第17話 距離を詰めたい女子達


 俺は始業式が有った次の日から文化祭迄は何も無い平穏な日々が続くと思っていた。でも朝、教室に入ると古城さんが話しかけて来た。


「おはよ、早瀬君。ねえ、今日一緒にお昼食べない」

「智と一緒に食べるから」

「私がそこに居ちゃ駄目?」


 昨日からの件が尾を引いているのかな。どう返事しようか迷っていると他の女子が割込んで来た。

 

「ちょっと待ってよ古城さん。なんで急に早瀬君にそういう事言うの?」

「えっ、お昼ご飯くらい…」

「良いわよ、その代わり私達も一緒に食べさせてよ」

「それは、早瀬君の決める事じゃぁ」


「早瀬君、古城さんが良いなら私達もいいわよね」

「いや、それは…。智、あれ、あいつ何処行った?」

「田中君なら教室に入って直ぐに出て行ったわよ」

 あいつめ、朝から碧海さんのところかよ。しかし、これは不味いな。


「古城さん、ごめんね。俺、智達と一緒に食べるから。そこに古城さんや他の人を入れる訳にはいかないよ」

「ええーっ!……」


 私に声を掛けて来たのは夏目洋子(なつめようこ)さん。背が高く、髪の毛が腰近くまで有り、スタイルもいい可愛い女の子。学年でも結構人気のある子だ。


「早瀬君、私達とも話してよ」

「えっ、まぁ…」


 智が帰って来た。

「京、どうした。なんか雰囲気ちょっとって感じだけど」

「お前が居ないから」

「俺が居ないから?」

 俺が何かしたのかな?


 ここで予鈴が鳴って藤堂先生が入って来た。良かった。



 一限目の授業が終わり、トイレに行こうと廊下に出ると杉崎さんとバッタリ会った。

「あっ、早瀬君」

「杉崎さん」


「あれから誘ってくれない。ねえ、今度の日曜日どうかな?」

「日曜日は用事が入ってる」

「じゃあ、土曜日は?」

「そこも用事が入っている」



 §古城

 早瀬君が1Cの杉崎さんと話している。彼女は既に早瀬君と二人で会っている様な事を言っている。そうだとすると由々しき事態だ。


 でも何故彼女は早瀬君と二人で会えるんだろう。杉崎さんは可愛いし、どうやって知り合ったかなんて知らないけど私だって負けてない。チャンスはまだあるはず。



 俺は、杉崎さんのお願いを断ってトイレに行こうとすると反対側から奈央子さんが歩いて来た。すれ違いざまに俺の顔を見て目が微笑んだ。それ無しって言ったのに。



 §有栖川

 京之介君が杉崎さんと話していたけど彼女は残念そうな顔をした。多分、彼をデートにでも誘って断られたんだろう。


 私は嬉しくなったけどぐっと我慢して彼の傍を通り過ぎようとして目元が緩んでしまった。

 歩く姿が綺麗。体幹がしっかりしているからなのだろうけど。こういう姿を見るとやっぱり…仕方ないわよね。京之介さん。



 俺は、トイレで用を足した後、教室に戻ると何故か古城さんが俺の顔をジッと見て何か言いたそうな顔をしている。さっきの昼の件かな?



 昼休みになり、智と一緒に学食に行くと

「俺、チケット要らないから席に先に行っている」

「それって」

「ああ、想像通りだよ」


 はぁ、智と弥生ちゃんの仲はどんどん進んで行っているんだ。でも俺はまだあそこまではいいかな。


 唐揚げ定食のチケットを買ってカウンタで受け取った後、智達が居る所に行ったのだけど、何故か分からないが古城さんと夏目さん達、それに杉崎さんが遠回しに俺達を囲んでいる。


「京、そろそろ決める時期じゃないか?」

「そう言われてもな。俺はスローライフにちょっぴり可愛い恋愛したいだけだ」

 奈央子さんの事を言う訳には絶対にいかない。俺の目指すスローライフが飛んでしまうからだ。


-ねえ、聞いた。早瀬君、彼女募集中みたいよ。

-うん、聞いた。ここは公平にね。

-分かってる。



「ぷっ。京、スローライフはもう諦めろ。それどころか、お前が漏らした一言で楽しい事が連なっているぞ」

「いや、俺は直ぐとは思っていない。もっと先でいい」

 ちょっとした一言でも聞いているのかよ。女の子って怖い。




 放課後になり、俺は一人で帰ろうとすると夏目さん達がやって来て

「早瀬君、今日は私達と一緒に帰りませんか?」

「えっ、俺は一人で…」

「昨日、古城さんと一緒に帰りましたよね。私達とは帰れないの?」

「そんな事は無いですけど…」

「じゃあ、一緒に帰りましょう」


 古城さんが悔しそうな顔をしている。朝、皆の前であんな事言うからだよ。参ったなぁ。


 §有栖川

 今日も京之介さんは1Bの女子達と一緒に帰って行った。相手は夏目洋子さん。学年の中でも結構人気のある女子だ。背も高く、可愛い顔をしている。


 いくら、他の女子と一緒に話しても良いって言ったけど、毎日他の女子と帰るのは悔しいです。

 なんとか、私も一緒に帰る方法が無いかしら。



 

 夏目さん達は、俺にファミレスに入ろうと誘ったけど、丁寧に断った。彼女達は俺が古城さんと一緒にファミレスに入って話しをしていたと思っていたらしい。


 だから駅で別れたと言うと仕方ないという顔で諦めてくれた。でもこれからも一緒に帰って欲しいと言われた。


 流石にそれは出来ないと断ると、じゃあ友達になってと言われる始末。ちょっとしつこい。


 これもまだ、そういうのはちょっとと言って改札に逃げた。この状況絶対に不味いな。何とかしないと。




 俺は家に帰って直ぐに予習復習始めた。勉強していると雑念が消えていい。一時間位そうしていると、お姉ちゃんが帰って来て制服姿のまま、俺の部屋に入って来た。


「京之介、今日は随分賑わったみたいね。一年生の子が言っていたわよ」

「何の事かな?」

「古城さん、杉崎さん、それに夏目さん達」

 流石生徒会長、情報網は完璧の様だ。


「うん、なんかやたら近寄って来て。はっきり言って迷惑な感じ。俺あういうの嫌いなんだ」

「知っているわ、そんな事。それよりそんな事になって有栖川さんは大丈夫なの?」

「後で、色々言って来ると思う」

「対策考えた方が良いわよ」

「うん」



 二学期になって急に京之介の身辺が騒がしくなった。初日に古城さんと二人で帰った事や彼女が京之介との距離をクラスの中で公に詰めようとした事が原因らしい。


 この子はそういう事をあしらうなんて出来ない子。最初は有栖川さんだけ注意すればいいと思ったけど、甘かったわ。こうなっては仕方ない。


―――― 

次回をお楽しみに。

面白そうとか、次も読みたいなと思いましたら、ぜひご評価頂けると投稿意欲が沸きます。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。


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