第9話 夏休みはまだまだこれからだ
プールから帰った翌日は、のんびりと家で過ごした。お姉ちゃんは塾の夏期講習で忙しいらしく家には居ない。
何でお姉ちゃんレベルで受験勉強しなければいけないのか聞いたら平時を
でもおれはお陰でエアコンを掛けながら部屋でラノベを読んでいる。
幸い今日は土曜日なのでお母さんがいる。お昼の心配も無い。
「京之介、お昼よ」
「はーい」
俺は、ダイニングに行ってお母さんと二人で食事をしていると
「京之介、明後日から道場の夏合宿でしょ。用意は出来ているの?」
「うん、問題ない」
「学校の方はどうなの?」
「どうなのって?」
「成績の方は愛理から聞いているけど、友達とか出来た?」
「うーん、智が居るからな。でもまだ一年生だし、ゆっくりと作るよ」
「そう言えば昨日のプールはどうだったの?」
「うん、楽しかった」
「それだけ?」
「あと、一緒に行った智の彼女の碧海さん、それに碧海さんのクラスメイトの杉崎さんって女の子と知り合った。二人共いい子だよ」
「杉崎さん?どこかで聞いた覚えあるわね」
「そうかな。俺は記憶ないけど?」
うーん、杉崎かぁ。あっ!でも同じ苗字なんていくらでもいるし。関連付けるのは無理有り過ぎるな。要らぬ疑いを掛けるのは良くない。
そんな事はあっという間に忘れて、八月六日から二泊三日の夏合宿に出かけた。東京駅から電車で一時間半。
外房の御宿という町だ。二キロに及ぶ遠浅で真っ白な砂浜の海水浴場が有名で、合宿所は毎年泊まっている浜辺に近い大野荘という旅館だ。
参加者は小学校五年生以上の門下生と師範代、コーチ陣、それに保護者代表と行った所だ。基本高校生以上が中学生以下の面倒を見る事にはなっている。
着いた当日は、借りている中学校の体育館で軽く稽古して終わり。その後は浜辺の散歩となる。
翌日からは午前中は、中学校の体育館で稽古をした後、午後からは海岸でゲームを交えた海水浴をやる。
ゲームというのは、海水浴禁止区域の浜辺で五十メートル位に目印を立てて、そこを一周して来て早い人から良く冷えたスイカが食べれるというゲームだ。
一組五人で走るんだけど師範代も含め全員でやる。砂浜は走り慣れないので結構足を取られて転ぶ人もいるから面白い。
高一の俺は当然必死には走らないけど、中学生が真面目に走ると結構早い。俺も中学時代はそうしていた。
だからいい加減に走ると本当に一番最後になってしまうので、順位見ながら適当に走っている。
そしてその後は、海水浴が出来る浜辺に移動して皆で泳いだり波打ち際で砂の城を作って遊んだ。
そんな楽しい夏合宿も最後の夜は浜辺で、皆で花火大会。皆がやっている花火を見ていると加納師範代が
「早瀬、今度全高に出て見る気はないか?去年全中で二位なったんだ。それなりの結果を残せるだろう」
「師範代。俺なんか出場したら一回戦で敗退は目に見えています。まだまだ稽古しないと」
「俺はそうでも無いと思うがな。まあ気分が向いたら声を掛けてくれ。申し込みにはまだ時間がある」
「はい」
あれに出たらそれなりの結果を残せる自信はあるけど、また変な所で有名になってしまう。それにもう少し後でも良い気がする。
しかし、武術は順調に成長するのになぁ。俺の恋愛経験は全く積みあがらない。有栖川さんを気に入っていたけど彼氏とデートしている所見ちゃったし。とっても親しげだったから昨日今日の付き合いじゃないんだろうな。
積極的な人よりちょっと一歩下がった大人しい感じの人が良いんだけど。今の所目の前には居ないし。でもまだ高校一年生になったばかりだ。
そう言えば智の奴どうやって碧海さんと付き合う事が出来たんだ。今度聞いてみるか。
道場の夏合宿も終わって家に帰った。お姉ちゃんが居なかったので、お母さんに聞いてみると塾の夏期特訓とかで合宿に行っていると言っていた。
今日はまだ八月八日。家族旅行は十五日からだから。一週間弱時間が有る。今日の夜に智にでも電話してみるか。
お父さんとお母さんと一緒に夕食を取った後、部屋に入って智に連絡すると直ぐに出た。
『智、俺だ』
『京か、どうしたんだ?』
『智、明日会わないか?』
『全然いいけど。なんか用事か?』
『ああ、ちょっと智に聞きたい事が有ってさ。スマホじゃちょっと聞けないんだ』
『分かった。何時に何処で会う?』
『午前十時に渋山駅前のトドールでどうだ?』
『OK,じゃあ、明日な』
智に会う約束をしたものの、上手く聞けるかな。
翌日、午前十時に渋山駅前のトドールに行くと智はまだ来てなかった。隣駅だからのんびりしているのかな。五分遅れてやって来た。
「京、おはよ。悪い遅れた」
「別に五分位いいよ。それよりなんか飲み物頼んだら」
「ちょっと待ってくれ」
カウンタの列に並んで待つ事五分で戻って来た。アイスコーヒーだ。
「智、コーヒー飲めるのか?」
「ああ、弥生ちゃんの手前ちょっとカッコつけて飲む様にしたんだ。でもこれ夜飲むと眠れない」
「カフェインが入っているからだろう。俺達にはまだ早いんじゃないか?」
「まあ、それはそれとして。ところでスマホじゃ話せない事ってなんだ?」
「笑わないで聞いてくれるか」
「聞く前からそれ言われてもな。でも我慢する」
「実は…弥生ちゃんとどうやって付き合う事が出来たんだ?」
「ぶっ!京も遂にそっちの方に目を向けたか。いい事だ」
「やっぱり笑ったじゃないか」
「そんな事言ってもな。しかし、弥生ちゃんとか。うーん。実言うとGW前に声掛けられて。校舎裏で告白された」
「えっ、碧海さんから告白された?!」
「ああ、俺も好みのタイプだったし、OKしたらあっという間に事は進んでってところ」
「もしかして…」
「ああ、もう済んでいる」
「……………」
なんて事だ、あんな可愛い顔して智としていたとは。俺なんか何にも知らないぞ。
「京、朝下駄箱に入っているカード、偶には見て見たら。告白されたからって、全部にYES言う必要無いし。自分が気に入った子が現れるまで待っていてもいい訳だし」
「それじゃあ、疲れちゃうよ」
「恋愛したかったらこまめさは重要だぞ。彼女が出来たら相手に気に入られる為の重要なポイントなんだ」
やっぱり俺には向かないのかな。
「でも、京なら普通に接しているだけで良いと思うけどな。気遣い有るし、優しいし。それに高身長、イケメン、頭脳優秀。全く問題ないよ。
それに告白されるの嫌だったら自分から気に入っている人に告白して見たら、例えば有栖川さんとか」
「あの人は駄目だよ。俺とじゃ釣り合わない。彼女に迷惑だ」
彼氏がもういるよなんて事は流石に智にでも言えない。
「じゃあ、杉原さんは?俺もこの前プールに行った時が初めてだったけど、性格悪くないし、お試しで付き合うってのも有りかもだぞ」
「うーん、そういうのって杉崎さんに失礼だろう」
「聞いてみないと分からないさ。駄目だったら、また探せばいいよ。お前が相手を探してるなんて分かったら大変な事になるから事は慎重を要するけどな」
「あれは俺を揶揄っているだけじゃないのか?」
「お前なぁ。じゃあ公表してみるか。飛んでも無い事になるぞ」
「分かったから止めてくれ」
「じゃあ、相手探しは自分でやるしかないな。嫌だったら告白相手に会うしかない」
智はそれから碧海さんと渋山で会う約束をしているからと午前十二時前にトドールを出て行った。杉崎さんかぁ。取敢えず会ってみるかな。
――――
書き始めは皆様のご評価☆☆☆が投稿意欲のエネルギーになります。
感想や、誤字脱字のご指摘待っています。
宜しくお願いします。
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