気づかない

第5怪 増える

1.見えない 山口 梓

 私には知らない家族がいる、他の家族には見えるが私には見えない。弟だそうだ、名前はアキくん。いつからいるのかもわからないいつの間にか増えていた家族。気づけば家族と会話は成り立たなくなりつつある、両親はアキくんが見えていてあなたの弟だと言った。いつからと聞けば最初からいたのだと両親は言って聞かない。気配だけはする、小さな男の子が通り過ぎてく感覚だとかだ。見えない以上私はアキくんが居るとは言えない。


 アキくんお帰りそう言って母は男の子の顔を拭う仕草をする目に見えない誰かの居るであろう空間に向かって。私は初めて見たとき嫌な気持ちになった。

「アキくんって誰?」

そう言ってた私を母親はおかしなことを言う子だなとでも言いたげな顔で見た。

「なんでそんなこと言うの梓ちゃん」

 叱るように母は私に向かって言う

「誰も居ないもん」 

「お姉ちゃんなんだから意地悪しないの」

 私は勝手に姉になっていた。不愉快この上ない部屋に戻ってドアを凄い勢いで閉めた。苛立っていた悪ふざけが過ぎるから、母親の。

その後帰って来た父親にも「なんでアキくんに意地悪するんだ、梓」と怒られました。4人がけのリビングテーブルに4人分食事が並べてあって私の横には誰も居ない。そこに向かって両親は「アキくん」って何かにつけて話かけていて気味が悪かった。みんなで私のことをからかっているのだろうかとさえね。

もちろんいつの間にかアキくんのネームプレートがかかった部屋があって気分は最悪でしたよ。



 いつの間に増えていたんだか少なくとも赤ちゃんをあやすような素振りは今まで無かったのにある日突然のことでした。

ドア開いてないのに母親が「アキくんお帰り」なんて言うのも不気味でした。私がおかしいのか両親がおかしいのかわからなかったけど確かめるのはもっと怖くってもしみんなに見えて私にだけ見えて無かったらすごく怖いなってだから今も確かめてません。




「ただいまぁ」って家帰って言う時たまに小さな男の子がこちらに来る気配するんです。

「アキくんがお帰りって言ってるのに無視して」なんて母親が言ったのにはゾッとしましたね。で母親がいもしない男の子の頭があるであろう場所に手で撫でる仕草したりとかね。それを見る度最悪な気持ちだからひとり暮らしして実家出たんですけど。無言電話がたまにかかってきてなんとなく男の子が向こうの電話口にいる気がするんです。両親がかけてくる時アキくんの話をしたりとか気持ち悪いです。



でも一番気味が悪かったのは両親の話を聞く度に思うのですがアキくんたぶん成長してないんですいつまでも。それを不思議がらない両親も私怖くて。

 

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