第53話 穏やかな日曜日
俺は金曜日の夜、詩織さんに連絡した。
私は部屋で本を読んでいるとスマホが震えた。画面を見ると京之介様だ。直ぐに出て
『京之介様、詩織です』
『詩織さん、来週の生徒会活動なんですけど』
『はい』
『放課後、体育祭で出場する競技の練習をする日が有って、その日は生徒会室に行けないんですけど』
やはりそうなりましたか。
『仕方ないですね。宜しいですよ。所で何の競技に出場されるんですか?』
『リレーと二百メートル走それに二人三脚』
『二人三脚!それって相手は女子ですよね』
『まあ、そうですけど』
『今更ですが、それって参加しない事には出来ないですか?』
こう言うと思ったよ。あれ以来、焼き餅焼きをはっきり出して来ているからな。
『流石にそれは無理です』
『そうですよね。でも私は…』
『詩織さん、体育祭の競技ですよ。そんなに真剣に考えなくても』
『ですが…』
『とにかく、来週の放課後、生徒会室に行く日は限られるのでお願いします』
『分かりました』
§小手川
やはり危惧していた事が起こりました。リレーや二百メートル走はともかく、何か他の男女一緒の競技に出場するとは想像していましたけど、まさか二人三脚とは。
あの競技は、男女が体をぴったりと付けて息を合わせて走る競技。私なら良いのに。
詩織さんは想像通りの反応だったな。奈央子さんは同じクラスなので我慢せざるを得ないだろうけど、明後日何か言われそうだな。会うの彼女の部屋だし。
翌土曜日はいつもの様に稽古と自分の部屋でのんびりとした。そして翌日は午前十時に奈央子さんの家の在る最寄り駅で会う約束をしている。
十五分前に行くともう改札に来ていた。
「おはようございます。奈央子さん、早いですね」
「おはようございます。京之介さん。勿論です。行きましょうか」
歩いて五分程の距離。直ぐに着いた。奈央子さんが玄関を開けて中に入ると人の声がする。
「実は、今日は両親がいるのです」
「そうですか」
俺にとっては嬉しいけど。
少し慣れた廊下を歩き階段を上がって彼女の部屋のドアが開けられると女の子というか奈央子さんの匂いが一杯流れ出た。
「中に入って待っていて下さい。冷たい飲み物を持ってきます」
「はい」
彼女が一階に降りて行った。少し待っているとトレイに冷たそうな氷とジュースの入ったグラスと個包装の柔らかいお菓子を載せて戻って来た。
「京之介さん、今日のお昼は私の手作りの料理を食べて下さいね。お母様にも話しておきました」
「楽しみにしています」
この雰囲気なら前の様な事にはならないだろう。
最初一時間位はお互いがこの前買った本の感想とかを話したりしていたが、段々奈央子さんが近付いて来て、俺に顔を向けて目を閉じた。
優しくゆっくりと唇を合わせていると奈央子さんがTシャツを捲ろうとしたので、その手を抑えた。彼女が唇を離すと
「京之介さん、この前の様にして下さい」
「奈央子さん、思い切り抱きしめますから、今日はこのままでいましょう。下にご両親も居ますから」
「構わないです」
「俺が駄目です。だらしない人間と思われたくないでの」
そう言うと彼女の唇を奪う様にして、そして思い切り抱きしめた。彼女の柔らかい胸が思い切り当たっている。細い体が折れそうな位抱きしめてあげた。
京之介さんの言っている意味は分かります。でも実際に肌と肌を合わせたいのに。そうすれば思い切り京之介さんを感じ取れるのに。
でもこうされているのもいい。彼が思い切り私を抱きしめて絶対に離さないという思いが伝わってきます。だから私も彼の背中に手を回して抱き締めました。
どの位経ったか分からないけど、自然と二人でゆっくりと離れた。と思ったらまた奈央子さんがぎゅーっと俺の体を抱きしめて来た。だからそれに応える様に抱き締めていると俺の体に顔を付けたまま
「ふふっ、こういうのもいいですね。京之介様の匂いを一杯感じれます。本当は肌を合わせたかったのですが、今日は仕方ありません。そろそろ下に降りて昼食の支度をしましょうか」
俺から名残惜しい様にゆっくりと離れると
「ちょっと待って下さい」
奈央子さんが本棚に置いてあるティッシュの箱から一枚取り出すと俺の唇を拭いた。
「ふふっ、京之介さんの唇に私のルージュが付いていては、せっかくTシャツの上からだけで我慢したのに要らぬ疑いを持たれてしまいますからね」
なるほど、それは気が付かなかった。二人で一階のキッチンに降りて行くとダイニングに彼女のお母さんが座って居た。
「お邪魔しています」
「早瀬さん、いらっしゃい。奈央子、私は自室に居ますから何か用事が有ったら声掛けて」
「はい」
お母さんに気を使わせてしまった様だ。でも仕方ない所だ。彼女のお母さんと顔を合わせても話す事も無いし気恥ずかしい。
二十分程して奈央子さんの手料理が出来た。ナポリタンとボンゴレの二種類のスパゲティだ。二つの大皿に一杯盛ってある。後は、レタスと生ハムそれにトマトをスライスしたサラダだ。
「京之介さん、お腹一杯召し上がれ」
「はい」
奈央子さんが、取り皿に最初ボンゴレスパゲティを取ってくれた結構山盛りだ。彼女の取り皿は普通より少ない。
俺は、フォークで巻き上げたスパゲティをスプーンの上に乗せてから口に運んでゆっくりと咀嚼した。喉を通した後、笑顔で
「とっても美味しいです」
「ふふっ、良かった。ナポリタンの方も召し上がって下さい」
「はい」
俺の体が百八十センチだ。それに空手も習っているので結構食べる方だ。それでも奈央子さんの作ってくれた二種類のスパゲティは俺のお腹を十分に満たしてくれた。
「奈央子さん、もう入りません」
「良かった。綺麗に食べてくれましたね。嬉しい限りです。食後の飲み物は紅茶にしますかコーヒーにしますか?」
「少し濃い目の紅茶で」
味がはっきりとした料理の後は濃い目の紅茶がいい。コーヒーも偶には飲むが、俺にはまだ早い様だ。
濃い目の紅茶を飲みながら二人でゆっくりと話をした後、奈央子さんがシンクに下げていた食器を洗ってからまた部屋に戻った。
「お腹一杯ですね。少し外を散歩しますか。見る所は無いですけど」
「いいですね」
部屋の中だけだと発想が短絡的になりやすい。
二人で手を繋ぎながら奈央子さんの家の前の道をゆっくり歩いているとすれ違う人がチラチラと俺達を見ている。
「視線気になります?」
「少しは」
「私もです。でも気にしないで歩きましょうか」
奈央子さんの家の周りから少し離れた所まで一時間程歩いた所で家に戻った。また彼女の部屋に行くと
「京之介さん、一度やってみたい事が有ったのです」
「何ですか?」
彼女はソファの上に座ると自分の腿の上をパンパンと叩いた。そして
「好きな人の膝枕をして見たいんです」
「えっ?!」
「嫌ですか?」
「それは無いですけど…」
肌を合すより恥ずかしいかも。でもせっかくだからと俺の頭をゆっくりと彼女の太腿の上に乗せると
「ふふっ、可愛いです」
そう言って俺の髪の毛を撫でて来た。女の子ってこんな事も好きなのかな?でも段々気持ち良くなって
気が付くと寝てしまっていた。食事をして散歩したからか。そして目を開けると彼女も寝ている。俺の顔の上には大きなそして嫋やかな胸が乗っていた。
何とも言えないけど気持ちよさそうに寝ている。仕方なしに俺もそのまま目を閉じた。
-京…、京之介さん
誰かが呼んでいる様な。随分深く寝てしまった様だ。目を開けると奈央子さんの素敵な笑顔が目の前に有った。そしていきなり口付けされる。
そのままにしていると
「京之介さん、もう午後五時近くになってしまいました。随分寝てしまいましたね」
「えっ!もうそんな時間に」
二時間以上寝ていた事になる。俺は起き上がろうとすると体を抑えられて
「もう一度」
また唇を合わせて来た。そして彼女から離れると
「今日はとても京之介さんを堪能できました。嬉しいです。これで体育祭も我慢出来ますと言いたいのですが、古城さんとはあまりくっ付かないで下さいね」
「……………」
そんな事俺に言われてもって感じなんだけど。でもずっと嬉しそうな顔をしている。そしてこの後はまだ明るい事も有って奈央子さんが駅まで送ってくれた。
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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