5.少年
「ここはもうおらん方がええ」
知らない少年が突然現れ言った、無性に苛立ち私は敵意剥き出しに反抗する。顔が逆光で見えない。
「なんでそないなこと言われんとあかんのや」
馬鹿にされている、そう感じていた、家も馬鹿にされいてると。
「あかへんのや、あかんもんはあかん」
彼は子どもを宥めすかすように言い切る
「あんたに何がわかる!」
怒りが溢れてくる。私はもうどうにもなれない。私は、私は。
「なんでもや。なーもわからんがこれだけは言える。出て行くしか救いはない」
まるで老人のような声で彼は淡々と言うそれまでの声と違う。冷たい声。
「出ていけやしない、無理なの」
本音だ、もうどうにもなれない、どうにもならない。涙がダムが決壊したようにせきとめるものがなくなってしまったみたいにこぼれる。拳を握るようにしていた手が痺れている。
「そない言うても、もうなーんもしてやれん」
彼が悲しそうな表情をしている気がした、見えないけれど。ぽつりとそんな言葉を呟いて去っていく。「おえへんのや」と言った気がした、地面にへたり込んだ私だけが残された。
下校の最中の出来事だった、彼をここにきて一度も見たことはない。不思議な少年だった、子どもなのに大人のようにも老人のようにも見える、聞こえるそんな雰囲気。
私は、しかし、それでも。
玄関を開けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます