3.遊戯
「祭りあんねん、地区ごとに時期ずらされとんねんけどなこの辺は明日から」
彼は振り向いてそう言った何の感情もこもらない声で。
「どんな祭りなん、オレらも参加できるん?」
「祭り自体は誰でもな。普通の祭り」
彼が何故下を見ながら答えたのかはよくわからなかった。
「祭りの間なぁ、民宿の近くにある池近づくなよ」
「なんでなん?」
「祭りの間は忙しいからな。誰も人探す時間ないだけや」せやから万にひとつでも落っこちたら助けられんからやと告げる彼の目は光って見えた。
「さようか」
その公園は遊具が無い、小さな子達がかくれんぼや鬼ごっこの類いをしていた。笑い合う声が響く。彼は何処から持ってきたのかボールを蹴り上げた。
「サッカーする? それともたちかくとか探偵の方が良かった?」
飛んできたボールを器用に蹴り返したのはマサやん。
「オレは断然サッカーやなぁ」
「なんでもええ」
「あいよ!」
彼がボールを蹴り進む先には立派なゴールがあった。一部錆びているのは何処でもそうだろう。あくまでも僕は追いかけるポーズをとる。マサやんやタッちゃんと違い僕は器用でも足が早いわけでもない。
「2対2やろ チームわけどないするん?」
「伊織は七彦とオレはマサやんとチームでえんちゃうキーパーなしな」
「オッケー」
仕切りたがるのはタッちゃん、彼は器用なもんだからよくあちこちの部活の子らが助っ人に呼ぶ。しかし彼は何故か帰宅部。マサやんは足が早い陸上部から誘われても入らん帰宅部。僕らはなんとなく帰宅部で居続けている。
ボールが飛んできた時僕は馬鹿みたいに突っ立っていたボールを見上げ。その後すごい衝撃にあっけなく転ぶ僕を三人とも「大丈夫か」と声をかけるのをただ呆然と大丈夫とだけ返したけれど鼻血まみれになっている僕を彼らはベンチに転がし応急手当てしてくれるのをただ、見ていた。遠くでお兄ちゃん大丈夫と入り口の方にいた子どもが騒いでいるのを聞いて自嘲したように思うのだが、気づくと冷房の聞いた民宿に運び込まれていた。運動神経の悪さがこういった事態を招くのは今に始まったことではない、もちろん僕自身注意が削がれていたことにも問題がある。何度か心配そうにおばさん達がこちらに来て戻っていくのを見ながらボーッとしていた。
泊まり1日目は僕のせいで遊び所ではなくなったことが申し訳無かった。しかし明日は祭りなのだせめて大人しくしていようと強く思った。この日、僕だけ風呂に入る許可が降りず、また七彦はこの日僕らと一緒の部屋で寝起きし手伝いで度々下に下りていく気配を感じた。
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