第34話 クリスマスは色々とある
生徒会選挙も終わったその週の金曜日の夜、自分の部屋の椅子に座り、何気なくカレンダーを見ていた。
来週水曜日は終業式。そして今年ももうすぐ終わる。お姉ちゃんと同じ高校に入ってもう九ヶ月も経った。早いものだ。
そろそろ掛かって来ると思っているとスマホが震えた。画面を見ると奈央子さんだ。タップして直ぐに出ると
『京之介さん、奈央子です』
『はい』
『もうすぐクリスマスですよね。どうしましょうか?』
『二人で何かしましょうか?』
『はい、出来れば我が家で二人だけのクリスマスパーティをやれると嬉しいのですが』
ストレートに言って来たな。
『家でするのは止めましょう。でも、どうしようかな』
『駄目なんですか?でも出来る所他にあります?私は京之介さんと二人でクリスマスを過ごしたいんです』
『俺もそうしたいんですけど。明日までにもう一度考えましょうか?』
『明日で解決します?』
『するしかないですね』
それから別の事も少し話をして話を終えた。困ったぞ。お互いの家なんて絶対に駄目だし、ファミレスとかカラオケなんかも駄目だ。どうするかな。
答えも出ないままに時間が過ぎて眠りに入ってしまった。翌日午前中は稽古に行った。その後、家に帰って来てお昼を両親とお姉ちゃんと一緒に食べているとお姉ちゃんが
「京之介。有栖川さん、クリスマスの事言ってなかった?」
「うん、言っていた。何処でやるか迷っている。彼女の家と言われたけど、それは絶対に控えたいし。でも二人で過ごしたいと言っている。気持ちは分かるけどどうすればいいのか分からない」
「そう、我家でやれば?」
「えっ?!どういう事?」
「簡単な話よ。京之介の部屋でやれば二人だけで過ごせるわよ」
俺の頭は混乱していた。今迄お家デートを反対していたお姉ちゃんが、なんでこんな事を言うのか。
「京之介、二人でクリスマスをやるのは明日の日曜日。お姉ちゃんもお母さんも家に居る様にする。そうすればあの子も強硬策には出れないでしょう」
なんて事を考えるんだろう。懐に入れて手足を動けない様にするとは。
「でも、奈央子さんが強硬策に出て来たら?」
「京之介、ここは自分の家よ。いくらでも止める事出来るでしょう。でもお姉ちゃん達は決して邪魔しない」
「いきなり明日は、どうなんだろう?」
「出来ないなら、精々ファミレスで会うしかないわね。相談してみなさい」
俺は昼を食べ終わった後、奈央子さんに直ぐに連絡して考えを言ってみた。
『京之介さんの家に行けるんですか?』
『はい、俺の部屋で二人でクリスマスをして過ごしましょう』
なんて事なの。京之介さんが自分のお部屋に私を呼んでくれた。遂にこの時が来たんだ。ご家族の方が居ると言っていましたが、そんな事私には関係ない。
『明日で全然構いません』
プレゼントはもう用意してある。いつでも会える。
『何時に会えますか』
『午前十一時にうちの最寄り駅で待っています。』
『はい』
私は京之介さんとの会話が終わった後、直ぐに明日の準備に取り掛かった。一番重要なのは下着、この日の為に買って有った。ちょっと恥ずかしいけど彼は喜んでくれるはず。
プレゼントは、私の気持ちをはっきりと示す事が出来る物。これでいいです。料理はキッチンを使わせてくれると言っていました。これで後は…。
日曜日、俺は午前十一時十分前に改札で待っていた。奈央子さんは約束の十分前に改札を出て来た。
白いシャツに膝上丈の濃いグレーのシャギースカート。膝までの薄いグレーのブーツに細かいチェックのロングコートそれに白いストール。
耳には大きめのピアス。白い可愛いバッグとは別に大きいバッグを持っている。彼女の素敵さを思い切り醸し出している。
「京之介さん」
「奈央子さん、いらっしゃい」
俺は、大きいバッグを持つと
「行きましょうか」
「はい」
遂に京之介さんの家に招かれた。今日はご家族が居ると聞いている。第一印象は重要。大分緊張してきました。
駅から真直ぐの道路を五分程歩いて交差点を渡ると大きな塀が続く家が在った。
「ここです」
「は、はい」
「そんなに緊張しなくていいですよ」
車止めのある門を潜り手入れの行き届いた日本式庭園のある庭を通り過ぎて玄関まで来た。彼が横開きの玄関を開けて
「ただいま、来て貰ったよ」
静かに二人の女性が現れた。一人は愛理様、そしてもう一人は多分お母様だろう。
「初めまして、有栖川奈央子と申します。本日は宜しくお願い致します」
「いらっしゃい有栖川さん。今日は良くいらしてくれたわ。さあ上がって」
「ありがとうございます」
俺は早速キッチンに奈央子さんを案内するとお母さんが、簡単にキッチンの物の置き場所を説明してくれた。
「後は宜しくお願いしますね。有栖川さん」
「はい」
この子の一つ一つの動作を見ればどういう風に育てられたのか分かるわ。
京之介さんのお母さんが、私を試そうとしているのが分かる。ここは失敗の無い様にしないと。
私は家から持って来たエプロンを付けてから、下ごしらえをしてあったホールチキンを焼く為に先にオーブンを温めた。
その間に材料を洗って調理しやすいようにしてあったレタスやルッコラ、トマトやモッツァレラチーズをサラダ用に切ってそれをお皿の上に置く。
温まったオーブンにホールチキンを入れて焼く。これはちょっと時間が掛かるけど、その間にクラッカを箱から取出ししてからアンチョビ、三種類のチーズ、トマト、レモンを適当な大きさに切って、クラッカを皿の上に置いてから、その上に今切ったものを置く。決して多くなく決して少なくなく。
「奈央子さん、何か手伝いましょうか?」
「お願いできますか?」
「はい」
「それでは取り皿とグラス、それにチキンを取り分けるナイフとフォークのセットをリビングに持って行って下さい」
「分かりました」
食事は普段ダイニングでするが、今日の為にリビングを開けてくれている。お父さんは書斎。お母さんはダイニング、お姉ちゃんは自分の部屋に居るはずだ。
奈央子さんが一通りの調理を終わり、先に片付けられる調理器具を洗い終わるとエプロンを外して持って来た大きなバッグに入れた。
「京之介さん、リビングに行きましょうか」
「はい」
俺と奈央子さんは同じソファに座ると良く冷えた炭酸系のジュースをグラスに注いでから
「「メリークリスマス」」
少しだけジュースを飲んだ後、奈央子さんは大きなバッグからクリスマスカラーにプリントされている袋を取り出すと
「私からのプレゼントです」
「ありがとうございます。これ俺からのプレゼントです」
「ありがとうございます。開けていいですか」
「勿論です」
俺は奈央子さんから渡された袋を開けると外で奈央子さんがしていた同じ色のストールが出て来た。
「これって」
「はい、学校に行く時や会う時はこれを着けて行ってくれると嬉しいです」
なるほど、これは素直に受け取っておくか。
「分かりました。着けさせていただきます」
私は京之介さんから頂いたクリスマスカラーが施された包み紙を丁寧に解くと中から肌触りの良いブルーの箱が出て来た。それを開けると
「素敵」
中には銀色のブレスレットが入っていた。メーカ名はティファニー。
「嬉しいです。今付けてもいいですか」
「勿論」
何とも言えない気持ち。彼が私にこの様な素敵なブレスレットを贈ってくれるなんて。
「似合いますよ。奈央子さん」
「とても嬉しいです」
左手に付けたブレスレットを右手でゆっくりと触りながら喜びを感じていると
「奈央子さん、そろそろ食べましょうか。お腹が空いて来ました」
「ふふっ、そうですね」
どれもがとても美味しかった。ただホールチキンは流石に二人で食べられないので綺麗に片側だけ食べた。それ以外は二人で完食。
「とても美味しかったです」
「そう言って頂けると作り甲斐がありました。本当は学校に京之介さんのお弁当を作って行きたいのですけ、まだまだそれは出来ません。ですから思い切りその気持ちも含めて作りました」
「そうですか。嬉しいです」
食事が終わると二人で食器を片付けてキッチンで洗って洗い籠に全部入れ終わると京之介さんがトレイに微炭酸のグレープジュースとクラッカの残り、それに少し残った具材を別皿に置いてから
「俺の部屋に行きましょうか」
「はい♡」
遂にこの時が来ました。大きな廊下を歩いて二階に上がる階段を登ると左に曲がって
「ここ、俺の部屋です。お姉ちゃんは隣です」
一応牽制しておこう。今日は流石にドアは閉めている。
愛理様のお部屋は京之介さんの隣ですか。仕方ない事ですね。姉弟なのですから。
部屋に入ると彼の匂いが一杯した。綺麗にベッドメイキングされていて勉強机の他に本棚、洋服ダンスが有った。そして床にはローテーブルとソファ。私の部屋より大きいです。
彼がトレイをローテーブルに置くとソファに座った。私もゆっくりとソファに座ると
「今日はとても楽しいです。京之介さん、前に言ってくれましたよね。四点足らなかったけどしてくれるって」
そんな事言ったかな。あっ、口付けはすると言ったか。
「そう言えば」
「はい。では実行してください」
彼女は俺に抱き着くと上目遣いに俺を見て目を閉じた。ここまで来たら仕方ない。彼女の体を力を入れない様に優しく背中に手を回すと唇を彼女の唇に近付けた。
柔らかい。とても柔らかい。初めての口付け。こんな感じなのか。
遂に京之介さんと口付けする事が出来ました。この日をどれだけ待ち望んだか。この方を学校で見てからもう九ヶ月近くが経ちます。
私は少しだけ強く彼の唇を吸う様にした。彼も答えてくれる。ここは…。
奈央子さんの左手が俺の右手を掴んだ。どうする気だ。
えっ?!……。柔らかい。こんなに柔らかい物なのか。彼女の左胸の柔らかさがはっきりと伝わる。離れないと…。でもなんて気持ちがいいんだ。少しだけ手を動かすと口付けをしたままで彼女が
「うっ!」
このままです。このまま…。えっ?彼の唇が離れた。そして右手も私の胸から離れた。彼が私の顔をジッと見ている。
少しの間、静かな時間が流れた。
「奈央子さん、ここまでにしましょう。正直、このままあなたを抱きたいと思う気持ちが一杯あります。でも、今日はここまでにしましょう。これ以上進むと歯止めが掛らなくなりそうです」
「良いではないですか。私の体はいつでもあなたを受け入れます」
「駄目です。お姉ちゃんは隣の部屋に居ます。下には両親が居ます」
「声は我慢します」
「奈央子さんも初めてですよね。出来ない相談だと思います」
「で、では。もう少しだけ」
彼女はそう言って目を閉じた。俺はそっと彼女に唇を付けた。なんとなく二人の歯が浮いた。そして舌と舌が触り合うと……。
だいぶ経ったような気がした。唇を離して机の上の時計を見ると部屋に入ってから三十分以上が経っていた。
随分長くしていたんだな。彼女は俺の体に全面的に体を預けて来ている。本当は俺だってしたい。
奈央子さんがゆっくりと目を開けた。そして
「京之介さん。もう一度だけ」
また舌が絡み合って十分程してしまった。右手は彼女の胸だ。少しだけ動かしている。とても柔らかい。彼女は眉間に皴を寄せて声をあげる事を我慢している。ここまでだな。
唇を離すと
「奈央子さん、今度にしましょう」
「はい」
頬は真っ赤になり口元から少しよだれが垂れて目がトロンとしている。そして俺の体に自分の体を寄せて来た。
全てを捧げる事は出来ませんでしたけど、濃い口付けディープキッスは出来ました。私の胸の魅力も感じて貰えました。ここは彼の家。ここ迄が限界です。
でも彼はまた今度と言ってくれました。全てを捧げるまでもうそんなに時間は掛からないと思います。
しかし、思い切り薄生地のブラは正解でしたね。私もとても感じてしまいました。
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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