第10話 異世界①


 かなりの風変わりな景色が少年の視界に広がっていた。空を見上げると、地球にいた時と比べて、空の色が濃い感じの青色だった。遠くに見える雲が高く、昼間なのに、星々が浮かんで見える。


 空には、不思議な形をした野鳥の様な物が飛行していた。その野鳥達の群れの更に上空には巨大な飛行船が浮かんでいるのが見えた。


 洋風とも違う、どの様に表現すれば良いのか分からない風景が目の前には広がっていたのだった。


 しかも……モニュメントなのか、巨大な建造物と思える物が動いていた。


 逆三角形の建物が目の前に建っているが……支えている物は無く明らかに、宙に浮いている状態だった。


 そう思って目の前を見ると、古い形をした車が見えた。前方がオープン式の車で運転席に座っているのは、見た事の無い生物が座っており、しかもハンドル無しの状態で移動していた。


 (なんだろう……この世界は?)


 もし……虎竜が、誰かに、この世界の事を説明しろと言われても、彼の口からは、どの様に説明すれば良いのか全く理解出来なかった。


 そう思っていると、目の前に球体の様な物が浮かんで移動していた。ゴルフボールよりも少し大きめの球体を見て、彼が指で突くと、その球体はビクッと驚いた動作をして、そのまま、草むらの中へと逃げ隠れてしまった。


 不思議な光景に捉われながらも、彼はしばらく考えて色んな者達の居る方へと向かう事に決めた。


 皆が集まっている場所に向かうと、そこには先程の少女見たいな子と、それ以外に……、狐の様な顔の者、更に猫の顔をしてメガネを掛けた者、頭に角を生やした体格の大きい者等……様々な者達が集まっていた。


 彼等は虎竜を見るなり、不思議そうな表情をしていた。先に彼に声を掛けて来たのは狐の様な者だった。着ている衣服はスーツ姿で、かなり高貴な雰囲気を感じさせた。


 「■□◇■◎○○〇▽▲◎〇●△?」


 相変わらず、何を言っているのか全く理解出来なかった。


 その時、彼はハルナから手渡された水晶のペンダントの事を思い出して、それを首に掛けて彼等に向かって話し出す。


 「僕は地球と言う星から来ました」


 彼の言葉に周囲の者達は不思議そうな表情で、首を傾げたりして何か言い合う。


 「〇▽〇▽▲◎〇●△〇■◎○○〇」


 全く言葉が通じてない様子だと虎竜は感じた。


 狐の様な者が少女に何か語り掛ける。彼女は頷いた様子で虎竜に近付く、彼よりも少し背丈の低い少女……。


 藍色の様な美しいストレートヘア、大きな紺色の瞳をして、真っ白な肌の少女、民族衣装とも言える衣服に身を包んだ彼女は、虎竜が首にぶら下げたペンダントをジッと見つめると、何やら呆れたような感じで彼女は微笑んだ。


 すると彼女は彼のペンダントを首から取り外して彼の手に持たせる。


 彼女は自分の肩にぶら下げていたポシェットから、似たような水晶のペンダントを取り出し、虎竜の首にペンダントを掲げる。


 少女はペンダントを彼の胸に、ぶら下げると虎竜の胸に手を押し当てて、魔法の様な感じで祈りを唱え始めた。


 口元で何か呪文見たいな言葉を唱えると、突然水晶が輝き出し始め、2人の間合いに魔法陣が浮かび上がり、地面から不思議な発光が放たれる。


 強烈なエネルギーが解き放たれ、見えない強い衝撃波が虎竜を襲う。


 パアッと眩い光に虎竜は包み込まれた。光は数秒程で消えてしまった。


 虎竜は目眩がして、座り込んでしまった。頭の中が、見えない衝撃を喰らった様な感じで少しふらついた。


 その時だった……


 「どうだね……呪文は成功したか?」


 「一応、基礎的な魔法だから、上手く行ったはずですが……」


 ハッと彼は、目の前に立つ少女と狐の男性を見た。


 それに気付いた少女は、虎竜の顔を見る。


 「私達の言葉が分かりますか?」


 「う……うん」


 虎竜が返事をすると、彼女は「良かったです」と、嬉しそうに手を差し伸べる。


彼女に支えられながら、虎竜は起き上がった。


 「大丈夫かね?」


 「はい……何とか」


 狐の男性も、地面に座り込んだ彼の衣服から埃を払い落とす。


 「オメェ、どこの者なんだぁ」


 頭に角を生やした者が声を掛けて来た。


 角を生やした者の側に居たメガネを掛けた、猫の者がノートPCを開きながら話し出す。


 「我々の言葉が通じて無かったのを見ると、彼はシューユ星の者ではありませんね。しかし……我がシューユ星の近隣惑星には、知的生命体が生息する惑星は存在しません!つまり、彼の住む星と我々の住む惑星との間に何らかの次元の裂け目が発生し、彼はこちらの惑星へと来てしまったのです!つまりこれは……」


 「うるせえよ学者!」


 狐の男性が少し苛立った様子で猫の者に向かって言う。


 「全く……ところで、君は何処から来たんだ?」


 「あ……えっと、僕は地球という星の、日本と言う国からきました!」


 「へえ、日本ねえ……」


 「ご存じですか?」


 「聞いた事はあるかな……で、こちらに来た理由は何だい?まさか迷って来てしまったとか……?」


 「いえ、違います、魔術学園に行きます」


 「ほお……」


 「え……!魔術学園に行くのですか?」


 少女が驚いた表情で答える。


 「どうしたの?」


 「私も魔術学園に行く者です」


 それを聞いた虎竜は驚いた表情をした。


 「き……君も、魔術学園に行くのですか?」


 「はい、そうです!」


 少女は笑みを浮かべながら答えた。


 「私はフィアラと言います。よろしくね」


 「え……と、僕は虎竜と言います、よろしくお願いします」


 虎竜は、同じ魔術学園に向かう意外な助っ人が現れた事に感謝した。しかも……魔術の心得がある彼女に、既に一度助けられた様でもあり、美しい金色の髪をした少女フィアラに感謝の気持ちでいっぱいだった。


 そんな彼等の前に、角の者が近付く。


 「コタツって言うのか、魔術学園に行くには、こっからバスで移動して、駅で列車に乗り換えて、列車で孤島まで行った先に魔術学園はあるんだ!」


 「ただね……ちょっと厄介な事があってね……我々も今頭を悩まして居るのだよ」


 狐の男性が少し不機嫌そうに話して来た。


 「何かあったのですか?」


 「あれだよ」


 狐の男性が指した先へと目を向けると、そこには青色で塗られたベンチがあり、そこには1人の体格の大きい焦げ茶色の毛皮の上に衣服を着こんだ者が、横たわっている姿があった。


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