蠢く

第1怪 幽霊団地 片岡 朔

1.悪夢

 息が苦しい、暗い、じめじめする。


 何処かわからない部屋に居るらしい。

 枯れた葉っぱが、歩く度、がさがさ音を立てる。服がはりつく。


 どうしてか、そこを出られずに居るらしい。


 部屋は薄暗く薄汚い、何処となく古めかしさを感じる。何かから逃げているようだ。


 ガチャッ⋯⋯ガチャッ⋯⋯。


 何者かわからないが音を立てている。

 

 ガチャッ⋯⋯ガチャッ⋯⋯。 


 不意に音が変わる、喉が渇く。  

 

 ガサッ⋯⋯ガサッ⋯⋯。ドンッ⋯ドンッ⋯。ガサッ⋯⋯ガサッ⋯⋯。トンッ⋯⋯トンッ⋯⋯。 


 音が、距離が、軽く近くなる。目視できない何者かが探している。


 誰を? 


 背中がうすら寒い。人の温度すらない手が肩を触れる、そんな想像が頭を過る。想像を掻き消そうと首を左右に振る。


 トンッ⋯⋯タンッ⋯⋯⋯トンッ⋯⋯タタンッ⋯⋯。 


 その音が妙に脳裏にはりついて動けない。この音が耳の近くまで来たらどうなってしまうのか? 


 ペタ⋯⋯ペタ、ペタッ。

 

 音だけが確かに実体を伴っている、見えない何かはこの部屋に居る。見つかった瞬間どうなるんだろ。


「■■■■■」




「はあっ⋯⋯はあっ⋯⋯」


 飛び起きた、同じ夢をここ最近何故か見る。ぼくの知らない場所にひとりで閉じ込められ、見えない相手から逃げ惑う夢を。 


 汗でぐっしょりと服が濡れている、不快感が拭えない、疲労感が溜まるばかり。いつものように両の手を見下ろす。


 あれは夢なのだとこちらが現実なのだと、自分自身に言い聞かせるように。とはいえいつまでもそんなことに時間を費やせない小学生だから。

 

 

 

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