7.問答

「七つまでは神の子」

 不意に声がした、彼だ。

「だから何?」

「ここのかんさま達は、その魂を拾い上げる」

「けれど、君たちは違う。この場合の君たちとは老人~8つの子どものことだ。よそ者って意味じゃない」

 続けざまに彼は言った「何のこと」と言い返してもどうせ答えない気がした。相変わらず顔が見えない。

「そんなことが聞きたいわけじゃない」

 苛立ちが混み上がってくるのを必死に抑える

「ぼくらの顔を見ようとしたって意味ないよ」

 その目は私をずっと離さないように見える。どういう意味なのか、言いたいことがわからない。

「誰でもあって誰でもない」だから見ようとしても見えないのだと。

「あの家が悪いわけじゃない、だけれどあそこはダメだ。この飛鳥の他なら良いがここは」ダメなんだと、悲しげに語る彼を見ていると胸が苦しい。なんでだろう?

「かんさまはよいも悪いもない、決めるのはいつだって人。そもそもあれはかんさまじゃないけど」

「きみはなんなの?」

 彼は誰なのか何者なのだ、何故私に干渉したがる。何を伝えたいんだろうか。どうしていつも悲しげにしているのか。

「何者にもなれなかったものだよ」

「何を知っているの?」

「何も知らないし、なんでも知っている」

 言っていることが矛盾している、話にならない。

「どうすればいい?」

「あの家を出ていったらいい、今ならまだ間に合う」

 そんなことはできない、私ひとりの問題で出ていける余裕が私達家族にはない。

「無理、できるならそうしてる」

「ぼくらには、ぼくには、これ以上してやれる事はない」

 彼を見ていると私の心を苦しい気持ちにさせる。何故なんだろうか。

「もう部屋の前まで来てる」

「出ていった方が良いと言ったろ」何故なら「あれは紛い物だから、聞いてはならない、見てはならない」

「そんなこと」もう意味がない。

「本来あれは何も力を持たない、なのに君が観測してしまった、だからどうにもできない。」

 顔を上げると彼はもう居なかった。



 


 すでにどうにかなる段階は過ぎてしまった。賑やかな声が家の中にあふれている。聞こえない振りをして部屋の中へ私は閉じこもった。

 


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