第80話 修学旅行の班決めは揉める


 十一月初日の午後は修学旅行のLHRの時間だ。この朝、担任の桃ちゃん先生から

「今日のLHRで修学旅行の班決めを行います。一組五人で七組に分かれます。午後のLHRで決めますが、それまでに決めておくのは構いません。

 行先はプリントで知らせている通り沖縄です。宿泊先ホテルはA、Bクラスが一緒のホテル、C、D、Eが一緒のホテルになります。以外はLHRで説明します」


 桃ちゃん先生が教室を出て行くと急に教室が騒がしくなったが、一限目の先生が直ぐに来た。



 そして昼休み、俺と智それに碧海さんが学食で昼食を摂りながら

「京、班決めの事なんだけど」

「ああ、頭が痛いよ。智と奈央子さんは同じ班にしたいけど後の二人がな」

「その事だけど、有栖川さんを除くと五人で二人を決める事になるじゃないか。どうなると思う」


「智也君、強引な言い方だけど、早瀬君が全然関係ない男女一人ずつ班に入って貰うって事でどうかな?」

「難しいな。その二人、あの五人から一時とはいえ、恨まれそうだし、そんな事分かっていて引き受ける人も居ないんじゃないか?」

「そうかぁ。難しいね」


「京、有栖川さんと仲のいい女子友が居るじゃないか。その子達はどうかな。彼女繋がりなら」

「うーん、奈央子さんと相談しないといけないし」



 そんな話を学食でしている一方教室では、有栖川さんとその女子友達がお弁当を一緒に食べながら

「奈央子、班決めどうなるの?」

「京之介さんと私、それに田中君は決まりだと思うのですけど他の二人がどうなるのか?」


 それを聞いていた、杉原さんが

「有栖川さん、聞き捨てならない事を言ったわね。なんで早瀬君と田中君の中にあなたが入る事が確定しているのよ」

「杉崎さん、当然です。私は京之介さんの彼女ですから」

「そ、そんな事関係無いわ。学校行事に私情を入れないでよ」


 それを聞いていた夏目さんが

「杉崎さんの言う通りよ。早瀬君が有栖川さんを彼女に認めたからって修学旅行の班まで一緒というのは納得できないわ」

「それなら京之介さんに聞けばいいじゃないですか。私が彼の班に入るのは当たり前の事です」

「「っ!」」


 §杉崎

 気に入らないわ。いくら早瀬君が有栖川さんを自分の彼女だと言っても班まで一緒になるのは邪魔したい。修学旅行は色々な意味でいいチャンスなんだから。


 §夏目

 悔しいけど有栖川さんの言う通りになるだろう。だとすれば後の二人に入れて貰うしかない。


 §古城

 杉原さんも夏目さんも往生際が悪いわね。有栖川さんが早瀬君の班に入るのは当たり前。私も残りの二人枠の中に入りたいけど難しいかな。



 俺と智がお昼を食べ終わって教室に戻ると何故か俺の席の周りに緊張がみなぎっている。どうしたんだ?


 学食から勅使河原さんと石通さんが戻って来て夏目さんと何やら小声で話をしている。

「「なるほどねぇ」」


 二人共何がなるほどんねぇなんだ。俺の前の席に座る奈央子さんが、後ろを振り返ってジッと俺を見ている。一体どうしたんだ?



 予鈴が鳴って桃ちゃん先生が入って来た。

「皆さん、朝連絡した通り今から修学旅行のLHRを開きます。班決めは出来ましたか?」


 いきなり杉崎さんが

「先生、班決めの基準ですが、修学旅行は学校行事です。そこに私情を挟む様な決め方をするのは良くないと思います」


 なんか凄い事言い始めたぞ。


「私情ですか。例えばどの様な?」

「はい、例えば恋仲同士の二人が一緒になれば要らぬ事が起きる可能性もあります」

「それはそうね。杉崎さんはどうやって決めれば良いと思っているのですか?」

「はい、仲の良い友達ならば良いと思うのですけど」

「そうですね。それは大事ですね。他に意見は有りますか」


「はい」

「有栖川さん」

「私は、仲のいい人同士は賛成です。でも押し付けは良くないと思います。だから一緒になりたい人が同じ人に集中した場合、その人が誰と一緒に行きたいか決める権利はあると思います」

 はぁ、この子達、また早瀬君の奪い合いしているのか。まあいいわ。


「有栖川さんの意見も聞くに値しますね。一人の子に集中して五人枠がオーバーしても決めれませんね。良いですよその案で。では決めて下さい」


 何故かクラスメイトが一斉に俺の方を向いた。俺逃げたい。


 智が

「京、決めるしかない」

「ああ、しかしなぁ」

「京之介さん、決めて下さい」

「うーん、取敢えず智と奈央子さん」


「「「「「えーっ!」」」」」


 やっぱり、杉崎さん、夏目さん、古城さん、勅使河原さん、石通さんが声をあげた。男子が笑っている。


「先生。俺だけじゃなくて他の男子や女子も決める様に言って下さいよ」

「そうね。他の人も決めなさい」


 がたがたとあらかじめ決まっている人達は簡単に固まった。後は‥‥。


 急に夏目さんが

「仕方ないわ。公正に五人でじゃんけんしましょう」

「「「「「いいわよ」」」」」


 最初はグー。ジャンケンポン。


 何故か一発で決まった。

「やったぁ、早瀬君、やっぱり君とは縁があるね」

 そう言ったのは古城さん。確かにこの人俺と縁がある。


 そして二人目はなんと石通さんだ。

「ふふっ、京様。私達は結ばれる運命にあるのです」


 §杉崎

 悔しい。勝てると思ったのに。でも機会はある。


 §夏目

 手強いわね。この旅行で強硬策に出ようと思ったのに。


 §勅使河原

 私が負けるなんて。じゃんけんは小さい頃から強かった。絶対勝つと思ったのに。



 この後は、他の男子が三人に声を掛けて簡単に決まった。


「それでは班が決まった所でそれぞれに集まって行動予定表を作って下さい。団体行動の間に班単位で動く予定です。

 そこに行く目的もしっかり書いて下さい。修学旅行が終わった後のレポートでそれが十分表れてをいる事を期待します」


 俺の班は、智と俺と奈央子さん、それに古城さんと石通さんだ。古城さんはともかく石通さんは静かに行動してくれるといいんだけど。


―――― 

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。

「僕の花が散る前に」

https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867

交通事故で亡くした妻への思いが具現化する物語です。最初の数話固いですけどその後がぐっと読み易くなります。

応援(☆☆☆)宜しくお願いします。

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