第67話 夏休みはもうすぐ終わりなのに
奈央子さんとプールに行った翌日、部屋の中でのんびりしているとスマホが震えた。画面を見ると詩織さんだ。この前海で会ったばかりなのになんだろう。画面をタップすると
『京之介様、詩織です』
『はい』
『あの、今度の日曜日お会いする事出来ないでしょうか?』
『今度の日曜日ですか?』
『はい』
特に用事は入っていなけどどうしようかな?
『何か有りましたっけ?』
ちょっと冷たい言い方となったけど
『遊園地に行きませんか?』
『えっ、遊園地ですか?』
『夏休みでないとあういう所は行けないですよね。だからお誘いしようかと思って』
参ったなあ。どこ行く気なんだろう。まさかあそこじゃないだろうな。
『どこの?』
『隣の県にある大きな遊園地です。確かプールが付いていましたけど』
あそこは奈央子さんと二人で知らない状態で行きたい。だからこの人とは行きたくない。
『行ってもいいですけど、別のとこにしませんか。とっても遠そうだし』
『どこか良い所有りますか?』
困ったなぁ。俺遊園地なんて知らないよ。
『日曜日だと明日もありますよね。それまでに決めましょうか?』
『では一緒に行ってはくれるのですね?』
『はい』
ここまで話が進むと断り切れない。
『分かりました。他を探してみます』
ふふっ、行けないかと思ったのに。やはり京之介様は優しい。この前の海でチャンスを探していましたけど、家族と一緒では流石に出来なかった。
遊園地ならもっと彼とくっ付いていられるチャンスがある。もしかしてその流れを掴めるかもしれない。
あの海に行ってから京之介様の事ばかり考えてしまっている。彼の水着姿を見てから彼に抱かれたいという気持ちが強くなってしまっている。
私、そんな女では無いのに。京之介様だけには…あの腕に中に居たいと思うのはいけない事なのでしょうか。
俺はスマホを切ってまた読みかけの本を読もうとしたところでお姉ちゃんが部屋に入って来た。
「京之介、詩織ちゃん?」
「うん」
「遊園地に行くの?」
「そういう事になってしまった」
「そう、この沿線の先に大きな遊園地が在るわよね。あそこなら急行で三十分位で行けるわよ」
確かそんな遊園地が在ったよな。
「詩織ちゃんに連絡して誘ってあげなさい。隣の県よりはるかに近いわ」
「分かった」
それだけ言うとまた自分の部屋に戻って行った。部屋のドアを開けているから聞こえたのか。でもあそこなら確かに近い。俺は直ぐに詩織さんにスマホで連絡を入れた。
私は京之介様に連絡した後、彼の事を思っているとスマホが震えた。画面に京之介様と出ている。急いで画面をタップして
『詩織です』
『京之介です。さっきの話ですけど、僕が利用している沿線の終着駅近くに有名な遊園地があります。渋谷からでも三十分で行けますよ』
『はい、そこで良いです』
『詩織さんだと渋山乗り替えですよね。巫女玉の駅のホームで午前九時半に待ち合せしましょうか。そうすれば急行で直ぐです』
『分かりました。嬉しです京之介様』
『では、明後日巫女玉ホーム午前九時半に、七両目の先頭のドア付近で待ってます』
『分かりました』
ふふっ、京之介様から連絡頂けるなんて。どうしようと思っていたのに。でも確かにあそこは近いです。良かった。帰り巫女玉に寄れないかな?私何考えているのかしら。
次の土曜日、もう道場の稽古が始まっている。この時期はエアコンが効いているとはいえ、汗でびっしょりになる。でも稽古が終わった後、家に帰ってからのシャワーは最高だ。
そして日曜日、俺は巫女玉の駅のホームに午前九時十五分には来ていた。隣駅だから楽に来れる。
着いて五分もしない内に詩織さんが電車から降りて来た。直ぐに
「この急行で行きましょう」
「はい」
ドアが閉まる前に詩織さんと一緒に乗ると結構席は空いている。二人でゆっくりと座った。
詩織さんを見ると淡いピンクのTシャツ。白いハーフパンツに白のスニーカーだ。活動しやすい格好だ。俺は相も変わらず白のTシャツとジーンズ、青のスニーカーだ。
「京之介様」
「何?」
「いえ、何も」
何故か、必要以上に近い様な。彼女のお尻が俺のお尻にくっ付いている。周りが見ている訳では無いので構わないけど。
今度は俺の手を掴んで自分も腿の上に乗せた。それも足の付け根に近い部分に。そして俺の顔を見てうふふっ、なんて言っている。
「あの、どうしたんですか?」
「いえ、何もただせっかく近くに居るので」
それってこういう事する理由になるのかな?
彼の手を私の腿に乗せている。それも足の付け根に近い部分に幸せです。下のお腹がムズムズする様な感じです。このまま手を滑らせてなんて思ってしまいます。
目的地までは全高の後の話を少しした位であまり話さなかった。この前の海で色々話した事も有ったけど。
目的地の駅に着くと遊園地までは駅からなんとゴンドラかバスで行ける様だ。詩織さんがゴンドラで行きたいと言うので少し待ってから乗った。景色がとても綺麗だ。ちょっと驚いた。
遊園地についてチケット売り場に並んだが、入園料だけと入園料とアトラクション乗り放題がついている二種類を選べたので、ちょっと高いけど元は取れるだろうと思いアトラクション乗り放題を買った。二人で渋沢さんが一枚飛んで行った。
ゲートから中に入るともう結構な人がいる。親子連れが一杯いる。俺達の様なカップルも多い。手にチケットを買った時一緒に貰ったマップを見ながら
「人気あるんですね」
「都心から近いですからね」
「どれから乗ります」
「スリル系から行きましょう。あれはどうですか」
なんと指差したのはこの遊園地では有名な巨大なジェットコースターだ。
「詩織さんあういうの大丈夫なんですか?」
「はい」
女の子というのはあういうの駄目という先入観があったけどそうでもないんだ。迫力がある所為かあまり並ばなくても乗る事が出来た。
一人一シートで上から安全ガードが降りて来る奴だ。でも宙返りとかはない。スピード感は有るけど、どちらかと言うと安全な感じ。
元のスタート位置に戻ると詩織さんが何事も無かったような顔で
「結構簡単でしたね」
「はぁ」
この人結構強そう。次に詩織さんが選んだのは三百六十度宙返りする船だ。俺苦手そうなんだけど。
ほとんど待っている人はいなくて直ぐに乗れた。三点シートベルトをした上に上から安全バーが降りて来て目の前のバーを掴むという安全がっちり系だ。でもちょっと不安。
始めはゆっくりと前後に揺られ始め…
段々ふり幅が大きくなりお尻が浮いて来て…
ほとんど真上迄行ってお尻が浮いても…
そしてグルーン。頭が下になったと思ったら凄いスピードで下りおり…
もう一度グルーン。
そしてやっと元の位置に戻って止まった。流石に俺でもきつかったのだが、詩織さんは、あれ目を閉じている。
「詩織さん?」
「お、終わりましたか?」
「もう止まってますよ」
「えっ!本当だ。私とした事が」
「降りましょうか」
「あのシートベルト取って貰えます」
この人完全にバーを掴んだままだ。安全バーはもう上がっている。仕方なく、体を彼女の腿の上に乗せる様にして固定金具を外すと
「引っ張って下さい」
はあ、完全に腰を落としている。仕方なしに両脇に腕を差し込んで思い切り立ち上がらせた。
「あ、ありがとうございます」
「少し休みましょうか」
「そうですね」
やっと船から降りると同じ様なカップルが目の前もベンチに座って居る。俺達も座ると詩織さんが俺の腕に彼女の腕を回して寄りかかって来た。
「済みません。もう少しこのままで」
私にはちょっときつかったようです。でもこうする事が出来た。良いかな?
――――
遊園地編次話に続きます。連続投稿します。
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
カクヨムコン10向けに新作公開しました。現代ファンタジー部門です。
「僕の花が散る前に」
https://kakuyomu.jp/works/16818093089353060867
交通事故で亡くした妻への思いが具現化する物語です。最初の数話固いですけどその後がぐっと読み易くなります。
応援(☆☆☆)宜しくお願いします。
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