第70話 二学期早々賑やかに
二学期が始まった。学校の最寄り駅を降りていつも一緒に登校する智と碧海さん。そこまでは何も変わりない日常だ。だけど
「京、隣にいる女の子誰だ。同じ電車だったよな」
周りには同じ高校に通学している生徒も一杯いる。ここで彼女の事を話す訳にもいかず、小声で
「もにょもにょもにょ」
「えっ!」
「智、静かに」
「智也君、早瀬君、また私が仲間外れなの?」
「違うよ。弥生ちゃん。もにょもにょもにょ」
「えっ!」
「しっ、二人共。周りはうちの生徒だらけなんだから」
そう俺の隣で一緒に歩いているのは石通沙羅さん。今日からうちの学校に転校して来る。全高で詩織さんに判定で敗れたけど二位の
やがて昇降口まで来ると石通さんは、
「京様、私は職員室に行きます。そこまで案内して下さい」
「分かりました。智後でな」
「おう」
俺と一緒に歩く石通さんを見て他の生徒がこの子誰って感じで目を丸くしている。職員室の前に来ると桃ちゃん先生で良いんだろうと思って職員室のドアを開けて少し覗き込んでから
「石通さん、あそこの背の低い白いスーツを着ている女の人が俺達の先生」
「京様、ありがとうございます」
それだけ言うと職員室に入って行った。ちょっと緊張している感じ。俺も同じだけど。
2Aの教室に戻ると早速、古城さん、夏目さん、杉崎さんそれに勅使河原さんが挨拶をして来た。
「おはよ、早瀬君。焼けてるね」
「外に出ていたからかな」
「おはよ、早瀬君。どこか行ったの?」
「まあ、少し」
「おはよ、早瀬君、どこ行ったか後で話聞かせて」
「時間有ったら」
「おはよう、早瀬君」
俺の右隣りに座る勅使河原さんはそれだけ言うと前を向いた
その後、俺の前の席に座って居る奈央子さんが、こっちを見てにこっと笑って
「早瀬君、おはようございます」
それだけ言うと前を向いた。
予鈴が鳴って俺達2Aの担任、桃尻塔子先生、通称桃ちゃん先生が入って来た。着ている白いスーツのボタンが苦しそうな顔をしている。
「皆さん、おはようございます。始業式が始まります。廊下に出て下さい」
ガタガタと廊下に出ながら智が
「益々大変になるな。そろそろ決着したら」
「無理言うな。学校に居れなくなる」
体育館に入って校長先生のお話を聞いて、他の先生の連絡事項を聞いてから教室に戻った。
自分の席に着くと男子が、
-なあ知ってる?
-何を?
-今日、転校生が来るんだって。
-でも、俺達の教室とは限らないだろう。
-それはそうだけど。
少しして桃ちゃん先生が入って来た。そして
「皆さん。今日、このクラスに転校生が入ります。石通さん、入って来なさい」
「「「「おーっ!」」」」
「「「「可愛いぃ!」」」」
「石通沙羅さんです。石通さん、自己紹介して」
「はい、今、桃尻先生より紹介にあずかりました石通沙羅と言います。鹿児島県ロサール高校から来ました。東京は初めてですが、目的を持って来ていますでの気になさらないで下さい。以上です」
-なあ、鹿児島ロサールって。
-ああ偏差値七七.全然ここより高い。
-最近この教室、偏差値高い高校からの転校多くないか?
-俺も思うよ。
-でも目的って?
「石通さん、廊下側から三番目列の一番後ろに座って下さい」
「はい」
でも石通さんは、俺の列を真直ぐ来ると俺の所で止まって頭を下げて
「京様の妻となれるように一生懸命頑張ります。宜しくお願いします」
「「「「「「「えーっ!」」」」」」
「「「「「「「おーっ!」」」」」」
-き、聞いたか.
-お、おう。早瀬の妻だと。
-これは大変な事になるぞ。
「皆さん、静かに。校内の案内は早瀬君にお願いします」
まったく、勅使河原さんといい、石通さんといい何なのよこの子達は。教頭から言われた時は、なんで偏差値の低いここに来るのかと思ったら。皆早瀬君目当て。このクラスの女子の半分が彼じゃないの。他の子だって。もう…。私だってもう少し若ければ!
§有栖川
京之介さん狙いの新しい子が入って来たけど無理よ。
§勅使河原
全く、京之介様は。
§杉崎
なんでこんな事に。
§夏目
敵が多すぎる。何としても勝ち抜かないと
§古城
早瀬君、女子を惑わす媚薬でも塗ってるの?
§石通
ふん、学力でも力でも私が一番に決まっている。雑魚はじゃまよ。
桃ちゃん先生が、呆れながら教室を出て行った。クラス全員が俺を見ている。トイレでも行こうかな?
午前中の授業も終り、お昼休みになると
「京様、この学校はステラが有りますか?」
「ステラ?」
「生徒が皆で一緒に食事をする所です」
「ああ学食か。有るよ」
「では、今日はそこにお連れ下さい。明日からは京様のお昼は私が作って来ますから」
「「「「「ちょっと待ってよ!」」」」」
同時に声をあげたのは、有栖川さん、杉崎さん、夏目さん、古城さんそれに勅使河原さんだ。勅使河原さんが、
「あんた、今日転校して来て早瀬君に媚びっているけど、あんたなんか一番最後のドンケツよ。ケツはケツらしくしなさいよ」
言葉悪いんだけど。
「京様、この見にくい生き物達は?」
「「「「「何ですって!」」」」」」
「皆止めないか。石通さんも言い過ぎです。この人達は俺の大切なクラスメイトです」
「「「「「違う彼女よ!」」」」」
「「「「「えっ!」」」」」
男子がみんな大笑いしている。駄目だこれは。智が廊下の入口を見ている。碧海さんだ。
「みんなも石通さんも俺のお昼はそこに居る智と一緒に学食で食べる。誰のお弁当もいらない。智行こう」
「京様」
「あっ、石通さんは、一緒に。校内案内します」
「はい♡」
なんか俺の背中に槍が五本くらい刺さっている様な。廊下で歩いていると
「京様、何なのですか。あの人達は?」
「石通さん、俺が後で話すよ。京が話すと色々拗れる」
「拗れる?」
「また後で」
学食に連れて行くと、やはり新しい女の子は目立つようで注目を浴びた。
「石通さん、チケット自動販売機で食券買って中のカウンタに並びます。サンプルがあるのでそれを見て選んでください、
「京様のお勧めは?」
「うーん、女子はヘルシーなB定食が多いかな。他に蕎麦、うどん、ラーメン、カレー。後は唐揚げ丼、かつ丼、天丼がある。俺はボリュームがあるA定食を食べる」
「じゃあ、私もA定食にします」
石通さんの体ならA定食でもいいか。チケットを買ってカウンタで並んでから定食を受け取ると智達の所に連れて行った。彼女を碧海さんの隣に座らせると
「石通さん。紹介する。俺の親友の智と彼女の碧海さん、いつもこの二人とお昼を食べているんだ」
「そうなんですか。さっきの人達は?」
「俺から説明するよ」
「京は、この学校では滅茶苦茶モテる。俺達のクラスの子達だけじゃない、下級生からも上級生からもモテるんだ。だから石通さんが、教室で言った事は、暗黙の決まりで出来ない事になっている」
「そんなぁ」
「京を追って転校して来た人は石通さんだけじゃないんだ」
「えっ!」
私は甘く見ていたんだろうか。京様がモテる位の事は思っていたけど、私以外にも転校生がいたとは。
「智ありがとう、だから石通さん。お弁当の事は嬉しいけど諦めて」
「でも石通さんは他の人ではやれない事が出来るよ」
「なんですか田中君」
「登下校一緒というのは、他の人が望んでもさっきの理由で誰も出来ないんだ」
「えっ、本当ですか」
「あっ、石通さん、その事なんだけど、放課後話が有る」
§田中
そうか、京は小手川生徒会長の件もあるんだ。
お昼休みは現状の説明で時間が無くなり校内案内は放課後になってしまった。
午後の授業は静かに終わったけど、女子の石通さんを見る目は怖い。妬みとかそんなレベルではない。早く慣れさせないと。
「石通さん。俺は生徒会に入っていて、午後は一緒に帰れないんだ。でもまだ東京の事は分からないし、図書室で待って居て貰えますか。なるべく早く行きます」
「私も生徒会に入ればいいだけです」
勅使河原さんが
「石通さん、あなたもう少し状況判断したら。そんな事皆思っているわよ。でも誰も入れないの。早瀬君、説明してあげてよ」
「勅使河原さん、仲良くね」
「それは分かっているけど」
「図書室に案内する」
「はい」
生徒会長が小手川さんだと知られたら面倒だ。知られる前に準備しておかないと。
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。
「僕の花が散る前に」
https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867
交通事故で亡くした妻への思いが具現化する物語です。最初の数話固いですけどその後がぐっと読み易くなります。
応援(☆☆☆)宜しくお願いします。
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