第69話 まさか隣に越してくるなんて
詩織さんとの賑やかな遊園地デートが終わった日、お姉ちゃんが俺の部屋に来て
「どうだった?」
「なにが?」
「詩織ちゃんとの遊園地デート」
「楽しかったよ。色々な乗り物に乗って美味しいラーメンを食べて、彼女を送って帰って来た」
「ラーメン?」
「彼女結構なラーメン通みたいでさ。今度流行りの店に一緒に行く事になっている」
おかしいな。詩織ちゃんはイタリアンが好きなはずなのに。お店なかったのかな。
「そう、京之介は詩織ちゃんをどう思っているの?」
「友達、それ以外にない」
「彼女の気持ちは知っているんでしょ」
「でも俺は奈央子さんを選ぶ」
「それを彼女は知っているの?」
「分からないよ。でも何となく分かっているんじゃないかな」
「そう」
後、半年であの子は高校を卒業する。でもまだ大学四年間がある。有栖川さんが悪い訳じゃないけど、私は詩織ちゃんを選んで欲しい。肉体的には一歩リードしている。そろそろ動きそうだな。
お姉ちゃんはそれだけ言うと俺の部屋を出て行った。綺麗で頭が良くて武道も達者。普通なら申し分ないだろう。俺だって嫌いじゃない。でも俺は奈央子さんを選んだんだ。
後、十日で夏休みも終わる。もう一人で居たい。そう思っていた所にスマホが震えた。画面を見ると智からだ、久しぶりだな。直ぐに出ると
『京、助けてくれ』
『どうした?』
『宿題がまだ半分残っている』
『一杯時間有っただろう?』
『それが…弥生ちゃんと遊び過ぎて』
『お前なぁ…まさか碧海さんも一緒?』
『うん、そのまさかだ』
全くこの二人は。この時期じゃあ、仕方ないか。
『しょうがないなぁ。分かったどうすればいい』
『助かった。神様京様仏様』
『俺はまだ仏門に入ってないぞ』
『京の家か俺の家』
『碧海さんも一緒だろう。学校の傍の図書館が良いんじゃないか。それに俺いるか?』
智の家でやったら絶対に勉強にならない筈だ。
『それもそうだな。じゃあ、理科と数学と英語宜しく』
それって半分以上有るじゃないか。
『智、図書館で午前九時待ち合わせだぞ』
『京、ありがとう』
そんな訳で俺は翌日学校の近くにある図書館に午前九時前に行くと二人はもう来ていた。
「はい、これ。五日も有れば大丈夫だろう。でも最初は自分で考えろよ」
「分かった」
「早瀬君、ありがとう」
「碧海さんもしっかりね」
「はい」
俺は、言われた教科の宿題を智に渡した。せっかくだから本の立ち読みをしていこうと一緒に中に入った。二人は仲良くフリースペースへ。
図書館でもラノベは結構置いてある。立ち読み流し読みしながら読んでいると
「京之介様」
声の方を振り向くと
「勅使河原さん。どうしてここに?」
「学校の近くにある図書館なので偶々」
「探し物でも?」
「いえ、偶々です」
分からないな?
「もし良かったら近くの喫茶店で話でも出来ませんか」
家に帰ろうと思っていたのに。でも用事も無いしいいか。
「いいですけど」
「本当ですか。嬉しい」
ここに来たのは本当に偶々。学校の傍の図書館で本を借りておけば返すのも楽だと思った安直な考えからだ。
でもまさか京之介様と会えるなんて。恋の女神様はまだ私を見てくれている。
俺達はすぐ隣にある喫茶店に入ると二人共アイスミルクティを頼んだ。
「京之介様は図書館に何か御用が有ったのですか?」
「ええ、ちょっと友達に渡す物が有って」
「そうですか」
さっき、田中君と2B組の碧海さんがフリースペースで何かを写していた。そういう事か。
「京之介様は友達思いですね」
「友達思いかどうかは分からないですけど」
流石だな、目的は簡単に分かるか。
この後、夏休みは何をしたかとか聞かれたので奈央子さんや詩織さんの事、全高の事は伏せて、稽古の事と家族旅行の事を話した。
「羨ましい。我が家は家族旅行なんて無いですから」
「我が家も夏だけです」
「でも毎年行かれるんでしょう。私も一緒に行って見たいな」
「それは流石に」
「冗談です」
その後は勅使河原さんの夏休みの事を話してくれた。家族旅行はしなかったけど、元の高校の友人達と日帰りで色々な所に行った様だ。イキイキしながら話してくれた。
お昼を誘われたけど家で用意されていると言って断った。実際は用意されてないけど。
家に帰る途中、中華屋に入ってパーコー麺を食べて汗でびっしょりになったけどそのまま家に戻った。
夕方になり自分の部屋で好きな本を読んでいるとスマホが震えた。えっ?!石通りさん?なんで?取敢えず、急ぎ出て
『早瀬です』
『早瀬さん、久しぶりです。今日連絡したのは明後日から妹が母と一緒にそちらに行くので大切にしてやってください』
『えっ?!』
『全高の時、お願い申した。早瀬さんの近くにマンションが空いていたので借り申した』
『えーっ!』
冗談だとは受け取っていなかったけど、直ぐ傍に越してくるなんて。
『学校は?』
『早瀬さんの学校に転校させ申した』
頭が痛くなって来た。
それから二日後の午後、最近俺の家の傍に出来たマンションに本当に石通母娘が来た。そして俺に家に挨拶に来た。なんでここが分かったんだ?
インターフォンが押されて車止めの門を開けると石通沙羅さんとお母さんが立っていた。
「京様」
「早瀬さん、初めまして沙羅の母です。この度は娘がお世話になります。家事全般、薩摩
「京之介どなた?」
「お母さん、全高二位の石通沙羅さんとお母さん」
「あら、とにかく、ここでは申し訳ないわ。入って貰いなさい」
「はい」
その後はお姉ちゃんも自分の部屋から降りて来て大変だったけど、とにかく俺の家にお手伝いとして入るのは断らせて貰った。流石に不味い。
それに将来は嫁にして欲しいと迄言われて、とにかく今はそういう事を話す年齢ではないのでと言う事で固く断った。
でも、普段の登下校は納得させられてしまった。地理が不安な事や俺の家の傍という事も有ったけど。そして転入先のクラスは俺のクラスだ。一体どうなってんだ?
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。
「僕の花が散る前に」
https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867
交通事故で亡くした妻への思いが具現化する物語です。最初の数話固いですけどその後がぐっと読み易くなります。
応援(☆☆☆)宜しくお願いします。
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