〜流行っている噂〈下〉〜
僕は校舎に戻り、六限目までの授業を淡々とこなし、ホームルームも終えた。
「ふ〜。やっと終わった〜!」
僕は手を天井に向けて、腕を伸ばす。そして少しゆっくりして、席から立ち上がって、机の上のカバンを持つ。
僕はもう教室には用はないので廊下に出る。
廊下に出ると、部活に行く人や帰る人が行き交いするので、廊下が狭くなっている。僕は隙間を通り、一階の下足室に向かう。
階段にも色んな人が溜まっていた。人が多くてうんざりするぐらいだ。
下足室で上履きから靴に履き替える。
僕は下足室を出るとグラウンドが見える。グラウンドでは陸上部が走っていたり、野球部が一角を使って素振りをしていた。
僕は部活に入っていない。全く、入りたいと思う部活がなかったから。
でも、部活に入っていたら友達ができていたかもしれなかった。
今思っても仕方ないことだが。
僕は正門に向かって走り出す。
バスがあと五分で来る。これを逃すと次のバスは三十分後になってしまうからだ。
全力で走っていくと四分でバス停に着く。
僕はカバンからスマホを取り出して、登校時と同じように動画をイヤホンをつけて見始める。
すると待っていたバスが来た。
僕はバスに乗り込んで、後部座席に座り動画を見たところ、誰かからメールがきた。
動画を切り上げて、メールを見てみると妹の晴からのメールだった。
『お兄ちゃん、今日は肉じゃが作って待ってるから早く帰ってきてね』
よし!肉じゃがだ。
肉じゃが。それは僕がとても大好きな料理の一つ。あの味がとても美味しくて、今でも忘れられないほどに大好きだ。
僕は肉じゃがの味を想像する。と、よだれが出てきそうになる。
いけない。いけない。
僕はよだれが出てないか確認して、メールを閉じ、また動画を見始めた。
◇◆◇
僕はバスを降りて、十分ぐらい歩くと自宅に着いた。
鍵をポケットから取り出し、ドアを開ける。と、玄関に大きな段ボールが置かれていた。
まだ、開封されていないらしく、差出人は不明。だが、誰宛なのかははっきりと書かれていた。“
晴が頼んだのかな?
「お兄ちゃん、おかえり」
晴がちょうどいい時にキッチンのドアを開けた。
すると、肉じゃがのいい匂いが漂ってくる。
「うん。ただいま」
僕は笑顔で言った。
「ねぇ、これは晴が頼んだものだよね?」
僕は段ボールを指差す。
「え?」
晴はこっちに来る。
そして、段ボールをじっと見る。
「う〜ん。頼んだ覚えないけどな〜。寝ぼけて頼んだのかな⁇」
晴にもわからない。
「一応、晴の部屋の前に置いておく?」
「うん。多分、私のだと思うし、お願い。じゃ、私キッチンに戻るね」
晴はそう言って、キッチンに戻って行った。
「よいしょ」
僕は段ボールを両手で持って、二階の晴の部屋の前まで持っていき、段ボールをドアの横に置く。
僕は晴の部屋の隣にある自室で夕食までの時間の間に課題を片付けることにした。
この後、何が起きるのも知らないまま。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます