第71話 悩みの種は尽きなくて


 俺は一人で生徒会室に行くと生徒会長の詩織さん以外の役員も全員が席に着いてPCと向き合っていた。


「あっ、早瀬君。良い所に。副会長直ぐに彼にあれを見せて段取りして」

「分かりました。早瀬君、こっちに来て」

「はい」


 詩織さんに石通さんの事を言おうと思ったけどそういう状況では無いみたいだ。俺は副会長の所に行くと


「長田君、駒門祭がもうすぐよ。各クラスからの予算申請が上がって来る。こちらも予算枠があるので、これを見ておいて。

 教室内や模擬店それに体育館や野外ステージ毎の予算枠。それ以上出せないから交渉するの。それと駒門祭の時は生徒会役員として見回り役になって貰う。私と一緒にね」

「分かりました」


 俺は渡された予算枠を見ていると生徒会長から声が掛かった。

「早瀬君、ちょっと」

「はい」


 生徒会室の奥にある会議室と言ってもほとんど生徒会長専用の会議室に連れて行かれた。彼女がドアを閉めると

「座って」

「はい」


「石通さんが京之介様のクラスに転校して来たわよね」

「はい」

「大人しくしている?」

「いえ」


「私の耳にも届いているわ。目的は分かっていますけど、教室内の女子も同じ考え。彼女には注意して。周りの子が過激に刺激したりして我慢出来なくなると困るわ」

「分かっています。なるべく他の人と仲良くなれる様にして貰うつもりです」

「ところで彼女の住まい知っている?」

「はい、俺の家の近くに出来た新しいマンションです」

「えっ!」

 流石、示現流、いきなり相手の傍に来て京之介様に打ち込むつもり?


「心配しないで下さい。彼女のお母さんも一緒に来ています。色々言われましたけど、彼女が環境になれるまで登下校を一緒にするだけにしました」

「でも、私とは?」


「それなんですけど、当分我慢して下さい。石通さんには図書室で待っていてもらいます。

 一週間も有れば彼女も自分で登下校出来るようになると思います。電車は乗り替え無しの一本なので問題ないでしょう」

「仕方ないですね」


 そういう理由もあり、最終下校の予鈴が鳴ったら俺は他の人より早く生徒会室を出て図書室に向かった。彼女は図書室のドアの外で待っていた。


「済みません、遅れて」

「構わないですけど、知らない学校でここで一人で待つのは厳しいです。明日から図書室が終わったら生徒会室の前で待ちます。だから生徒会室を教えてください」

「俺がもっと早く来ます」

「生徒会室教えてくれない何か理由でもあるんですか?」

「無いですけど。そうですねそうしましょうか。明日教えます」

 仕方ない。


 俺は、彼女を昇降口まで連れて行き履き替えて校舎の外に出た。

「京様、校内案内全然して頂いて無いのですけど」

「ええ、明日から少しずつしましょう」

「はい」

「それと京様は止めて下さい。同じ学年です。早瀬で良いですから」


「でも…。私の心の中は京様です」

「では学校内では早瀬でお願いします」

「分かりました。その代わり二人だけの時は沙羅と呼んで下さい」

「それは…」

「宜しいですよね。早瀬君」

「……………」

 全く。



 次の朝、石通さんは俺の家の車留めの門の前に立っていた。

「おはようございます。ここで待つよりマンションの下に居て下さい。俺が迎えに行きます」

「私が来たいのです」

「…分かりました」

 一度言い出したら聞かない子みたいだ。



 そして学校の最寄り駅で智達と合流。俺と沙羅さん、智と碧海さんが並んで歩いている。

 何となく他の生徒の視線が気になるが、まだ誰だろうって感じだ。気にするレベルではないか。


 教室に入って行くといつもの様に古城さん、杉崎さん、夏目さんそれに勅使河原さんが朝の挨拶をして来た。最後に奈央子さんだ。


 今日は昨日の様な事は無く、静かにしていると予鈴が鳴って桃ちゃん先生が入って来た。


「皆さん、おはようございます。早速ですが、来週末の土日は駒門祭があります。去年で慣れていると思いますが、今日の六限目のLHRでこのクラスの催し物を決めて下さい。次に…」


 桃ちゃん先生は一通りの連絡事項を伝えると教室を出て行った。


-なあ、駒門祭。あれはどうなるんだろうな?

-あれって?

-ミス駒門。

-おう、愛理様が居ないからな。また復活するのかな?

-そうじゃないか。


 駒門祭はミスコンを催すのだけど、去年までの三年間、お姉ちゃんが居たおかげで開催する理由が無いという事で三年間中止されていた。だけど今年はお姉ちゃんの卒業に伴い開催する事になっている。



 一限目担当の先生が入って来た。



 昼休みは智達と一緒に食べたけど石通さんを校内案内しなければいけないので早々にお昼を切り上げて案内した。


「早瀬君、駒門祭の時、ミスコンがどうのとか男子が言っていましたけど?」

「俺も知らないんです。去年まではやっていなかったし」

「そうですか」

 ミスコン、前の高校では無かった。どんなものなのかな?



 教室に戻ると教室が騒がしい。

「智、どうしたんだ?」

「さっき、生徒会の人が来て、これ渡して行った」


 見るとミスコン応募用紙だ。四年ぶりの開催と書いてある。そして俺の横で勅使河原さんが、

「私出てみようかしら。これで一位になれば考査共々一位。早瀬君の正式の彼女としてはっきりさせる事が出来る」


「「「「「えっ!」」」」」


 勅使河原さんなんて事言うんだ。


「あら、皆さんも出て見る?早瀬君の事、ダラダラしていないではっきりしましょうよ」

 あーっ、完全に煽っている。確かに考査では奈央子さんや俺と同列だけど。凄いこと考えるな。


「「「「受けて立つわ!」」」」」


 奈央子さんまで。勅使河原さん、全くこの人は静かな池になんで大石投げ込むんだ。



 この爆弾発言のお陰で六限目のLHRはクラスの催し物よりそっちに話題が知ってしまった。


 取敢えず決まったのは模擬店でたこ焼きだけど、何故か二日目は午後二時で切り上げとなった。理由は二日目の午後三時から行われるミスコンを皆が見たいと言ったからだ。


―――― 

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。

「僕の花が散る前に」

https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867

交通事故で亡くした妻への思いが具現化する物語です。最初の数話固いですけどその後がぐっと読み易くなります。

応援(☆☆☆)宜しくお願いします。

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