第6話 期末考査が終われば夏休み


 月曜日の朝、一人で学校に向かっていると後ろから智が

「おはよう、京」

「智、おはよう。あれ、弥生ちゃんは?」

「今日は一緒に登校していない」


「そうなのか。毎日一緒だと思っていた」

「女の子には女の子の都合って奴があるんだ」

「ふーん。俺には全然分からないけど」


 そんな話をしている内に学校に着いた。下駄箱の中にカードは入っていなかった。

「やっと俺にも飽きてくれたか」

「どうだかな、小康状態なだけじゃないか」

「いや、俺なんかが相手にされるのがおかしい。彼女いない暦=年齢の俺が言うんだから間違いない」

「何を言っているのか分からん」



 教室に行くと古城さんから挨拶された。

「おはよう、早瀬君」

「おはよう、古城さん」


 何か言いたそうな顔をしているけど、分からないのでそのままにしている。やがて担任の藤堂先生が入って来て


「おはよう、皆。明日から考査ウィークに入る。いいか良く聞け。もしこの学期末考査で赤点を取った奴は、補習という事でお前達の大切な夏休みが削られるという事になる。気合い入れて勉強するんだぞ」


 なんか脅しに聞こえるが正しいな。



 そして次の日から学期末考査の為の考査ウィークに入った。俺が帰ろうとすると何故か両方から袖を摑まれた。

「京」

「早瀬君」

「な、何、二人共」


「京、俺と弥生ちゃんを補習の危機から救ってくれ。図書室は午後三時まで開いている」

「私もよ早瀬君」

「だーめ。自分で努力しなさい」

「「頼む(頼みます)」」


「もう、智。中間の時あれだけと言ったじゃないか」

「あの時は、あの時だ。俺とお前の仲だろう」

「はぁ、分かったよ」

「私も」

「全く」


 やったぁ。私は別に赤点取る様な成績じゃないけど少しでも早瀬君と一緒に居たいという気持ちから。皆が恨めしい目で見ているけど無視だ。



 俺は智と古城さんに引き連れられ図書室に入ると結構な生徒が居た。智は中に入ってそのまま奥の方に行くと四人席に碧海さんが座っていた。


「弥生ちゃん、連れて来れた」

「やったぁ。宜しくね早瀬君。そっちの人は?」

「私、古城奈津子。私も早瀬君に勉強教えて貰うの。宜しくね」



 私、有栖川奈央子。早瀬君が田中君と古城さんに連れられて図書室に入って来た。勉強会をするつもりなんでしょう。


 来年は必ず私だけが彼の隣に座る様になりたい。今回彼は手抜きをしてくる可能性は低い。中間は私が難なく一位だったけど…。楽しみだわ。


 俺は、最終下校の予鈴が鳴るまで三人に教えた。でもどう考えても古城さん必要ない感じなんだけど。どういうつもりかな?



 その週はそのまま放課後は図書室で勉強となった。智や碧海さんは結構聞いて来るけど古城さんはたまにしか聞いてこない。


 それも分かっているんでしょうって問題を。この人何のつもりで一緒に勉強しているんだ。

 勿論家に帰ったら俺独自の復習方法で勉強したけど。

 


 一学期末考査は七月初めの月曜日から始まり木曜日に終わった。当たり前だが中間より範囲も広く深みもある。流石に今回は真面目にやった。お姉ちゃんの目もあるし。


 翌金曜日は模試が有った。今の時期の模試はまだ確認レベル。気にする程でもない。



 そして翌週火曜日に成績順位発表があった。俺は学校に登校すると昇降口で履き替えて直ぐに中央階段横の掲示板に行った。生徒が溜まっている。


一位 有栖川奈央子

二位 早瀬京之介


 ふう、これでお姉ちゃんに何も言われないだろう。でも智も古城さんも碧海さんも成績順位表には載っていない。こればかりは個人の努力だからな。そう思って教室に戻ろうとすると


「京、真面目にやった成果か?」

「智か、まあな。これで…」

「ふふっ、早瀬君。二学期は一緒になりましょう」

「有栖川さん、そんな事俺にとって夢のまた夢です。今回はまぐれなだけです」

「では、私と一緒に勉強しましょうか」

「いえ、結構です」

 そんな話をしていると


-いらしたわよ。

-我が私立駒門高校の華。早瀬愛理様。

-いつ見てもお美しい。


 不味い。


 でも直ぐに逃げられなかった。掲示板の前に行きすぎて人が避けられなかったからだ。


「京之介。なにこの点数は?二位と言ってもこの点数では駄目よ。考査の一週間前まで遊んでいたからでしょう。次は満点一位を目指しなさい」

「ま、まあ。あははっ」

 お姉ちゃん、そういう事皆の前で言わないで。


-えっ、早瀬君。そうなの?

-この結果も適当にやった実力なの?

-私なんか、一学期中毎日勉強したのに。


 §有栖川

 早瀬君はこの位置この点数でも真面目にやっていないの。本気出したら私が大差で二位になる。私も今以上に頑張らないと。…でも素晴らしいわ。流石私の命の恩人。体が疼く位嬉しい。



「智、教室に戻ろう。あれ?あいつ度行った」

「田中君なら、碧海さんと一緒にどこか行ったわよ」

「あいつめ」



 俺が教室に戻るともう智は席に座っていた。

「智、一言声掛けてくれれば」

「悪い、弥生ちゃんと戻って来たんだ」

「そ、そっか」

 はぁ、智も遂に彼女優先かぁ。俺にはいつになったら可愛い恋愛がやって来るんだ。



 次の日からは終業式まで午前中授業になる。土曜日は午前中授業が有るが、来週金曜日は終業式だ。何となく嬉しい気分だ。


 放課後になり、のんびりと席を離れようとすると智が

「なあ、京、夏休み予定入っているか?」

「何も」

 本当は家族旅行と道場の夏合宿が入っているけど、教室の中では言いたくない。


「そうか。じゃあ、一緒にプールでも行かないか」


-プール?早瀬君が!

-一緒に行けないかしら。

-今声を掛ければ。


「智、外で話そう」

「あ、ああ」


 俺達は急いで昇降口に行くと碧海さんが待っていた。何故か杉崎さんもいる。どういう事?


「弥生ちゃん、杉崎さん帰ろうか」

「うん」


 うん?なんで智は杉崎さんにも声を掛けたんだ?


「京、さっきのプールの件だけどさ。俺と弥生ちゃんと京だけだとバランス悪いだろう。だから弥生ちゃんと同じクラスの杉崎さんを誘ったんだ」

「そういう事?」

「早瀬君、本屋さん以来ですね。これで二度目だから一緒に行ってくれるんだよね」

「京、話が見えない」


「いや、前に本屋さんで偶然会った時、〇ックに誘われたんだけど初めて会ってそういう事はって言ったら、二度目なら良ねって言われて」

「そういう事か。じゃあ決まりだな」

「いや、ちょっと待て。そもそもいつ行くつもりなんだ。俺は七月中は宿題片付けるから八月以降でないと駄目だぞ」


「えっ、宿題?そんなの後で良いんじゃないか?」

「駄目に決まっている。休み初めに学校の宿題終わらせておけば後がのんびり自由に使える」

「そうか、じゃあ、宿題終わったら見せて」

「駄目に決まっているだろう。あれは自分でやって初めて身に付くんだ。だから写しは駄目」

「京のイジワル♡」

「智に言われても駄目、それに気持ち悪い」


 智の願いは無視して自分一人で夏休みの宿題をやった。お姉ちゃんは宿題の後、直ぐに夏期講習に行くらしい。今が一年生で良かった。

 でもお姉ちゃんって塾に行く必要あるのだろうか?今度聞いてみるか。


――――

今話までがやっと第一パートの人物紹介が終わった所です。次話よりいよいよ物語が動き出します。それぞれの女の子がどう動くか、お楽しみ頂ければ幸いです。

書き始めは皆様のご評価☆☆☆が投稿意欲のエネルギーになります。

感想や、誤字脱字のご指摘待っています。

宜しくお願いします。

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