第52話 揉める事ばかり
月曜日は詩織さんと会った。この前の事もあり彼女の家に行くのは止めて渋山で映画を見たりウィンドウショッピングをして楽しいんだ。
お昼になり食事をしている時にこの前の事が心配で恥ずかしいけど聞いてみたら、京之介様が心配する事は何もありませんという事で軽く流された。何となく消化不良だけどこれ以上聞くのも失礼だと思いそこでこの話は止めた。
この日は、特にこれ以外何も無く彼女を家まで送って帰った。この前詩織さんは積極的に来たけどこの日はそんな素振りは見せなかった。
この人は俺に対して有栖川さんという人と等距離で居たいと言っていたからああいう積極的な行動に出たんだろうな。大人しく淑やかだけで心の中は結構競争心があるようだ。
§小早川
京之介様が帰って行った。本当は口付けだけでもしたかったのだけど今日は相当に用心している事が感じられたので諦めた。
この前は彼に対して有栖川さんと等距離で居たいとお願いして上半身だけ見せたけど、まさか最後までしてくれるとは思わなかった。そういう意味では彼女より一歩リード。このままでいい。急ぐのは悪手だ。
火曜日、智と碧海さんと一緒に登校して中央階段横の掲示板に貼り出されている成績順位表を見た。周りを見ると見ている人が唖然としている。
俺も見て見ると確かに唖然とした。俺、有栖川さん、勅使河原さんが何と満点だ。
「京、これはどういう事だ?」
「俺に聞かれても分からない。何が起こったんだ?」
「俺が聞きたいよ」
智も呆れている。
§勅使河原
まさか京之介様と私だけと思ったら有栖川さんが同じ満点だとは!四位以下は三十点以上開いている。全く問題にしなくていい。
しかしこの子、私が京之介様に声掛ける度に反抗して来る。まさかこの子。京之介様を……。そうはさせないわ。
§有栖川
やはり勅使河原さん、想像していた通りだわ。流石国立お水の茶女子大学付属高校の上位者。悦ちゃんが言った通りだわ。
これからもこの成績を落とさない様にしないと、あの人の為にも。あっ、こっちを見た、睨みつけている。私は微笑んで返してやった。
-あっ、小手川生徒会長が来たわ。
-本当だ。
-どうして?
「早瀬君、頑張りましたね」
「小手川さん」
それだけ言うとその場を去って行った。
-どういう事なの?
-愛理様はもう卒業されたのに。
-まさか!
-信じたくない。
§小手川
京之介様の点数は見る必要などない。満点が当たり前。気になったのは勅使河原さんと有栖川さん。何と二人共満点とは!
相当の学力が無ければ満点は早々に取れる点数ではない。満点の目的は京之介様狙い。でも精々頑張る事ね、お二人さん。私と京之介様の間に入って来る事は出来なわよ。
「智、教室に行こう」
「ああ」
参ったなぁ。まさかこんな事になるなんて。教室に戻ると古城さん、杉崎さん、夏目さんが俺の事をジッと見ている。どうしたんだ?
「早瀬君、私にもっと勉強教えて」
「私もよ早瀬君」
「私だって」
「いや、勉強教えてと言われても…」
「土日でもいいわ。早瀬君の所に行く。ねっ、勉強教えて」
「流石にそれは…」
予定が鳴って担任の桃ちゃん先生が入って来た。良かった。
「皆さん、おはようございます。中間考査も終わりました。少し体を動かして有酸素運動をしましょう。
という訳で来週の金曜日は体育祭です。今週金曜日の最後のLHRで体育祭実行委員男女一名ずつと各自の出場種目を決めて下さい。次の連絡事項ですが…」
体育祭か、あまりいい思いが無い。今年こそ玉入れと綱引き位にしたいものだ。
昼休みになり智と一緒に学食に行く。有栖川さんはクラスの友達とお弁当、勅使河原さんは仲良くなった友達と学食に行った。これでいい。
俺がカウンタからB定食を受け取って智と碧海さんが座っているテーブル席に行くと
「京、今年はどうするつもりだ?」
「どうするって?」
「体育祭の事だよ。去年あんなに目立ったじゃないか」
「あれはお姉ちゃんが居たから仕方なく頑張ったんだよ。でも今年はいないから静かに隅っこで座って居たい」
「ふふっ、早瀬君にそんな事は許されませんよ」
「おい、智。碧海さん俺の平和な高校生活を邪魔しようとしているぞ」
「私はそんな事は言っていません。早瀬君の周りがおとなしくさせてくれないと言っているんです」
「京、俺もそう思う」
「二人で結託して俺の静かな時間を壊そうとしているのか」
「「もう十分に壊れている(壊れてます)」」
「はぁ。俺のスローライフは…」
「「諦めろ(なさい)」」
放課後、生徒会に行くと詩織さんが二人だけになった時
「京之介様、体育祭はどうするのですか。去年は随分目立っていましたけど」
「悩んでいます」
「そうですか。…心配です」
「そう言われても」
本当にどうすればいいんだ。でもこういう決め事をしたくないと思っている時間は早く来る物であっという間に金曜日最後のLHRになってしまった。担任の桃ちゃん先生が
「皆さん、体育祭実行委員を決めて下さい」
「「「はい、はい、はい」」」
何故か、皆積極的だ。あっという間に男女の体育祭実行委員が決まった。そしてその二人が前に出て行くと
「よし、それでは皆自分が出たい種目を言ってくれ」
俺は興味無い。だから素早く手を挙げた。
「おっ、早瀬積極的だな。何に出るんだ。リレーか二百か?」
「いや、玉入れと綱引き」
「「「「「駄目ーっ!」」」」」」
何故か、智を除く全員、有栖川さんも勅使河原さんも反対して来た。何でだ?
「早瀬、残念だな。お前自身では決めれなようだ」
「いや、俺が出る種目だろ」
そうすると何故か全員が俺の方を見て
「「「「「「二百とリレー!」」」」」」
「あははっ、早瀬諦めろ。よし早瀬は二百とリレーだ。書いてくれ」
「はい」
体育祭実行委員に決まった女子がニコニコしながら俺の名前を書いている。
「では、早瀬と一緒にリレーに出る女子は。全学年同クラスリレーだから一クラス四名迄だ。後、女子二名、男子一名だ」
「「「「「「「はい、はい、はい、はい」」」」」」
「あははっ、流石モテ男早瀬だな。じゃんけんで決めるか」
結局、女子は杉崎さんと夏目さんに決まった。有栖川さんと勅使河原さんが物凄く悔しい顔をしている。
男子は
ほとんど決まった時、
「困ったな。二人三脚が決まっていない。誰かやる人いないか?」
シーン。
この競技は色々な意味で問題がある。そう結構男女で体をぴったりと合わせて走らなくてはならない。練習も必要だ。だから手を挙げないのだ。
「ふーん、どうするかな」
体育祭実行委員の女子が男子に何か耳打ちしている。聞き終わると
「それはいい考えだ。早瀬、男子やってくれ」
「俺がか?」
「そうだ頼む。という訳で女子誰かいないか」
また俺の思いは無視された。そして女子全員がまた手を挙げたが、じゃんけんで決めたのはなんと古城さんだ。
女子達が古城さんを恨めしそうに見ている。有栖川さんと勅使河原さんにいたっては近くの席なのに睨んでいる。そんな事は無視して古城さんが
「早瀬君、宜しくね。一杯練習して一位になろうね」
「はい」
今度は他の女子も古城さんを睨んだ。火に油注ぐような事言うからだよ。
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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