第50話 気付かれない様にするのが一番
GWも終わった翌日火曜日、俺はいつもの様に学校の最寄り駅を降りて学校に向かっていると後ろから
「京、おはよ」
「早瀬君、おはようございます」
「おはよ、智、碧海さん」
「京、なんかスッキリした顔しているな」
「そうか、GW中は稽古で汗かいたからな」
「ふーん。なんか違う気するけど。ねっ、弥生ちゃん」
「ふふっ、智也君。早瀬君もプライベートがあるでしょう。親しき仲にも礼儀ありだよ」
「おっ、流石碧海さん」
「はい!」
「なんか、俺仲間外れ」
「そんな事無いって」
「ところでさ京。考査ウィークの事なんだけど…」
「二人でやるのが良いんじゃないか」
「早瀬君、私と智也君を助けて」
「あっ、えっ?」
「お願い」
「まぁ、まあいいですよ」
「おい、京。何故か弥生ちゃんの味方していない?」
「だったら、智一人でやるか?」
「そんなご無体な」
そんな話をしている間に学校に着いてしまった。昇降口で履き替えている時、智が
「勉強会だけど、教室で言うと去年みたいになるから、決め打ちで行くぞ」
「おう、それがいい」
智と一緒に教室に入ると例によって、有栖川さん、勅使河原さん、古城さん、杉崎さん、夏目さん達が朝の挨拶をして来た。俺はそれに返すと早速古城さんが
「早瀬君、なんかスッキリした感じだね」
それに呼応して杉崎さんが
「うん、そんな感じする」
女子って、感が良いのかな。ここは知らんぷりするしかない。
「GWはゆっくりできたし、稽古も出来たので、気分良いんですよ」
「そうなのか。それは良かったわね。
§杉崎
おかしい、のんびりして稽古した位でこんなにすっきりした顔になるのかな?
§古城
おかしい、有栖川さんの反応はいつもと違う。なんか余裕ある。まさか…。
「有栖川さん、GW何していたの?」
「私ですか…」
この時予鈴が鳴って担任の桃尻塔子先生が入って来た。
「皆さん、おはようございます。GWも終わったばかりですが、来週火曜日から中間考査があります。今日から考査ウィークに入りますが、一学期の中間考査だからと言って気を抜かない様にして下さい。次の連絡事項ですが…」
§勅使河原
中間考査か、いいチャンスだな。私と京之介様との間に入り込む隙など無いという事を教えてやる。
§有栖川
GWに京之介さんが素晴らしい言葉を私に言ってくれた。そしてあの時は素敵な経験もさせてくれた。
これからの考査は、全て京之介さんと一緒の位置に居なければいけません。そうでなくてはあの言葉に応えられない。
授業は午前中だけだけど学食は親切に午後一時半まで開いている。俺は智と一緒に学食に来ていた。
勅使河原さんは別の子達と一緒に学食に来ている。あの子の為にもこれでいいんだ。
目の前に座る智が弥生ちゃんの作ってくれたお弁当を食べながら
「京、何かおかしいと思わないか?」
「何の事だ?」
「気の所為かも知れないけど、あれだけ京にべったりだった勅使河原さんと彼女の行動に反発していた有栖川さんが凄く大人しい感じがするんだが?」
「気の有所為だろう。あの二人もGW中にいい事有ったんじゃないか」
有栖川さんにとっては嘘ではない。
「そうかなぁ」
§碧海
智也君の感は多分当たっている。早瀬君に何か有ったに違いない。何故って智也君が私とした後のあのスッキリした顔に感じが似ている。誰かとそれなりの事が有った事は間違いない。でも誰と何を?それは分からない。
お昼を食べ終わると智が
「教室に戻ったら俺は何も言わずにバッグを持ってそのまま図書室に行く。京は間をおいて来てくれ。そうすれば気が付かないだろう」
「おう、そうする」
そして教室に戻り、智は何も言わずにバッグを持って教室を出て行った。俺はそれから数分して出ようとすると何故か古城さん、杉崎さん、夏目さんが俺の前に立ち
「「「早瀬君、一緒だよね」」」
分離脱出作戦失敗!
§勅使河原
何なの子の子達、京之介様に一緒だよねって、どういう意味?まあ、付いて行ってみるか。
俺は仕方なく、三人…何故かプラス二人を連れて図書室に行った。図書室に着くと結構な人数の生徒がいる。
俺は黙って智と弥生ちゃんの座っている四人席にそのまま座ると智が小さな声で
「京どういう事だ?」
「ああ、作戦は失敗した」
「なるほど」
古城さん、杉崎さん、夏目さんは前の事があるので素直に四人掛けのテーブルに座ったのだけど勅使河原さんは俺の傍に来て
「早瀬君、ここ良いかな?」
俺が彼女の顔を見ると、ススッと有栖川さんが寄って来て
「駄目です。そこは私です」
「早い者勝ちです」
「そんな事有りません。ここは私です」
図書委員がこっちを見て不味そうな顔をしている。
「あの、図書室で声を立てるのは良くないです。ここは誰も座らないという事で」
「「えーっ!」」
「そこの二人、静かにして下さい」
「「はーい」」
まあ、こうなるよな。この後二人は別々の席に座った。有栖川さんが暴発するかと思ったけどこの位ならいつもと変わらないか。
最終下校の予鈴が鳴ると俺は生徒会室に顔を出した。生徒会長だけが残っている。
「あっ、京之介様。少し経ったら一緒に帰りましょうか」
「あの生徒会の仕事は?」
「一学期のこの時期は特に即決性のない案件ばかりです。他の役員も先程帰りました」
「そうですか」
そのまま生徒会室に入って庶務の席に座って十分程だが勉強した。それから廊下も静かになった時間に二人で一緒に駅まで向かった。
手は繋いでこないけど、詩織さんは何故かとても嬉しそうだ。
こんな感じが中間考査前日まで続いた。稽古は休み。有栖川さんとは彼女の家の近くの図書館で一緒に勉強した。何も文句は言わない。この前の事が功を奏している様だ。
このまま静かに時が過ぎてくれればいいのだけど。
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます