第2話 新たな日常

次の日の朝、藤原直人は、昨日の出来事を思い出しながら学校に向かっていた。神社で出会った詩織と、教室で隣の席に座ることになった優奈。そのどちらの記憶も、鮮明に彼の中に残っていた。


学校に到着し、教室に入ると、優奈がすでに自分の席についていて、周りのクラスメイトたちと楽しそうに話していた。彼女はすっかりクラスの中心的な存在になっており、その明るい性格のおかげで誰とでもすぐに打ち解けているようだった。


「おはよう、藤原くん!」


直人が席につくと、優奈が明るく挨拶してきた。直人は少し照れながらも、「おはよう」と返した。


「昨日はありがとうね。隣に座れて嬉しいよ!」


「こちらこそ…いや、別に僕は何もしてないけど…」


優奈の無邪気な笑顔に、直人はなんとなく居心地の悪さを感じながらも、彼女の純粋な明るさに救われる部分もあった。彼は普段、人と深く関わるのが苦手だったが、優奈の存在が少しずつその壁を崩しているようだった。


その日の放課後、直人はいつも通り自転車に乗って帰宅する途中、ふと昨日の神社を通り過ぎた時に足を止めた。境内からは、昨日と同じように詩織の姿が見えた。彼女は鳥居の前に立ち、静かにお参りをしている。


直人はなぜかその光景に引き寄せられるように、少し遠くから彼女を見守っていた。詩織の動きはゆっくりと落ち着いており、その姿にはどこか神秘的なものがあった。彼女の存在が、直人にとって新鮮であり、興味を引かれるものであったのだ。


「藤原さん?」


突然、詩織がこちらを振り返り、直人に気づいたように声をかけた。直人は驚きつつも、少し距離を詰めて歩み寄った。


「あ…こんにちは。昨日はありがとうございました。」


「こちらこそ、お怪我がなくて良かったです。今日は何か用事があったんですか?」


「いや…特に用事はないんですけど…ちょっと、通りかかっただけで。」


詩織は微笑み、優雅に頭を下げた。その姿は再び、直人の心に静かな波紋を広げた。


「そうですか。もし良かったら、少しお茶でもどうですか?神社の茶室でゆっくりできるんです。」


「え?あ、はい…」


突然の誘いに戸惑いながらも、直人は詩織に従うことにした。茶室に案内されると、そこは小さく落ち着いた場所で、古風な作りが印象的だった。詩織は手際よくお茶を準備し、直人に差し出した。


「どうぞ、リラックスして。」


「ありがとう…」


直人は緊張しながらも、お茶を一口飲んだ。その味わいはほのかに甘く、心が落ち着くような感じがした。


「ここに来ると、気持ちが落ち着くんです。藤原さんも、そう感じていただけたなら嬉しいです。」


「そうだね…確かに、なんだか落ち着く場所だね。」


詩織との会話は、静かで穏やかなものだった。彼女の言葉にはどこか癒しの力があり、直人は自然と緊張を解いていく自分に気づいた。


二人で過ごす静かな時間は、直人にとって特別なものに感じられた。詩織は、直人の平凡だった日常に少しずつ変化をもたらしていく存在であり、彼女との出会いが彼の心に新たな感情を芽生えさせていた。


---


その日の帰り道、直人は詩織との時間を思い返しながら家に帰った。二人の少女との出会いが、彼の日常を少しずつ変えていくことを、直人はまだ知らなかった。

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