第21話 奈央子さんと話をしている所を見られた


 俺は駒門祭が終わり、家に帰ってお姉ちゃんが帰って来るのを待った。午後六時半頃お姉ちゃんが帰って来ると一度自分の部屋に入ってから部屋着に着替えて俺の部屋に来た。


「京之介、あなた生徒会に入らない?」

「俺が生徒会、なんで?」

「下校時間に女の子から誘われるのを防止する為よ。放課後になったら必ず生徒会室に来る様にすればいいのよ。帰りはそのまま教室に寄らずに下校すれば分からない」


「確かに言えるけど、俺が生徒会に入るなんて想像つかないよ」

「直ぐにとは言わないけど、下校時に誘われるの嫌なんでしょ」

「確かにそうだけど。とにかく少し考えさせて」

「そうしないさい」


 それだけ言うとお姉ちゃんは俺の部屋から出て行った。俺が生徒会に入るなんて想像がつかない。それに入ってからスローライフ出来るのだろうか。


 無理なような気もするし。でも下校時に声を掛けられないのは助かる。最近、智も一緒に帰らなくなったしな。



 夕飯を食べて、風呂に入ってベッドで本を読んでいるとスマホが鳴った。画面を見ると奈央子さんだ。直ぐに画面をタップすると


『京之介さん、奈央子です』

『はい』

『今日の事聞きましたよ。夏目さんが京之介さんに抱き着いて来たんですって』

『はい、いきなりだったので驚きました』

『嫌です。他の子が京之介さんに抱き着くなんて許したくない。でも仕方なかったんですよね』

『はい』

 なんか素直だな。


『明後日、明々後日は駒門祭の代休ですよね。二日とも会って下さいませんか?』

『でも、会うのは日曜日だけと決めたのでは』

『嫌です。昨日今日とどれだけ京之介さんと一緒に歩きたかったか、とても我慢していたのにまさか他の子と抱き合っているなんて。私も京之介さんに抱き着きたいです。思い切りしたいです』

 そう来たか。会うのは俺も嬉しいけど二日連続か。でも用事も無いし良いかな。


『分かりました。取敢えず明後日会いましょうか。明々後日は用事が入るかもしれないし、会った時に確認しましょう』

『はい』


 京之介さんと駒門祭の代休日に会う約束が出来た。本当は私の家に呼んで、私の部屋に来て貰って…。そうすれば一気に距離が縮まる。でもまだまだその時期は遠い気がする。


 彼は私と会う事を嬉しいと言ってくれている。でもその先はゆっくりと歩みたいと言ってくれた。心は決まっているけど急がなくても良いという事なんだ。


 でも彼はモテる。多くの女子、それも一年生だけではない。二年生、三年生もチャンスが有れば彼に近付きたいと思っている。


 どんな事が起きるか分からない。もし積極的に来られたら彼は何処まで防ぐことが出来るんだろう。


 だからこそ、早く私との関係を学内に広めて他の人が彼に近付かない様にしたい。そうすれば今日の様な事も起こらない筈。



 翌日、駒門祭の片付けが有った。1Bは教室を仕切ってあった段ボールやカーテン、壁の化粧を綺麗にして一度掃除してから机と椅子を元に戻した。廊下に飾ってあったものを全部剥がして綺麗に拭いた。


 そして段ボールを綺麗に折って、校舎裏のリサイクルゴミ置き場に持って行って終わり。


 午前九時から片付けを始めたけど終わったのは午前十一時近くになってしまった。俺は駒門祭実行委員と一緒に生徒会室に行って、更に校門の飾り付けとか、外の舞台セットとか片付けを手伝ったので、終わった時はもう午後一時近くになってしまった。


 やっと解放されて教室に戻るともうみんな帰ったのかと思っていたら、何故か古城さんと夏目さんと友達二人が待っていた。


「あっ、早瀬君が帰って来た。駅まで一緒に帰ろう」

「えっ?その為に待っていたの?」

「「「「うん」」」」


 仕方ないか。こんな時間まで待っていたんだ。

「分かった、駅までね」


 駒門祭実行委員の男女二人は、笑いながら先に教室を出てしまった。



 §有栖川

 京之介さんが帰るのが遅くなるのは聞いていたから、待っていたのにまたクラスの女子に連れられて帰って行く。せっかく偶然を装って一緒に帰ろうと思ったのに。


 でも電車は同じ方向、チャンスかも。取敢えず駅まで行って彼女達と別れてから声を掛ければいい。



 俺は駅まで着くと古城さん達に

「じゃあ、これで。さよなら」

「あっ、待って。早瀬君、お昼食べていないんでしょう。一緒にファミレスで食べない?」

 待っていた理由はこれか。


「ごめん、家にお昼用意されているんだ」

「ええーっ、そんなぁ」

「じゃあ」


 そう言って片手を上げて俺は改札に入った。本当は家にお昼用意されてなんかないけど、あのメンバでファミレスはちょっと恥ずかしい。


 ホームで電車を待っていると

「京之介さん」

「奈央子さん?」

「ふふっ、上手く切り抜けましたね」

「見ていたんですか?」

「偶然です。私も片付けが遅くなったので。一緒に帰りましょうか」

「はい」



 §杉崎

 私は片付けが終わって解放された後、少し早かったけどクラスの女子と一緒にファミレスに入ってお昼を食べた。


 一時間半位経って出て来た時、早瀬君と同じクラスの女子が彼をお昼に誘っていて惨敗。彼女達だけでファミレスに入って行った。


 それからホームに行くと反対側のホームで早瀬君と有栖川さんが仲良さそうに話をしている。あっ、有栖川さんが早瀬君と手を繋ごうとしている。


 あの雰囲気は既に話慣れているいや会い慣れている雰囲気だ。まさか…。でも可能性は十分にある。有栖川さんは自分自身の事を早瀬君に話したのに違いない。


 不味い、何とかしないと彼を彼女に取られてしまう。いやもう付き合っているのかも。そう学内では分からない様に外で会っているのかも知れない。これは何とかしないと。彼を渡す訳にはいかない。


―――― 

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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