だまりになった床を見下ろし、目の前の老人は掃除が必要ですねぇと呟いた。
「それにしても、死にゆく人間に名刺ですか。いや、やはり貴方は格が違う」
「そうでしょうか、もしかしたら息を吹き返すかもしれませんよ」
目の前の老人は、顔面に微笑をたたえている。
(相変わらず、読めないな)
「それにしても、また1位を更新しましたね。おめでとうございます。」
「・・・・・・・」
(テストって言っても、筆記試験だけだったら学年ビリだけれど・・)
「テストだけだったら確かに貴方の成績はすさまじいですね」
「心を読まないでもらっても良いですか?」
「暗殺術基礎 0点 毒殺術基礎 0点 保健 0点 サイバー攻撃 0点、その他教科も含めて合計0点。最早才能ですよ。実技・・・もとい暗殺人数だけで1位をキープしてるんですから、たいした物です。それに、その相手も極悪非道な悪党ばかり。しかも、どんなに遅くても1時間で証拠隠滅までやってのけるんだから、これはまさに『怪物』のなせる技ですね。」
(変わらずのチクチク攻撃。この間本で読んだ、姑?みたい)
「お褒めの言葉ありがとうございます。テストに関しては、鉛筆を持った瞬間に眠気が来るので、鉛筆に何か仕込まれてるのかもしれません・・」
「単に勉強が嫌いなだけでしょう。1年生にしてこの学校のトップなのですから、もっとそれ相応の行動を・・・」
(始まった。こうなったら長いんだよなぁ。今日はカレー食べたいから、福神漬けもスーパーで買って・・・)
「聞いてませんね。」
(当たり前でです。どうせ聞いても同じ話なんですもの)
返答を心の中で返すも、一応キョトンとした顔をしておく。
「それよりも、先生はテストに参加しないんですか?先生の実力だったら2位にはなれるはずですよね」
「ふはははははは」
唐突に学園長が笑い出す。
(この人のツボは未だにどこなのか分からない)
「いや失礼。私は2位ですか。お世辞でも1位と言わないその自信。実に素晴らしい。」
「事実ですから。」
確かにと言って、まだ笑い続ける学園長に、いつか一服盛ることを決意する。
(まぁきっと気付かれると思うけど。)
「あっ、そうだ。良いターゲットいませんか?私より強そうで変態チックな人」
「貴方以上を探す方が、鳩に暗殺を覚えさせるよりも難しいですよ。」
(その例えはよく分からない。)
「まぁ良いでしょう。貴方ほどとは言わなくても、他の人が手こずるであろう人を優先的に回しますから。」
「じゃぁそれで、では私はカレーを食べるので失礼します」
そう言い残し、部屋を後にする。
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