第20話 京之介はモテる
駒門祭二日目もお姉ちゃんの開始の放送で始まった。午前十時から一般の方も入ってくるようになった。
今日は校門のところに行って一般の人が受付でパンフを貰っているのを見ていると女の人が俺をジッと見ている時が有る。それも何故かご婦人が多い。
「京之介は年上にモテるかもな」
「なんで?」
「さっきから生徒の母親見たいな人がお前の顔をよく見て行くぞ」
「いや、加瀬を見ているんだろう」
「噂に聞いてはいたが、やっぱり自己肯定感低いんだな。見てるのは京之介だよ。今日は楽しみだ」
どう言う意味だ?
午前十時半になり巡回を開始すると何故かご婦人から
「ねえ、生徒会の子でしょ。ここはどうやって行くの?」
「そこは、向こうの階段を降りて左側に行けば直ぐに分かります」
どう見てもパンフ見れば分かると思うんだけど。
「ほれ見ろ、ご婦人キラーの京之介」
「詰まらんニックネーム付けないでくれ」
それからも明らかに分かるでしょっていう事を何度か聞かれた。参った。
一回目の巡回も終り、生徒会室に戻ろうとすると杉崎さんが寄って来て
「早瀬君」
「なに?杉崎さん」
「今日は時間ない?少しでもいいから一緒に回りたいんだけど」
「ごめん、全然ない」
「そうなの。少しでも駄目?」
「ごめん」
杉崎さんが残念そうな顔で戻って行った。
「噂には聞いていたけど、やっぱり京之介はモテるな。羨ましいよ」
「加瀬は、彼女いないの?」
「残念ながら。それに生徒会って色々やる事が多いんだ」
「ふーん」
午前十一時半になり二回目の巡回を一年の教室から始めた時、1Bの所で何か騒いでいる。
「京之介」
「うん」
急いで行くと
「あっ、早瀬君。丁度良かった。今呼びに行こうとしたところ」
「どうしたの?」
「夏目さんの所で占いして貰っている男の人が彼女にしつこいのよ。全然帰らないの」
直ぐに教室に入って行くと確かに夏目さんの前で面倒な事を言っている。
「俺と君の相性はどうかな。今度デートしない?」
「済みません。もう時間です。他の方と交代してくれませんか?」
「何言っているんだ。君は占い師なんだろう。俺と君の相性占ってよ」
めんどくさそうだな。加瀬に直ぐに生徒会に連絡するように頼んでから
「済みません。一人五分と決まっています。次の方に譲って下さい」
その人は振り返って俺を見ると
「なんだよ。俺は占いをして貰いたいだけだ」
「はい、でもお一人一回五分と決まっています。もうお引き取り下さい」
いきなり男の人が立ち上がると
「何だ手前は、偉そうに」
そう言って俺の胸倉を掴もうとしたので軽くいなしてその腕を相手の背中に回して締め上げると
「痛てぇ。何するんだよ」
「京之介!」
藤堂先生と体育の先生それにお姉ちゃんがやって来た。藤堂先生がその大きい体で、男のもう一方の腕をつかむと聞いた事の無い怖い声で
「来て貰います」
「ひっ!」
流石だ。藤堂先生達が男を連れて行くと
「早瀬君」
「えっ!」
「怖かったよう」
夏目さんが占い師の恰好で俺に抱き着いて来た。それを見た同じ占い師の恰好をしている古城さんが
「夏目さん、何やっているの。離れなさい」
「駄目、怖かった」
「いい加減にしなさい」
古城さんが俺と夏目さんを引き離しにかかっている。俺も流石に彼女の両肩を持って
「夏目さん、離れて下さい。他の来場者もいます」
「でもぅ」
渋々と俺から離れるとクラス委員長が
「皆、再開するぞ」
「「「うん」」」
流石クラス委員長だ。
-ねえ、見た。
-早瀬君、頭いいだけじゃないんだ。
-腕もたつんだ。
-まだ古城さん、夏目さんだけよ。
-まだ間に合うわよ。
-うん。
「加瀬、早く巡回に行こう」
「おう」
俺達は廊下に出ると
「あははっ、流石京之介。これで益々モテモテだな」
「勘弁して欲しいよ」
その後も校舎を回って体育館を回って模擬店も回ったけど何も無かった。夏目さん綺麗だからあんな事も起こるのかな。
生徒会室に戻るとお姉ちゃんが
「京之介、加瀬君。ご苦労様。本人が大分反省していたのであのまま帰って貰ったわ」
「そう、良かった」
―見たかったなぁ。早瀬君のカッコいい所。
―わたしもう。
「そこの二人、不謹慎な事言わない様に」
「「はい」」
昨日と同じ様にお昼を頂いた後、休んでから午後の巡回に出た。廊下で有栖川さんとすれ違った時に微笑みはしなかったが、すれ違い終わるまで俺の顔を見ていた。
「京之介、我が校の美少女一、二を争う有栖川さんがお前の事しっかり見ていたな」
「気の所為だろう」
「我が校の華と言われる早瀬生徒会長を姉に持ち、有栖川さんを彼女にしたら鉄壁京之介と言われそうだな」
「何処がどうなるとあんなに綺麗な有栖川さんが俺とそういう事になるんだ?」
「でも今の視線まんざらでもなさそうだけど」
「気の所為だ」
奈央子さんとの関係がバレたらどんな事になるか想像もつかない。善意で見てくれる人なんか少ないに決まっている。性善説は昔の事だ。
無事に駒門祭も二日目を終わり、お姉ちゃんの放送で終了が告げられると校内が静かになった。片付けは明日だ。
俺は、生徒会室に戻った後、教室に戻ろうとするとお姉ちゃんが
「京之介、話が有るから待っていて」
「分かった」
他の役員もPCを立ち上げて何かを待っていると各クラスから今回の精算の報告が上がって来た。それを庶務が整理して書記が内容確認して会計がPCにデータを入れて行く。
駒門祭の精算には、いつもの役割と違った動きもするようだ。そして各クラスの損益も伝えられる。
報告に来た各クラスの文化祭実行委員は帰らず、大きなテーブルに座って待っている。立っている人もいる。
やがて最終報告がPCに入力され学年毎と全学年の売上順位が発表されると拍手と共に文化祭実行委員が帰って行った。
この後、生徒会は更に色々する事が有るようだ。確かに生徒会って大変なんだな。
お姉ちゃんが
「京之介、家で話しましょう。今日は帰って良いわ」
「分かった」
俺は残っている役員に挨拶をした後、加瀬に
「楽しかったよ。ありがとう」
「こっちこそだ。またなご婦人キラー京之介」
「おい!」
「事実だろ」
-何ご婦人キラーって?
-京様、遂に年上の方まで
-まさか?
「そこの二人、妄想しない!」
「「はい」」
この人達面白いな。俺が教室に戻ると何故か古城さんと夏目さんそれと友達二人が残っていた。俺はその人達挨拶して帰ろうとすると
「早瀬君、待って」
「なに?」
「今から打ち上げに行かない?」
「ごめん、家でお姉ちゃんと話があるんだ」
「生徒会長と?」
「うん」
「じゃあ、また明日」
流石にお姉ちゃんの名前は強力らしい。彼女達は不服そうな顔をしていたがそれ以上声を掛ける事は無かった。
とは言っても帰ったら奈央子さんどんな話が有るのやら。
――――
次回をお楽しみに。
面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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