第2話 俺を見つめる女子が居る


 体力測定が終わった次の日から四日間はGWの後半だ。俺は勿論自慢ではないが予定なんか何も入っていない。


 智は前半誰かと会うと言っていた。まさかもう?いやそれは裏切りだ。後でしっかりと追及しておかないと。


 という訳で、前半の金、土は午前中道場で稽古。午後はゴロゴロとした。後の二日間は…結局何もせず無為な時間を過ごしてしまった。




 実は俺にはお姉ちゃんが居る。現在高校三年生。同じ高校だ。ここ迄なら何も問題無いのだが…。


 よりによって、俺とは違い容姿端麗、頭脳優秀その上生徒会長と来ている。偶に俺と同姓で有る事を理由にクラスメイトが俺の姉かと聞いて来るので、そんなはずはない全然似て無いだろうと言い返す。

 そう俺とお姉ちゃんは似て無いのだ。でも同じ両親から生まれたのに。


 お姉ちゃんは別に知られても問題ないと言っているけど、こっちが困る。そんなお姉ちゃんが、

「京之介、どこか行くところ無いの?」

「ない」


 部屋にいる時はお互いにドアを開け放している。部屋でゴロゴロしている俺を見て心配したんだろうけど、そこまでだ。後はそのまま階段を降りて行った。



 そして無事にGWも何も無くそう本当に何も無く終わってしまって、俺はGWが終わった翌日学校の最寄り駅で降りて向かっていると後ろから智が声を掛けて来た。


「おはよ、京」

「おはよ、智。そう言えばGW前半どうしていたんだ。俺は暇でしょうがなかったぞ」

「ああ、ちょっとな」

「何だ、そのちょっとなというのは?」

「まあ、その内分かるよ」


 二人で教室に入っていつもの様に窓の外を見ている。日課になってしまった。智が

「京、来たぞ」


 その声に校門の方を見ると有栖川さんが友達と一緒に歩いて来る。別にどうなる訳ではないが、人間綺麗な人を見るのは心が穏やかになる。



 やがて予鈴が鳴って担任の藤堂先生がそのゴツイ体を揺らせながら教室に入って来た。


「来週火曜日から中間考査が始まる。明日から考査ウィークと言って午前中で授業が終わるが、お前達を遊ばせる為じゃない。


 しっかりと考査対策をしろという事だ。まだ一年の一学期の中間考査だと思って甘く見ているとそれが癖になる。


 いいか、最初からしっかりとした心構えで受けるんだぞ。後、今月末は体育祭がある。それも頭に入れておいてくれ」


 その後も色々連絡事項を言ってから教室を出て行った。中間考査か、一年一学期の中間だろう。

 教科書範囲も狭いし、予習復習やっているし、更に見直しておけば問題ないだろう。


 午前中の授業が終わりお昼休みに智と一緒に学食に向かっていると目の前から目がクリっとして大きく、軽いカールが掛かった茶髪の女の子が歩いて来た。俺達とすれ違う時、微笑んだ。


「京、見たか」

「ああ、微笑まれたな。智がカッコいいかからだな」

「そんなことないよ。ついに京にも春が」

「あり得ないって」

「でも可愛いし、結構大きかったし」

「智はそこかよ」

「いや、付き合うに当たって大変重要な要素だぞ」

「どういう頭をしていると廊下をすれ違っただけで付き合う前提が出来るんだ?」

「あはは、まあそういう事で」



 学食に行って二人で食べていると一人の女の子が寄って来た。

「智也君」

「あっ、弥生ちゃん」

「弥生ちゃん?」

「ああ、GW前半、京と遊べなかった理由」


 はっ!高校入ってまだ一ヶ月と少しなのにもう出来たのかよ。全く。


「智、俺邪魔なら他で食べるけど」

「何言っているんだ。三人で食べたいんだ。俺から弥生ちゃんに頼んだ」

碧海弥生あおうみやよいと言います。宜しく願いします」

「はぁ」

「おい、名前くらい名乗れ」

「分かったよ。俺、早瀬京之介って言います。宜しく」

「こちらこそ」



 理由は分からないが何故か二人のイチャブリを見せつけられながら昼を食べる事になってしまった。


 学食から三人で教室に戻ろうとした時、さっき会った目がクリっとした女子にまた会って、微笑まれてしまった。俺には思い当たる節が無い。


「あの人、私と同じ1Cの杉崎涼子すぎざきりょうこさんです。可愛くてクラスでも男子に人気があります」

「へぇー?」

「京、チャンスだぞ」

「微笑まれただけだ」



 私、杉崎涼子。この高校に入ってまだ、一ヶ月と少しだけど、ちょっとタイプの男子が居る。


 1Bの早瀬京之介。中々の好みだ。でも簡単には彼を好きになれない理由がある。でもそれはまた二の次。今は彼と何とか友達になりたい。


 今日は学食に行く彼を見つけてつい微笑んでしまった。そして学食からの帰りも会ってしまった。


 でもこの時、同じクラスの碧海さんと一緒に歩いていた。これはきっかけが作れるかもしれない。



 放課後になり、一人で帰ろうとすると

「京、図書室で勉強しないか?」

「図書室、勉強?智、熱でもあるのか?いつもならそんな事言わないだろう」

「いや、偶には俺も勉強しないとって思ってさ」

「まあ、いいけど」



 勉強意欲が有るのはいい。智と二人で図書室に行くとそれなりに人が居た。智は図書室の中をくるっと見ると部屋の端の方に歩いて行った。



 なるほどな。でもなんで俺が一緒なんだよ。

「弥生ちゃん。来たよ」

「智也君、ありがとう」

「おい智。何で俺が一緒なんだ?二人の方がいいだろう」

「あははっ、いや京のが俺より成績良いし、二人で教えて貰おうと思ってさ」

「お前なぁ」


 仕方なく俺は最終下校を知らせる予鈴が鳴るまで二人と一緒に図書室で勉強した。そして帰り際


「京、頼む、考査ウィーク中は図書室が午後三時まで開いているんだ。勉強教えてくれ」

「二人でやればいいだろう。俺はお邪魔虫!」

「いや、俺達にはお前の頭脳が必要だ。頼む、その代り昼飯は任せてくれ」

「いや、それはいいよ。俺と智の仲だから」

「早瀬さん、私からもお願いします。この通りです」


 女の子に頭下げられてNoと言えない俺。はぁ。


「分かった。でも中間だけだぞ」

「ああ、とりあえず」

「怪しいなあ」


 結局考査前日まで一緒に図書室で勉強させられる事になった。まあ、家に帰ってからは自分のやり方で復習したけど。


――――

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