第27話 やっぱり目立ってしまった


 翌火曜日から金曜日まで行われた中間考査も無事に終わった。今回は仕方なく全部真面目に解答した。いつもなら分かっていても答えを書かないでいたけど、お姉ちゃんとの約束だ仕方ない。


 そして更に翌火曜日、中央階段横の掲示板に成績順位表が張り出された。一緒に登校した智と碧海さんが口を開けてポカンとしている。

 結果は分かっているから見ないで教室に行こうとしたら智から腕を摑まれた。


「京、これがお前の本当の実力か?」

「えっ、何の事。俺教室に行くから…」

「「「駄目!」」」


 はぁ、なんで古城さんや杉崎さん、それに夏目さんまで俺を引き留めるの?奈央子さんもこの時だけは俺の顔をジッと見ていた。


「京、すげえな。初めて見たよ」

「こんな点数取れるのね」

「どうやればいいの。分からない」

「京、もっと教えてくれ」


 そう言えば、智も碧海さんもそして古城さん、夏目さんも載っていない。


-いらしたわよ。

-我らが駒門高校の華。早瀬愛理様。

―いつ見てもお美しい。


 今回は良いか。


「京之介、簡単だったでしょ。今回は褒めてあげる」


 皆の前で頭を撫でられた。


-きゃぁ、見た。

-お美しい姉弟愛。

-私も愛理様に撫でられたい。


 はぁ、変な所で目立ったよ。でも成績順位表は一年から三年まで全学年が一斉に張り出されている。

 お姉ちゃんの成績は見るまでも無い。この高校入ってから満点以外取った事無いんだから。


 智と一緒に教室に戻ると、えっ!普段話した事の無いクラスの人達がゾンビの様に寄って来た。まるで俺を獲物か何かを見る様な目付きだ。ヤバい。


「早瀬、俺達も勉強教えてくれ」

「何言っているの。私達にもよ」


 うぇ、1Bのほとんど全員が俺の傍来た。俺逃げたい。


 俺のスローライフチャレンジ、二学期も失敗だ。



 その日、学食に行ったのだけど、何故か智と碧海さんそれに俺の周りは年次に関わりない女子達が一杯座って来た。それを取り巻く様に男子が座っている。


「なあ、智。俺のスローライフどうすればいい?」

「さぁ。モテる人間、出来る人間の悩みは俺達凡人には分からないよ。なあ弥生ちゃん」

「はい、でも早瀬君、教えてくれてありがとう。順位は上がったよ」

「ああ、俺もだ。成績順位表へは遠いけどな」

「あははっ、良かったな」


 

 その週の土曜日午前中、道場で稽古をして翌日奈央子さんと会ったけど、例によって巫女玉の駐車場の踊り場で思い切り抱き着かれた。

そして

「狡いです。でも私の京之介さんです。自分の事の様に嬉しいです」


 そう言ってもっと強く抱きしめて来た。幸い、今日はここを通って行く人が居ない。奈央子さんは少し緩めると


「京之介さん、もし、期末考査で満点取れたら私のお願い聞いてくれませんか?」

「お願い次第なんですけど」

「駄目です。必ず聞いて下さい」

「そう言われても」


 まさか、あれを要求して来るとは思わないけど。

「だって、他の方には勉強会開いたじゃないですか。確かに一度図書館で一緒に勉強しましたけど、一度だけです。私にも勉強するエネルギーを下さい」

「いや、奈央子さんは十分に出来るじゃないですか」

「でも満点は取れないです。十五点を埋めるのは大変なんです。お願いします」


 ここで足音が聞こえて来たので

「上に戻りましょう。奈央子さん」

「仕方ありませんね」


 なんとか、京之介さんと…。そうすれば後顧の憂いは無くなる。でもその前に口付けをしないと。この前はお父様に邪魔されましたけど、今日は何とか。



 この日は散歩をした後、SCの本屋で欲しい本を買った。もう隠しても仕方ないと思ってラノベのコーナーに行くと


「京之介さんはこういう本を読まれるのですか?」

「はい、実は結構前から好きだったんですけど、恥ずかしくて言えなかったんです。でももう隠す必要のないかなと思って」


 なんて事なの。京之介さんが私に心を開いてくれている。プライベートな事をもう隠す事も無い関係だと言ってくれている。ならば


「京之介さん、実言うと私もラノベが好きなんです」

「えっ?合わせなくてもいいですよ」

「本当です。好きな作家さんもいます」

「えーっ、本当なんですか。良かったです。じゃあ好きな本を選びましょうか」

「はい」

 嬉しくて堪らない。また京之介さんとの間のカーテンが一枚はがれた。



 それから食事をする事にしたのだけど、ラノベの事で盛り上がり、スパゲティとピザを食べた後は、〇ックに移動してポテトとシェイクで随分話し込んでしまった。


 もう午後三時半だ。この季節になると陽が暮れるのが早くなる。そろそろ帰らないといけないと思い、

「もう午後三時半です。そろそろ帰りましょうか」

「そうですね」


 奈央子さんの家まで送って行ったのだけど、

「京之介さん、この前お願いした事覚えています?」

「お願いされた事?」

「はい、他のお友達とは違うという事を証明して欲しいです」

「えっ!」


 奈央子さんは玄関の前で思い切り俺の体に抱き着いて来た。そして顔を上げて俺の顔をジッと見ている。まだ早いんじゃ。やっぱりここは、


「奈央子さん、もうあなたは他の友達とは違います。それははっきりと言えます。でももう少し待って下さい」

「何故ですか?」


「何というか。その…。せめて今年いっぱい。そう学期末考査が終わった後なら」

「後なら…?」

「俺の方からお願いします」

「それって最後までいいんですよね」


「それは、また次で」

「駄目です。もう我慢出来ません。必ず学期末考査の後は、最後までして下さい。私だってこんな事言うの恥ずかしいです。でももう我慢出来ないんです」

「奈央子さん」


 参ったなぁ。飛んでも無い事言っているよこの人。


「とにかく、俺も奈央子さんとは真剣に向き合います。だから二人でもう少しよく考えましょう」

「京之介さん」


 彼が私と真剣に向き合ってくれると言ってくれた。もう大丈夫かもしれない。でもまだ少しだけ心配です。


 奈央子さんはもう一度俺の体をぎゅっと抱きしめると

「分かりました。真剣に考えましょう。二人の将来の為に」


 うん?なんかまたステップが先に行っている様な。



 私は、京之介さんの姿が曲がり角で見えなくなるまで見送った。私の全てを彼に捧げて一生寄り添って行きます。


 年なんか関係ありません。それに後二年も経てば結婚も出来る年齢です。もうすぐです。それまでにもっと深い関係にならないといけません。


―――― 

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る