第77話 不安を解消するにはどうすればいい


 俺は、詩織さんの所から帰ると自分の部屋で今後の彼女との付き合い方を考えていた。


 詩織さんの思いも分からないではないが、体の関係を持ったからそれを盾に俺との関係を迫って来るというのはどうしても考えたくない。


 やはり、あの時、思いに任せてしてしまった事がいけなかったんだ。今更どうにもならないが。


 奈央子さんにはこのままの付き合いで行きたい。彼女との体の関係はあくまで俺と彼女が十八を過ぎてからだ。それを超えれば万一有っても責任が取れる。


 詩織さんは万一有っても子供を産むから良いなんて言ったけど、未成年の高校生が妊娠して子供を産むなんて考えられない。高校に居られない何処とか生活面だって全く見通しがない。


 詩織さんは、お姉ちゃんとお母さんが推しているけど、奈央子さんを二人に認めさせる方法は無いものだろうか。



 夕飯を食べ終わって、お風呂に入る前に部屋で同じ事を考えているが良い方法が見つからない。悩んでいるとスマホが震えた。画面を見ると奈央子さんからだ。


『京之介さん、奈央子です』

『はい』

『明日の事なんですけど、どこでお会いしましょうか?』

 そう言えば会うとだけしか言って無かったな。


『奈央子さんの好きな所で良いですよ』

『では、午前十時に我が家に来て貰えますか?』

『いいですよ。では明日午前十時に行きます』

『待っています』


 奈央子さんは、俺とそういう関係になるのは来年からだと分かっている。だから彼女の部屋に行っても問題ない。



 午後十時になって風呂に入り、上がって自分の部屋に戻るとお姉ちゃんが入って来た。パジャマ姿だ。

 姉弟だから何も感じないけど、お姉ちゃんは本当にスタイルがいい。弟の俺でもドキッとする時がある。今もノーブラなのに良い形を維持している。


「京之介、とうとう姉の体に興味を持つようになったの?」

「何を言っているの。訳ないだろう」

「そう、私の胸をジッと見ていたわよね。それとも詩織ちゃんの胸と比較していたの」

 今日はわざと目立つようにしている。


「何言っているの?」

「詩織ちゃんが泣きながら連絡して来たわ。ショーツ一枚になっても抱いて貰えなかったって」 

 あの人そんな事まで話すのかよ。


「京之介、詩織ちゃんからそんな事を言われたのは初めてよ。彼女も相当にショックだった見たいよ。もう一回はしているのになんで抱いてあげなかったの?」

「万が一有ったらどうするんだよ」

「そんな事心配しているの。コンビニにだって売っているわよ。知らないの?」

「聞いた事は有るけど…」


「詩織ちゃんはね。京之介の心がまだ自分に向いていない事は知っている。それも今は仕方ないと思っている。有栖川さんは強力ですものね。

 でも、だからこそ、心を安心させたいのよ。今時、高校生の男女が体の関係を持ったからって結婚しなければいけないという訳じゃないでしょう。詩織ちゃんの気持ちも分かってあげてくれないかな」


「難しいよ。奈央子には来年まで待てと言っている一方で、もう一人の人と体の関係を持つなんて」

「そう、有栖川さんも同じじゃないの。子供が出来ない様にすればいいだけじゃない」

「お姉ちゃんはどうなの?」

「私は好きな人なんていないわ。弟より素敵な男が現れたら変わるかもしれないけど。ふふっ、誤解しないでね。京之介とは姉弟なんだから」

 なんて事言うんだよ。


「とにかく、詩織ちゃんの事、もう少し大事にしてあげて」

「分かったよ」


 お姉ちゃんは俺の部屋から出て行った。全く簡単に言ってくれるよな。女の子を抱くなんて…。詩織さんは一度抱かれているからか。どうしたものか。



 翌日は、午前十時少し前に奈央子さんの家に行った。インターフォンを押すと奈央子さんではない女性の声がしてドアが開いた。

「おはようございます。早瀬です。今日は奈央子さんと…」

「あっ、京之介さん、上がって」

「奈央子、早瀬君が来るなら一言言っておいてくれれば良かったのに」

「ごめんなさい。お母さん、昨日の夜決まったので」

「そう、早瀬君、上がって」

「ありがとうございます」



 俺は、二階の彼女の部屋に行くと

「今、飲み物とお菓子を持ってきますね」

「はい」



 部屋の中を見ると綺麗に整頓されている。少し待っているとドアが開いて奈央子さんが入って来た。

 トレイに紅茶のセットが載っている。お菓子もだ。ティポットから二人のティカップに紅茶が注がれるといい匂いが鼻をくすぐった。


 一口飲むといい香りと味が口の中に広がる。

「美味しいですね」

「良かった」



「京之介さんは昨日小手川さんと一緒に帰ったんですか?」

「えっ?!ええ、一緒に帰りました」

「そうですか。もう私達の事は公けにされました。虫よけにしていた生徒会役員も必要なくなったのではないですか?」

「それはそうですけど、直ぐに辞めるという訳には」

「そうですよね。本当は一緒に登下校したいです。下校が生徒会の仕事で出来ないなら、登校だけでも一緒に出来ないですか。電車を合わせれば簡単に出来ますよ」

 そうだな。もう公けにしたし今更奈央子さんとの事を黙っている必要も無いだろう。


「そうですね。明後日からそうしますか」

「はい、嬉しいです。石通さんはもう一緒でなくて良いんですよね?」

「それはもう少し待って下さい。彼女のマンションは家の傍なので避けきれないというか。どうしても一緒になってしまいます」

「では、無視して一緒に登校しましょう」

 ふふっ、これでまた一歩他の人からリード出来る。


 上手くできる物なのかな。石通さん、結構気が強いからな。


「そう言えば、最近読んだラノベってありますか。私はこれを読んでいます」

 見ると異世界物だ。俺は読んでいないジャンルだ。


「異世界物は、ちょっと読んでいないです」

「そうですか。異世界物は特異な所が多いですけど、結構面白いです。一度読んでみてください。どれか分からなければ私の持っている本から選びましょう」



 そんな話をしているとお昼になってしまった。

「京之介さん、私が作ります。何を食べたいですか?」

「奈央子さんが作ってくれる物なら何でもいいですよ」

「分かりました。ここで待っていても仕方ないので一階に降りてダイニングで待っていて下さい」

「分かりました」


 奈央子さんが作ってくれたのは、チャーハンとトマトとレタスのサラダ。それに中華風卵スープだ。

「チャーハンは一杯作りましたら、一杯食べて下さいね」

「はい、所でお母さんは?」

「はい、京之介さんが来て少しして用事で出かけました」

「そうですか」


 奈央子さんの作ってくれたチャーハンは美味しかった。中華風卵スープとマッチして結構な量を食べさせて貰った。


 食器をシンクに下げて奈央子さんがそれを洗ってからまた二階に上がった。


「京之介さん、明日は冬物の洋服を買いたいので一緒に行って下さい」

「全然構わないですよ」


 奈央子さんが寄って来た。体を俺に預けると

「少しだけこうしていましょう」


 この人は、俺がはっきりと彼女の事を好き、愛していると言ってから、前の様に体の関係を求めなくなった。


 前は体の関係を持つ事で俺との関係が詰まると思っていたのだろうけど、今はそんな事はしない。

 俺もこの雰囲気は好きだ。俺も彼女を右腕で抱える様にしながら静かにしているとしばらくして奈央子さんが寝息を立てていた。


 安心しているんだな。彼女から漂う良い香り、大きな胸、柔らかい体、しっかりと括れた腰、そして決して大きすぎない位お尻。ゆっくりと触ってしまった。でも寝ているから。


「京之介さん、私はいつでも良いのですよ。勿論しっかりと避妊しないといけないですけど」

「えっ、起きてたの?」

「寝てしまいました。でもこれだけ触れれば起きます。京之介さんは私が欲しいのでは有りませんか?」

「いやでも俺は」

「ふふっ、京之介さんからしてくれるまで待っています。私からして欲しいなら別ですけど」

 この人最近言う事が大胆。


「では、これだけ」

 そう言って彼女は俺の唇にその柔らかい唇を当てて来た。


―――― 

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。

「僕の花が散る前に」

https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867

交通事故で亡くした妻への思いが具現化する物語です。最初の数話固いですけどその後がぐっと読み易くなります。

応援(☆☆☆)宜しくお願いします。

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