第三話 助けられない、イトコを。
私達はあの日から、まーちゃんをいじめから救うために計画を立てた。
そして決めたことは三つ。
一つ目、いじめられたらイヤだと言う。二つ目、すぐにイトコの皆に相談する。三つ目、動物の耳が生えちゃうのは変なことじゃないことを常に心に留めておく。
でも本当はいじめを先生に相談した方が良いんだけど…コン兄言わく、それはダメらしい。
マーちゃん自身も親に迷惑をかけたくないと言うことだった。
だから、私達がサポートするんだ。いじめられて、イヤだと思う時に逃げられる場所を作って置きたい。
私は物陰からくーちゃんと一緒に三年生二組を見つめる。
犬斗はまーちゃんのことが好きだから、もしかしたら殴りかかるかもしれないから置いてきた。本当に、まーちゃんのことだけ考えるから…。
扉のガラス部分から微かにまーちゃんが見えた。
結芽ちゃん、に確かいじめられているんだよね…。結芽ちゃんってどの子だろう。そう思った時くーちゃんが言った。
「あっ、あの子が結芽ちゃん!」
「そう、なんだ……」
ツインテールの女の子がたくさんの人に囲まれて笑っている。
その端っこでポツンと本を読んでいるまーちゃん。見ているだけで悲しくなった。
避けられているのが丸分かり。結芽ちゃんはまーちゃんを遠巻きに見つめながらコソコソと友達と喋る。あ~、とくーちゃんはつぶやいた。
「結芽は、決めたら曲げない性格なんだよね…、昔はまのと仲良かったのに何でそんなに嫌がるんだろうっ!許せない!」
「うん、うんっ!」
「はぁ―――……」
本当に何とかしたい。
結芽ちゃんは友達に呟いた後、教室から出て廊下のロッカーに近づいた。
えっ、何をするの?私とくーちゃんが不安になる中、結芽ちゃんはまーちゃんの体操服入れを手に取る。
「「あっ!」」
体操服を中から取り出し、水道の水をかけ始めた。
と思うと、次は足で踏みつけ始めちゃったんだ!
な、何をするの!?思わず声が出そうになる。れ、れ、冷静に、……ならなきゃっ…!でも、私の心は怒りで埋め尽くされたまま。
くーちゃんは唇を震わせ、顔を真っ赤にしていた。
 ̄/¬_ ̄/¬_
そのことをコン兄と犬斗に伝えた。
まーちゃんは習い事で今は不在。だから、まーちゃんのいじめについて心配をかけずに話し合える。
「やっぱりですか……」
コン兄は、ハァとため息をついた。その勢いで水を飲み、ガシャンとコップを置く。あからさまに怒っている。コン兄が怒るなんて久しぶりだ。
犬斗は…やっぱり。涙を浮かべてぶるぶる震えている。はえる耳が柴犬の犬斗だけど、ブルドッグに変えたほうが良いと思う。なんて言ったら絶対に怒られちゃうけど。
「どうする!?このままじゃまのがっ……まのがかわいそうだよ」
「ぞ、ぞうだよべ…」
「犬斗さん、涙拭いてください。まのんさんのために泣いてくれるのは、嬉しいのですが……」
このままじゃ…助けられない、イトコを。
私が出来ることは、これだけなの?
「やっぱり動物の耳を生やさないようにする?」
「でも、そんな方法あるのかな?」
この耳が生えるのは生まれつき。
そんなものを変えるなんて………難しい。そう思った直後、コン兄が口を開いた。
「イトコも、イトコの親も、動物の耳が生えたり羽が生えたりする。ということは……………家系が関係しているのでしょうか」
「えっ、コン兄本当にやるの?」
「でも結芽さんは強敵。耳が変だから避けているんでしょう?ならば耳を生えなくさせるのが最善なんですよ」
た、確かに……。それもそうだ。
私のお母さんにコン兄のお父さん、くーちゃんまーちゃんのお母さんは
それならコン兄の言う通り家系が関係?
「もしかしたら、おじいちゃんおばあちゃんが特殊な能力を持っていたとか…?でもおじいちゃんおばあちゃんはお亡くなりだよね、姉ちゃん」
「うん、そう聞いてたけど」
「でも、祖父母に秘密がありそうです。父や叔母さん方に聞いてみますか?」
「「「うんっ」」」
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