第二話 耳が生えるのは大変!?

 私はコン兄の家のリビングで、叔父さん叔母さんとお話をする。

 そうそう、私のお母さんは鶏の羽、クノちゃんマノちゃんのお母さんはクジャクの羽、そしてコン兄のお父さんはスズメの羽が生えちゃうんだ。

 だから、『ニワ叔母さん』『キュー叔母さん』『スズ叔父さん』と言われている。

 ちなみに三人は兄弟なんだけど……おじいちゃんおばあちゃんは私達が生まれる前に………亡くなってしまっているんだ…。


「あら、ちょっとお母さん達だけで出かけてくるわ。ごめんね、五人でおしゃべりしておいて。すぐ帰ってくるわ」


 私のお母さんがスマホを見て、立ち上がった。


「分かったよ」

「「行ってらっしゃーい!」」

「ごめんね、狐平君よろしくね」

「あ、はい」


 するとそそくさとお母さん達は家から出て行ってしまった。毎回こんな感じなんだよね……。何でだろう。でも、大事な用事なのかもしれない。もしかしたらおじいちゃんおばあちゃんのお墓参りかも。

 私が顔を上げると、マノちゃんが急に顔を歪めた。


「どうした、まのんさん?」

「ケント君……」


 あ、あちゃあ。ケントはマノちゃんのことが好きだから、マノちゃんに話しかける時だけは敬語になって………。

 はぁ、キャラクター作っても意味が無いんだよケント。


「あのね、今……」

「「クマった、クマったな状態なんだ」」

「出ましたね、いつもの決め台詞」


 コン兄がすぐに突っ込む。

 いつもこれを言うから、軽いことなのかなと思っちゃう。でも、マノちゃんの顔は強張っていて、真剣そのものだ。

 私は息を飲む。


「あのっ…その……いっ…じめられていて………」

「「「「えっ!?」」」」


 いじめ…って、あのいじめ!?

 上靴を水に浸されたりとか、陰口を言われたりする!?あの!?

 私は信じられなくなり、ただうなずくことしか出来なかった。


「どういうこと、ですか…?」

「えっとね、この前、遠足があった時…」

結芽ゆめちゃん達が、マノの熊耳が変だって言ってたの!」


 クノちゃんが怒ったように言う。

 そんなことで…? 目を潤ませてうつむくマノちゃんを見ると胸が苦しくなった。

 私のクラスは、私の猫耳を「面白いね」と受け入れてくれている。でも、確かに耳が生えちゃうのは……珍しい。というか、私達以外にはいないと思う。


「結芽ちゃんは、マノとすっごく仲が良かったのにっ!」

「クノお姉ちゃん、怒らないで……」


 クノちゃんの怒りを何とか抑えるマノちゃん。


「それはどうにかしたいよ、ねぇ姉ちゃん!」

「う、うんっ! もちろんだよ、私達イトコでしょ?」

「でも…いじめっ子に刺激を与えると逆効果になる可能性が……精神科の人に相談? いや、でも…………………」


 こ、コン兄…すごい。精神科と考えるのはきっとコン兄しかいない。

 でも言う通り。いじめっ子に刺激を与えるのは……危ない。


「耳を…生えないようにするってのは…?」


 犬斗がポツリと呟いた。その言葉にマノちゃんが顔を上げ、目を見開く。

 確かにそれが良い。けど、…………そんなこと出来る?

 私達に耳が生えちゃうのは生まれつき。それを変えることは難しい。手術なら……でも…そんなことをしたらばれて、研究されちゃうよ。


「その方法を使う前に、まずはいじめをどうにかしましょう」

「……そう、だね」


 コン兄の声にイトコの皆が頷いた。

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