第55話 体育祭はやっぱり賑やかになった


 体育祭も近くなって放課後の練習も進んで来た。バトンパスは中川(俺)→夏目さん(杉崎さん)→俺(中川)の順でバトンパスの練習をした。


 本番通りすればいいのにと思ったが、本番で走者入れ替えもあるとかいう理由だ。そんな事無いだろう。


 古城さんとの二人三脚の練習は火曜に続き木曜日もやったが、大分上手くなったので木曜日は軽く上がろうと思ったけど、最終下校時間までしっかりとやらされた。



 そして金曜日。昨日の夜の天気予報で快晴と言っていたが、俺は心の中で大雨を天気の神様にお願いしたが、見事に雲一つない快晴。神様天気のは我を見放された。ショック!


 ジャージをバッグに突っ込んで学校の最寄り駅を降りて歩いていると後ろから

「おはよ、京」

「おはようございます。早瀬君」

「おはよ、智、碧海さん」

「思い切り元気ないな。去年と同じじゃないか」

「去年より酷いかも」


 実際、去年はお姉ちゃんを気にしていればいいぐらいだった。今年は…もう口にしたくない位だ。

 どこ行った、俺のスローライフ。



 教室でジャージに着替えて校庭に行く。クラス毎に並んで校長と体育の先生からお話が有った後は、詩織さんが台に上がって準備体操が始まる。


 こうして生徒会長という視点で見ると詩織さんは容姿端麗、頭脳優秀、お淑やかで文句なしの女性。


 こんな女性としたなんてばれたらどんな事になるのか考えただけでも恐ろしい。一番恐ろしいのは奈央子さんかも知れない。


 そんな事を考えながら生徒会長を見て準備体操をしていると詩織さんがこっちを見てニコッとした。

 多分俺に対してだろうけど、誰も自分にと思うだろう。周りにいる体操中の男子が


-今、生徒会長ニコッと笑ったよな。

-ああ、俺に対してな。

-そんな訳無いだろう。俺だ。

-いや俺だ。


 実の無い会話は止めましょう。



 準備体操も終りクラスの集合場所に行くと座る前に古城さんが

「早瀬君、二人三脚、二番めの種目だからスタート地点に行こう」

「ああ、そうだな」

「行ってこい京」

「おう」


 早速スタート地点に行くと他の学年やクラスの子が集まっていた。学年に関係なく女子の視線が熱いのは気の所為かな。


「やっぱり早瀬君、モテモテだね。何処に行っても注目の的だよ」

「そんなことないと言いたいとこだけど…」

「あっ、一年生がスタートラインに並び始めた。私達も行こう」

 

 一年生の参加者は全員が学校支給の紐で足首を縛って、順次にスタートしていく。俺達の番の三つ前になると実行委員から紐で足首を結ぶように言われた。


「早瀬君、いよいよだね」

「ええ」

 古城さん結構緊張している。


「古城さん、練習通りだからね」

「うん、分かっている」


 §古城

 競技で緊張している訳ではない。早瀬君と衆人の前で足を紐で結び、体を寄せ合う様にしているのが緊張の理由だ。


 そして私達の順番が来た。早瀬君とスタートラインに立ち、合図を待つ。


レディ!


パーン。


一二、一二、一二、一二


 周りの人も掛け声で調子を合わせいる。俺と古城さんも声を掛け合い、必死に走るが身長差は否めない。

「早瀬君、頑張ろう」

「うん」


 俺達の前を行く競技者は二年生他クラスの男女で高身長の人達だ。中々早い。だけど急ごうにも急げない。

 そしてそのままゴールした。


「ふーっ。頑張ったのになぁ」

「でも二位ですよ。いいじゃないですか」

「でもさぁ」


 二年生が全部終わるとクラスの集合場所に行った。智が

「今日、お疲れ。頑張ったな」

「ああ、あそこまでが限界だよ」

「久々に聞くな。そのセリフ」

「そんなことないけど」



 少しして、

「京、行って来る」

「おう」


 智が参加したのは玉入れ。身長はそんなに変わらないのに二年連続玉入れは狡い。あっ、Bクラスは碧海さんが出ている。ここまで一緒かよ。全く仲が良い。


 あれっ、奈央子さんもこの種目に出ていたんだ。へーっ、結構うまいな。何と勅使河原さんと争っている。二人共凄いゴール確立だ。


 玉入れが終わって戻って来ると

「智、お疲れ。美味かったな」

「ああ、去年もやっているしな。弥生ちゃんとちょっと練習したんだ」

「そうでございますか」

 全く、仲が良いのは羨ましい限りだ。


 そんな話をしていると勅使河原さんが

「早瀬君、私も見て頂けました」

「はい、とても上手でしたね」

「ふふっ、早瀬君に褒めて貰えると嬉しいです。クラス女子では私が一番ですよね」


 そんな事言うと

「早瀬君、私も良かったですよね」

「ええ、有栖川さんもとても上手かったですよ」


「いえ、私です。ねっ、早瀬君」

「私です」

 ここで競わなくても


「はい、二人共上手かったですよ」


 智や中川、それにクラスの他の男子が声を出して笑っている。ほんと恥ずかしい。そして俺にとっては多分…。最悪の競技が始まった。


「京、いよいよだな」

「智、俺お腹痛くなって来た。保健室に行く」

「「「駄目だ!」」」


 何故か、智、中川や他の男子が俺を摑まえている。

「早瀬のこれ見ないと体育祭は始まらない」

「「そうだ、そうだ」」


 最初は、一年生。俺には関係無いと思ったら、カードを拾った可愛いツインテールの女の子がこっちに走って来る。誰が目当てなんだ?


 俺達の傍に来ると

「早瀬先輩、一緒に来て下さい」


「おーっ、早瀬は遂に後輩にまで触手が延びたか」

「そんな訳ないだろう」

「京、行ってこい。可愛い一年生が目の迄待っているぞ」

「もう」


 トラックに出て手を繋ぐとその子は顔を真っ赤にして

「い、行きましょう」



 一年の割には背の高い女の子だ。ゴールに着くとその子はカードをゴール係員に渡した。

「えーっ、一年生Aクラス新垣沙里あらがきさりさんのお題は…彼になって欲しい素敵な先輩でした」


「「「「「「「おーっ!」」」」」」」

「「「「「「きゃーっ!」」」」」」


「あははっ、早瀬の奴何処まで人気あるんだよ」

「中川、仕方ないさ。京は中学の時もそうだったんだから」


 俺はその後も二年の別のクラスの子にさらわれ、三年のお姉さんにさらわれ、その度に奈央子さん、詩織さんそして勅使河原さんの厳しい視線に晒された。


 俺はクラスの集合場所に戻ると

「智、俺はもう駄目だ」

「京、大丈夫だ。お前の競技は午後からだから」

「そうか、それは良かった」


 

 そして午前中の競技も終り、教室に戻ると

「京、学食行くか?」

「ああ、でも弥生ちゃん呼べるならここでも良いぞ」

「どうして?」

「うん、お姉ちゃんが作ってくれたお弁当持って来ている」


-えっ、愛理様のお手製弁当。

-愛理様の手で作ったおにぎり。一個一万円で、交渉しましょう。

-何言っているの。出汁卵焼き一個十万よ。

-私も愛理様のお手製おにぎり。



「智、やっぱり学食行こう」

「あははっ、そうだな」


-愛理様のおにぎりが逃げて行く。

-出汁卵焼きーっ。


 皆さん、最初から無理です。



 学食行くと何故か俺達の周りには女子が一杯いる。どうして?俺がお姉ちゃんの作ってくれたお弁当箱を開けると…やっぱり。


「ふふっ、愛理様の早瀬くんへの姉弟愛は素敵ですね」

 ご飯の上に金糸卵で京と書いてある。嬉しいけど恥ずかしい。


-見て、あれが愛理様の京様への愛情。

-なんて美しい。

-私もあの中に入って一緒に食べて欲しい。

-私も。


 皆さん、お弁当箱の中には入れないし、食べません。やっぱり入る高校間違えたかな?



 周りの女子からの嫉妬の目の中で智と碧海さんと一緒にお昼を食べた。やっぱお姉ちゃんの作ったおは弁当は美味しい。出汁卵は俺の大好きな味が良く出ている。唐揚げも俺好みの味付けだ。その他のおかずもとっても美味しかった。


 お腹が一杯になると

「京、午後二つ目の競技二百だろう」

「ああ、知っている。俺が出るからな」

「でもその前の百のうちのクラスの出場者知っているか?」

「さぁ、出場種目決めの時、興味無かったし」

「やっぱり。有栖川さんと勅使河原さんが同組み。夏目さんと杉崎さんが同組だ」


 智の言っている事は分かる。結構揉めそうだな。


―――― 

体育祭次話に続きます。午後編をお楽しみに

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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