第47話 体力テストでそんなに頑張らなくても
その週の金曜日は、健康診断が有った。身長測定で俺は五セン伸びて百八十センチになり智は三センチ伸びて百七十八センチになった。
ちなみに碧海さんは智と同じく三センチ伸びて百六十三センチだそうだ。
「智、身長の伸び迄一緒とは、本当に仲が良いな」
「ああ、京に二センチ越されたけど、弥生ちゃんとは一緒の伸びだ。嬉しいよ」
「ふふっ、智也君私もです」
「おおう、仲が宜しい様で」
全く羨ましい限りだ。俺も奈央子さんだけだったらそろそろ公にしてもいいのだが、今の状態では公にしたら混乱以外の何物でもなくなる。
俺はこの前の昼休みに勅使河原さんにはっきりと言って以来、彼女が教室の中でべったりしなくなって、俺の事を早瀬君と呼ぶようになった。
周りの子が不思議な顔をしていたけど、それも慣れた所為か最近は、周りの女子とも話す様になって来た。
でも有栖川さんとは何故か口を利かない。お互いが牽制している様な気がする。そのお陰かも知れないけど奈央子さんが勅使河原さんに口を出す事も無くなった。ひとまず平穏な感じだ、これでいい。
そしてGWの前半が始まった。曜日的には前半が土日月、中三日登校して後半四日間の休みになる。
最初の土曜日は午前中、稽古に行った後、部屋でのんびりした。日曜日は終日奈央子さんだ。
奈央子さんは、学校で我慢している所為か、巫女玉で会うと直ぐに駐車場の踊り場まで俺を連れて行き抱きついて来た。
「本当は、私の家か京之介さんの家でこうしたいのですけど駄目なんですよね」
「絶対に我儘言わないなら俺が奈央子さんの家に行ってもいいですけど」
「えっ、本当ですか?それなら今から」
「今日は映画を見る約束でしょ」
「でもう」
「じゃあ、来週はそうしましょうか」
「はい♡」
また目がハートマークになった様な。本当に大丈夫かな?
そして月曜日は詩織さんと会った。この日は俺の家の最寄り駅から学校側に二つ戻った駅の近くにあるこの辺では一番大きな公園だ。
彼女からすると少し遠い気もするが、本人曰く、学校に行くのと同じですと言って気にしなかったようだ。確かに学校の最寄り駅からも二駅だ。
ブラウスに薄手のカーデガン、膝上丈のスカートに可愛い白い運動靴だ。中々素敵だ。
この時は彼女から手を繋いで来たが俺も離す事も無く繋いだ。のんびり公園の中を散歩していると
「大分、暖かくなってきましたね。もうそろそろ半袖の時期です」
「そうですね」
そんな他愛無い話をしながら一日を過ごした。この人と会っていて本当に抵抗が無い。何というか、自分からこうしたいとか積極的な所が全く無い。
近くの喫茶店で食事をしている時ものんびりベンチに座っている時も自然の流れでそうしているという感じだ。これがお姉ちゃんの言っていた事なんだろうか。
そんなGW前半が終わって学校に登校して三日目。今日は体力測定だ。これは普段から道場で充分に柔軟体操をしているので得意なのだが、智が上体そらしで
「ぐぐぐっ!」
「智頑張れ。後一センチで二十センチだぞ」
「ぐはっ、駄目。俺は京じゃない」
ちなみに俺は完全に垂直まで上体を反らせる。この後、反復横跳びとかもやったのだけど、その後
「京、見て見ろよ」
「えっ?」
智が指差した方を見ると何と奈央子さん、勅使河原さん、杉崎さん、古城さんそれに夏目さんが並んでいる。
先生の笛の合図で反復横飛びが始まったのだけど、皆美人だし、可愛い上にスタイルがいい。男子が、測定を止めて一斉に見ている。
確かにジャージを着ているとはいえ、その揺れは俺もつい見てしまった。特に杉崎さんと奈央子さんのお生胸は見ているだけにちょっと感動する。そんな事考えていると智が
「あれっ、ちょっと勅使河原さんがリードしている。あっ、有栖川さんも負けない。えっ、杉崎さんが…」
あの五人何競っているんだ?笛を持っている先生も呆れている。時間になり終わると奈央子さんと勅使河原さんが同じだった。外の三人もほとんど差が無い。そこまでは良かったのだが、その後が問題だった。
全員が何故か俺の所に来た。少し額に汗が付いて女の子の匂いがむんむんしている。そして
「「「「「頑張りましたよ、早瀬君」」」」」
なんて言ったものだから学校中の男子の痛い視線を浴びてしまった。智が
「いやぁ、さすがハーレム男だ」
「誰がだよ?」
「京に決まっているだろう」
「五月蠅い。それよりグランド行くぞ。五十と千五百が待っている」
「俺、止めようかな」
「駄目、俺と一緒に走るぞ」
「えーっ!それだけはご勘弁を」
その後も女子達五人は、上体そらしでその大きな胸を強調し、垂直飛びで揺らして注目されたようだ。そりゃ見るよな。
俺達がグランドも終わって体育館に行くと何故か詩織さんが寄って来て
「早瀬君、今日も生徒会室来て下さいね」
なんて言うものだから智が
「おい、生徒会長までお前の事…」
思い切り智の口を手で塞いで
「モガモガ…」
「いらん事言うな」
手を離すと
「どう見てもそうとしか思えん」
「気の所為だ」
§有栖川
やはり小手川さんは生徒会を利用して京之介さんに近付いている。あの人勅使河原さん以上に要注意だわ。
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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