第19話 お姉ちゃんの京之介保護策


 俺は、家に戻るとお姉ちゃんは部屋に居た。俺が自分の部屋に入るとお姉ちゃんが入って来て

「どう有栖川さんとは?」

「うん、上手く行っているけど、とても焼き餅焼き」

「焼き餅焼き?」

「クラスの子と一緒に帰るとその日の夜に色々言って来る。今日も今度の駒門祭文化祭は、他の女子と一緒に回らないでくれ、回るなら少しでも短い時間にしてくれって。

 学校内で他の女子と話をしたりするのは友達になる時の条件だし、カモフラージュになるからいいって言って納得して貰った。でもこれほどとは思わなかった」


「そう、そういう事。…ねえ、京之介は駒門祭の時、何か役割有るの?」

「占いとカードゲームだから雑用という何もしない係」

「そうそれなら、生徒会からの依頼という事で駒門祭の見回りをしたらどう?そうすれば有栖川さん以外の子達とも一緒に回る必要なくなるわ」


「あっ、それ良いかも。でもそんな事出来るの?」

「簡単だわ。藤堂先生と1Bの駒門祭実行委員に言っておけばいいだけよ」

「分かった。じゃあそれでお願いします」


 やっぱりだわ。最初に友達になる時の約束を聞いた時、結構焼き餅焼きだという事は分かっていた。


 だから生徒会の見回り役なら誰も一緒に回る事は出来ない。回った後は生徒会室に居させればいいし。これで有栖川さんの焼き餅は少なくなる。


 それに駒門祭を利用して他の子達は、弟に近付く為に色々としてくるはず。それも防げる。一石二鳥だわ。


 そしてそのまま生徒会の庶務として入れてしまって毎日放課後生徒会室に来させるようにすれば、他の子達が一緒に帰ろうなんて事も思わなくなる。



 

 駒門祭当日、俺は登校すると一度教室に行ってから生徒会室に向かった。古城さんも夏目さんも占い師の役割がある。


 智にいたってはカードゲームの相手役だ。あいつは中学の頃からそっち方面には長けていたから適材だ。


 俺は、両方共未知の世界。もっとも皆占い師はやったことが無いという事で放課後は占い師の本とかいうのを駒門祭予算から買ってそれなりになる練習をしていた。教室の飾りつけはそういう雰囲気になっている。


 俺が生徒会からの依頼で見回り役に抜擢されたと知るとブーブー言っている女子が多かったが、お姉ちゃんの読みは当たっていたようだ。



 生徒会室に行ってドアをそっと開けて覗く様にしながら

「おはようございます」


 と言うとお姉ちゃんが、

「京之介、こっちに来なさい」


 何故か、お姉ちゃんの隣に座らされた。そして副会長、書記さん、会計さん、庶務さんを紹介された後、


「皆、弟の京之介よ。駒門祭の間だけだけど、見回り役として手伝って貰うわ。宜しくね」

「お姉ちゃん、いえ生徒会長の弟の早瀬京之介です。二日間宜しくお願いします」


-京様よ。

-うん、チャンスかも。


「そこの二人。個人的な事は慎む様に。あくまで見回りとして来て貰っています」

「「はーい」」

 お姉ちゃんの発言は絶対的なようだ。


 やがて十時になりお姉ちゃんが放送室から駒門祭の開始を告げると学校内が急に賑やかになった。


「京之介、紹介するわ。庶務の加瀬博(かせひろし)君。この腕章を付けて彼と一緒に回って。

 一通り回ったら一度生徒会室に戻って休みなさい。午前中二回、午後二回回ってくれればいいわ。お昼もこちらで用意してあるから」

「俺、加瀬博。早瀬…京之介って呼んでいいか、名字だと生徒会長を呼び捨てにしているみたいで…」

「いいよ。京之介で」


「午前は、十時半と十一時半に回ってくれる。もしトラブルを見つけたら、生徒会の直通電話にスマホから連絡して。止めるのはいいけど、決して手は出さない事。京之介分かっているわよね」

「うん、分かっている」

 弟が避けがたい状況で防いだつもりで相手を怪我させたら大変だから。



 午前十時半になると

「京之介、加瀬君お願いね」

「「分かりました」」


 俺達は左腕に生徒会と書かれた腕章を付けてから

「京之介、校舎の中を一通り回ったら、体育館に行って、その後模擬店を回るか?」

「そうするか」


 まだ二人共慣れていない所為か口数が少なく、決めた見回りコースを見て回った。まだ午前十時半を少し過ぎた所だ。それに生徒だけの参加だから特に問題も無かった。


 午前十一時半の二回目の見回りも特に何もない。1Bの教室の前も通った。夏目さんが占い師をやっているという事でそれなりに人は入っている様だった。


 それから体育館に行って様子を見ても皆楽しそうに見ている。模擬店は時間という事もあり、大分賑わっているけど、トラブルらしい雰囲気はない。この学校は進学校だ。つまらない事を考える奴は居ないのだろうな。


「京之介、生徒会室に戻るか。平和そのものだな」

「うん、明日は生徒の親類とはいえ、一般の人が入って来るから結構な人数になるんだろうな」

「俺も一年生だから分からないけど、多分そうだろう」


 そんな話をしながら生徒会室に戻るとテーブルの上に松花堂弁当が置かれていた。

「京之介、加瀬君。お疲れ様。お吸い物は紙コップにそこのウォーターサーバーからお湯を入れて」

「わかった」


 凄いな。生徒会って教室とは違うんだ。加瀬君とお弁当を食べた後、午後も二回見回ったけど何も無かった。明日も同じであってほしい。


―――― 

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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