第7話 お姉ちゃんとデート

前話までの第一パートの人物紹介が終わり本話よりいよいよ物語が動き出します。それぞれの女の子がどう動くか、お楽しみ頂ければ幸いです。


―――――


 夏休みの宿題も無事、七月三十一日の午前中に終わらすことが出来た。午後は解答漏れがないか確認して終わりだ。



 夕飯の時、お母さんに

「八月三日にプール行くから海水パンツ欲しい。今の中学の時の奴だから新しいのが欲しい」

「良いわよ。いくら位なの?」


「分からない。帰ってきたらお釣り渡すから渋沢さんを一枚」

「あっ、それなら私も問題集買いに行くから京之介一緒に行こうか。行くの巫女玉でしょ?」

「まあそうだけど」

 お姉ちゃんと一緒か。仕方ないか。



 次の日、お姉ちゃんと一緒に巫女玉に来た。

「京之介、先に問題集買いに行く。そんなに時間掛からないから」


 改札を出て左側に曲がってSCの中にある本屋に入った。お姉ちゃんは直ぐに目的の場所に行って難しそうな数学と物理の問題集を手に取ると

「これ買うから会計して来る」


 どう見ても大学受験用ではない。聞いたら暇つぶしと言っていた。赤チャート数ⅢCが暇つぶし?今の大学生だって分からないだろうに。



 本当に早かった。お姉ちゃんは会計が終わると

「じゃあ、京之介の海水パンツ買いに行こうか。お姉ちゃんが選んであげる」

「えっ!」

「不服なの?」

「そんな事無いです」


 中学までの海水パンツもお姉ちゃんが選んでくれた可愛い奴。流石に高校生になってあれは履けないと思って、新しいのを買いに来たのに、また選ばれるとは……。


 改札の右側直ぐのビルの五階にあるスポーツ用品店に入って、選んでいるとお姉ちゃんが

「これ良いんじゃない?」


 選んだのは、マリンブルーをベースにヤシの木が描かれている奴だ。


「もっとシンプルな方が良いよ。ちょっと目立つから」

「京之介、シンプルも良いけどやっぱり多少はデザイン性のある物でないと」

「いや、俺はこっちのが」

 俺が選んだのは、濃いグリーン一色の奴だ。


「駄目よそんなの。こっちにしなさい」

「でも…」

「お金はお姉ちゃんが持っているのよ」

「分かった」

 大蔵省には敵わない。仕方なくそれを会計すると


「せっかくだから二人でお昼食べましょうか」

「えっ、良いの?」

「構わないわよ。久しぶりに京之介と一緒に買い物に来たんだから」



 一度一階に降りた後、横にあるエスカレータで二階に上がった。この階は個性的なレストランが多い。

「京之介、何が食べたいの?」

「お姉ちゃんに任せる」


 お姉ちゃんが選んだのはピザとスパゲティが選べるお店だ。ここなら俺もお腹が満たせる。


 店員に案内されて窓際の席で二人で座っていると

「あれっ?あの子、一年の有栖川さんじゃないの?」

「あっ、本当だ」


 横に素敵な男性を連れている。やっぱり彼氏いたんだ。まああれだけの器量だし仕方ないか。


「へぇ、あの子彼氏いたのね。学校ではそんな風には見えなかったけど」

「まあ、学内じゃない方が良いんじゃない。あれだけの器量だもの」

「ふふっ、京之介に彼女はいつ出来るの。お姉ちゃん楽しみなんだけど」

「全然、気配なし」


「おかしいなぁ、生徒会に入っている一年生の女の子達が、京之介の事聞いてきたりしているんだけど。

 紹介してなんて言われたから、それは流石に断っているけど」

「断ってくれて正解。ゆっくり見つけるよ。俺みたいな奴を好きになってくれる物好きな女の子をさ」


 私の弟、京之介は身長もそれなりに有るし、細面のイケメンだ。その上、頭も滅茶苦茶いい。武道も達者だ。


 本人は自己肯定感が低い上に目立つのを苦手としているからこんな事言っているけど、本当は居てもおかしくない。


 有栖川さんなんか釣り合うと思っていたのだけど、彼氏がいたのでは仕方ないわね。


 まあ、私が意図的に学内で目立たせたからそれなりに声は掛けられているはず。相応しい子が見つかると良いのだけど。


「そう言えば、プールは誰と行くの?」

「智とその彼女の碧海弥生さん。それに碧海さんと同じクラスの杉崎さん。智が俺に気を利かせて杉崎さんを誘ったらしいのだけどあんま居なくてもいいんだけどな」

「そうなの?」


 杉崎さんってどんな子か知らないけど、弟に相応しい子だといいな。


 


 私、有栖川奈央子。今日は兄と一緒に巫女玉に映画を見に来て居る。兄は二つ違い。都内の有名な男子校の進学校、偏差値は今行っている高校より高い。


 そんな兄が昨日

「奈央子、明日映画見に行かないか?」

「兄さん、珍しいわね。どうしたの?」

「ちょっと見たい奴が有ってね。一人で映画館に座っているのもつまらないし」

「あの人は?」

「別れた。面倒」

「でも、兄さんから声を掛けたんじゃないの?」

「ああ、でも見かけだけだった。やたら体の関係求めて来るし。俺そういうの嫌いだから」

「ふふっ、らしいわね。それで私が代役なの?」

「そんな訳じゃないけど。映画代とお昼奢るからさ」

「うーん。だったらいいか」



 私は、夏休みの宿題も終わっていた。この後、どうしようか考えていた所だ。今の高校には、まだ夏休み一緒に遊べる程、気心の知れた子は居ない。中学からの友達と遊ぶのは明後日だ。



 そして映画を見終わった私と兄は、巫女玉の有名な中華キュイジーヌというお店に行こうとしている。少し高いけどとても有名で名前に恥じない味を提供しているお店だ。



 十分位並んで店の中に入ると

「私は昔ながらのラーメンと餃子」

「俺はぱーこー麺と半チャーハンだ」


 注文した後、

「奈央子、例の子、何か進展ないのか?」

「うん、不確定要素が多くて。身体能力はともかく、頭の良さが未知数、性格は結構シャイな所が有って、女子と話すのは苦手みたい。だから中々話しかけられない」

「頭の良さが未知数、どう言う意味だ?」


「うん、この前の学期末考査で、私に次いで二位だったんだけど、それも手抜きみたいで、私から見ても凄い点数なのに、彼のお姉さん曰く、手を抜いている。この程度の試験は満点が当たり前と言っているのよ」

「誰だ、そんな事言うの?」


「早瀬愛理」

「なに!早瀬愛理!あの早瀬愛理か?」

「お兄ちゃん知っているの?」

「知っているも何も、俺達の高校で最大のライバルと言われている女子だ。俺達と模試でいつも一位争いをしている、この前も数学と物理、それに国語で負けた。英語と社会は同点だった」


「えっ!そんなに凄いの?」

「ああ、都内のトップクラスであいつを知らない高校生は居ない。我が校で十年に一度の天才と呼ばれた同級生にして侮れないと言っている。この前の科学選手権でもそいつが負けた」

「えーっ!お兄ちゃんの友達が負けた?!」

「だから、そいつの弟ならお前の高校レベルは昼寝しても満点しか取れないんじゃないか?」

「そんなぁ」


 なんて人なの。目立つのを嫌がって手を抜いていると彼のお姉様は言っていたけど本当だったんだ。なんとか少しでも早く、他の子に横取りされる前に近付かないと。


 この時、私は、早瀬君に見られているとは知らなかった。


――――

模試で個人情報が洩れる事はありませんが科学選手権は名前の公表がされます。あくまでも物語の中の話という事でご理解願います。

書き始めは皆様のご評価☆☆☆が投稿意欲のエネルギーになります。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る