8.団らん
気づけば私は家の中にいる。学校には行っただろうか、もう思い出せない。両親は帰って来て一家団らんしたのか、両親の顔を最後に見たのは何時なんだろう、まるで遠い過去のようにすら感じられる。気づくと何時も私は家に居た、頭が痛い。今日は何日か、何曜日か、何年か、季節は、ひとつも思い出せない。この賑やかな家の中に私は居るそれだけのことだ。
「何も心配は要らない」と言ったのは誰だったか、私か? 兄だったか? とけて輪郭は曖昧になっている。私が誰か、あれらは誰か、両親はどんな人だったのか?この微睡みも悪くない。家族は良いものだ、家は良いものだ。
「何も考えなくて良いんだよ」その声に思考はぼやけていく。誰でもない、誰か。私達家族。それで良い。何も。
子どもの笑い声がする。妹の声だったか、いや親戚の子の声だったかな、微笑ましい。私も笑う。あの子も笑う。みんなが笑う。ここにはみんながいる。ひとりじゃない。ママが微笑む、お父さんが眉をひそめる、あたしが笑う。お母さんが泣く、パパが笑う、わたしは笑う、あの子も笑う。
誰かの悲しげに話す顔を最後にちらついて、世界が笑う。もう私は大丈夫。何処にも行かない、あの子がひとりじゃかわいそう、私は微笑む。世界が成った。
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