第8話
暗いリビングルームは、窓から差し込む月明かりだけが床を照らしていた。
暗闇のリビングルームを用心深く動き回る人影があり、適切なBGMが流れるシーンはホラー映画として合格点だ。
黒い影はコーヒーテーブルの前に来ると立ち止まり、テーブルの上のワインに特に興味を持ったようだった。具体的には、手に取って眺めてはまた置いた......
新しい日が明けると、朝7時の日差しはひときわ厳しく、顔を上げられないほどチクチクする。李远游は朝食を作り、二階に上がって余亦の部屋のドアをノックした。
[ノック、ノック、ノック]
“余亦はもう起きた？朝食を食べにいらっしゃい。”
“カチッ。”とドアが開き、きれいになった余亦が戸口に立った。
“今日はあなたの好物を作ったから、おいで。” 李远游は温かく挨拶し、余亦の肩に腕を回して外に連れ出した。
ドアの陰に隠れていた潘以皓がそっと二人の後を追い、ゴルフクラブを振り上げたことは誰も知らなかった。
“フー、フー、フー......”
余亦は息をのんだ。脳が眠気を催し、後頭部が時折チクチクと痛むため、簡単に頭を上げることができない。しばらくして、彼は落ち着きを取り戻したのか、派手に頭を上げた。
[これはどこだ？]
[車庫のようだ。]余亦推測した。
そこは彼が行ったことのない場所だったが、犯人は彼を他の場所にすぐに移動させる手段がなかったので、別荘の1階にあるガレージにしたのだろう。
“あら？ 起きてたの？”聞き覚えのある声が潘以皓から聞こえてきた。
“李源宇は？”余亦は聞いている。
“まだ他人を気遣う心があるのか？ ほら、これだよ。”潘以皓はガレージのドアを指差し、笑顔で言った。
無傷の李远游はガレージに入り、いつもの春のような笑顔でユイを迎えた。
“やあ、余亦。”
この瞬間、余亦はもう逃げられないと確信した。ただ、この2人が一緒になるとは思っていなかったようだ。
“herrickはどうやって死んだのか？”
“なぜherrickが死んだと？”李源宇は不思議に思った。
“彼が死んでいないなら、私と一緒にここに縛り付けられているはずだ！”
李远游はうなずき、微笑みながら次のように褒めた：“君がこのメンバーで一番賢いことがわかった。 君がそんなに賢いなんて信じられないよ。 よし、herrickがどうやって死んだか教えてあげよう。”
“ちょっと待って......話を聞くにはお酒がないと美味しくないから、コーヒーテーブルの上に飲みかけのウイスキーがあるのを思い出したんだけど、取ってきてくれる？ 最後の頼みだ。”
李远游は潘以皓の決断を待っているかのようだった。
“いいよ。”潘以皓はポケットからナイフを取り出し、テーブルの上に置いた。すぐにワイングラス2つと外国産のワインをもう1本持って戻ってきた。
テーブルの上にワインを置くと、潘以皓は自分と李远游にそれぞれグラスを注ぎ、悪い笑みを浮かべながら余亦に向かってグラスを掲げた。余亦がワインを欲しがっているのを見て、彼はそっとワインに口をつけた。
“うーん！ このワインはうまい！ 後で何本か買おう。 飲めないのが残念だ。”
潘以皓はユイの向かいに座り、ワインを飲みながら足を伸ばしてため息をついた。
潘以皓が一口、また一口と延々と飲み続けるのを見て、余亦は焦りを感じた。
“ワインは飲み干したので、次は物語を語ろう？“
“オーケー。”
時計の針を戻す。
4人が二人部屋から出てきた昨日に戻る。
奇妙な体動事件で、4人はもう一口も食事を口にすることができなかった。
テーブルの上に丁寧に並べられた料理がだんだんと冷めていくのを見ながら、李远游はどうすることもできず、黙って荷物をまとめた。
“麺を茹でるけど、食べる？”
誰も返事をしなかった。李远游は気にせず、準備を始めるために振り返ってキッチンに入った。
リビングルームには3人しか残っていない。潘以皓と同じ部屋にいたくなかったので、herrickは余亦を引っ張って中庭に走り、月明かりを浴びた。
何もすることがなかった潘以皓は、しばらく携帯電話をいじりながら、中庭の二人組がしばらく居間に戻ってこないことを確かめるように首を傾げ、静かにそっと台所に入って、さりげなく角を見つけてもたれかかった。
“金楚を殺したんだろう？”
野菜を洗っていた李远游の動きが止まった。
潘以皓は李远游がそう簡単には認めないことを知っていて、独り言を続けた：“二人の遺体は並べ替えられており、死因と犯人を知っている人物がいることを示唆している。”
“心配しないで、私は死体を動かしていない。疑われているのは外にいる2人だけだが、もちろん2人が共謀した可能性もある。”
李远游は黙っていたが、野菜を切るスピードは先ほどほど鋭くなかった。
“今、君を助けられるのは僕しかいない。 僕の素性を一番よく知っているのは君だし、他に選択肢はないだろう？”
今度は李淵用も反応し、波打つ顔に自虐的な笑みを浮かべた。
“どうするつもりだ？”
“うーん...”
骨ばった細い指が、まるで躾の行き届いた子犬を撫でるように、カウンターのタイルをそっと撫でた。長い時間が経ってから、潘以皓は "殺せ "と言った。
その言葉に驚いた李远游は、ナイフを構えずに誤って指を切ってしまい、血の玉がこぼれ落ちた。
傷口を無視してナイフを構えると、潘以皓のところへ素早く歩いて行き、"殺されたのか？"と質問した。
潘以皓は頭を上げて李远游の目をまっすぐに見た。その瞬間、刃から出た血が合体して潘以皓の顔に滴り落ち、顔の上を横切る潘以皓の声に血の玉が添えられた：“さもなくば、死ぬのは俺たちだ！”
さりげなく顔を拭きながら、潘以皓は立ち上がってリビングルームに行き、herrickが広げたスーツケースから繊細な金属製の箱を物色し、コーヒーテーブルのキャビネットにある薬箱から塩化カリウムの注射薬を取り出してキッチンに戻った。
彼はテーブルの上に2つのものを並べ、李远游に言った：“注射器の中のものを塩化カリウムに換えてください。”
彼はそう言って、箱を李远游のほうに押しやった。
李远游は、本当は物事を仕切られるのが嫌いな人間だが、ひとたび個人的な利害に関わることになると、人を殺せ、火を放てと言われても何も言わない。
彼はビニール手袋をはめ、注射器の片方の中身を変え、もう片方を手に取ろうとした。潘以皓は：“それを止めよ。”うと声を上げた。
“なぜ？”
“注射器に印があるでしょ。ずいぶん前に改ざんされたようです。”潘以皓は注射器の小さな跡を指さして説明した。
誰だろう？
李远游は訊ねるようなまなざしで潘以皓を見たが、潘以皓が首を横に振るだけとは思わなかった：“誰がやったのか、何に置き換えたのかは知らない。とにかく、herrickが今夜まで生きられないのは事実だ。”そう言うと、彼は薬と箱を元の場所に戻すためにリビングルームへと歩いていった。
“今朝、最初にherrickの部屋に行った。彼はバスタブで溺れました。使われた注射はマークされたもので、誰が彼を殺そうとしたのか本当にわかりません。”李远游はテーブルの角にもたれながらこう付け加えた。
余亦は何も言わなかったが、見覚えのある人影が脳裏をかすめ、おそらく犯人が誰であるかを察したのだろう。
そして彼は、その人はherrickを殺すのに必死ではなかったと直感した。
“彼が誰であろうと！”
“herrickの死には罪はない。彼が何年もかけて密かに売りさばいてきた覚醒剤は、10回撃たれても足りないほどだ。彼を殺すことは、人々から悪を取り除くことになる。” 潘以皓は横からのんびりと話した。
それはあまりにも重いメッセージだ！
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