第5話 扉の向こうへ……②

 フユキと再開してから数日後……虎竜は、その日は特にする事が無かったので、昼間コンビニに買い物しに出掛けようとした。


 マンションを降りて、出入口のオートロックのシステムがある場所まで来た。マンションの集合ポストがある広間には、住人達の待機所としても利用出来る様に、ベンチ等が設けられていた。


 そのベンチの一角に、マンションの住人の知り合いかなのか………?見慣れない風姿の女性の姿があった。見た目からして20代後半かと思える大人の女性、髪は赤茶毛に染めたロングのストレートヘアで、ルックスも良く、眼鏡を掛けていた。


 彼女は、スマホの画面を見ていたが、虎竜に気付くなり、スマホをポシェットに入れて、彼女は虎竜に近付いて来た。


 「はじめまして、貴方が中崎虎竜君ですか?」


 「は……はい、そうですが。え……と、どちら様ですか?」


 「私はハルナと言います。よろしくね、まあ……立ち話も何ですから、車を用意してあるから、ちょっと移動しましょうか」


 「は、はい……」


 虎竜はハルナと言われる女性に付き添って、マンションを出ると彼は驚いた。女性はメルセデスベンツの真っ白なボディで、CLEと言うモデル名が付けられたソフトトップの車に乗り込んだ。


 「どうぞ乗って」

            

 「あ、はい」


 彼は返事をしながら車に乗り込む。


 初めて乗る高級ラグジュアリーな車の座席に乗り、その高級的な座席感覚と室内感に彼は戸惑い気味の様子を見せていた。初めて乗る車の車内を見渡すと中央部にある、ディスプレイやメーター類は最先端のシステムが凝縮されている形状で、車に無知な彼には、何がどうなっているのかさえ分からない設備だった。


 ハルナはエンジンスタータのスイッチを押して、車のエンジンを目覚めさせる。豪快なエンジンを響かせると、ソフトトップの開閉ボタンを押して、幌を開かせる。


 薄暗い室内が解放されて、眩い青空が視界に広がる。


 「では、出発しましょう」


 そう言うと、ハルナは運転用のサングラスを掛けて車を走らせる。


 「どちらまで行くのですか?」


 「近くの茶店よ」


 彼女は、そう言いながらも車を豪快に走行させた。


 (近くって……もう近隣の町を越えてますけどね……)


 虎竜は、ハルナと一緒に、ドライブに付き添われて、既に30分程が経過していた。目の前には海岸が広がっていた。


 家族であまり遠出しないので、彼は周辺景色に戸惑っていた。


 「目的地は何処ですか?」


 「もう直ぐ着くわ」


 (既に同じセリフを何度も聞いてますけど……)

 

 彼は内心で呟いた。

            

 「見えて来たわよ」


 ハルナは目の前に見える、海辺の海岸沿いの小さな喫茶店を指して言う。


 喫茶店に着くと、ハルナは小さな駐車場に車を止めて、彼女達は車から降りて店に入る。


 店内に入る前に虎竜は、店の入口に掲げられた看板を見た「アルメディアン・カフェ」と、ローマ字で書かれた看板を見た。


 (アルメディアンって……もしかして、この店は異世界と関係があるのかな?)


 店内へと入ろうと、ドアを開けると、ドアに取り付けられた鐘がチリン、チリン……と、鳴り響き、若い女性スタッフが現れて「いらっしゃいませ」と、笑顔で彼等を歓迎する。


 小さな喫茶店だが、店内はお洒落な雰囲気を漂わしていた。木造造りで天井高くに釣る下げられたシャンデリア、店の中の雰囲気も、何処か中世ヨーロッパを感じさせる雰囲気を感じさせ、店の中には大きな絵画が飾られている。  


 棚や、窓辺の隙間には、小物等が置かれて、落ち着いた雰囲気の良い空間を感じさせられた。


 店内には、彼等以外にも他にも数名の来客者がいて、彼等は海辺の景色が景色が眺められる窓際の席を選んだ。


 2人は席に腰を降ろすと虎竜はハルナを見た。


 「で……話しとは何ですか?僕をここまで連れて来て」


 「その話しの前に……」


 彼女がそういうと、女性店員がメニュー表と水とおしぼりを持って来た。ハルナはメニュー表を開いて、「何が食べたいの?」と、訪ねて来た。


 「別に……何でも良いです」


 「じゃあ、貴方はコレにする?」


 彼女が指したのはイチゴパフェだった。虎竜は黙って頷く。それを見たハルナは店員を呼んでパフェとホットコーヒーを注文する。


 しばらくして2人の居るテーブルにホットコーヒーが並べられる。


 「で……お話しとは?」


 「待って、もう少しでお友達が到着するわ」


 ハルナはスマホ画面を見ながら言う。


 「え……友達?」


 そう彼が呟いた瞬間だった、それまで穏やかだった店内のドアがガチャンと、勢い良く開きドアの鐘がチリチリンッと、けたたましく鳴り響いた。


 「こんにちは!ハルナッちはどこ?」


 彼はその声に聞き覚えがあった。出来れば夏休みの間、絶対に関わりたくない声の主がハルナと虎竜を見付けて駆け寄って来た。


 「やっほー!」


 「いらっしゃい」


 彼女達は愛想良く、挨拶を交わした。


 「中崎君もこんにちは!」


 「どうもラスボ……じゃなくて、松山さん」


 「今、私の事なんか違う名前で呼ぼうとした?」


 「いえ、気のせいですよ」


 「そう……まあ、良いけど、あと……これからは下の名前で呼んでくれて良いよ」


 「番長ですか?」


 彼の言葉に松山は「は?」と、首を傾げる。


 「詩織で良いよ、てか……なんで番長になるのよ?」


 「何時も学校で、何かと怒っているじゃない」


 「あれは貴方に注意してあげて居るのよ。少しは感謝しなさい!アタシが居なかったら、貴方、だらしない学園生活送っていたわよ」


 「まあ……詩織ちゃんも来た事だし、貴女も何か注文したら」


 ハルナの言葉を聞いて、詩織は虎竜の前に置かれたイチゴパフェを見る。


 「アタシも彼と同じのを注文しようかな?」


 「だったら、食べて良いよ。まだ手を付けて居ないから」


  虎竜は詩織にイチゴパフェを差し出した。


 「良いよ、アタシは自分で注文するから……」


 そう言って詩織は、特盛の方を注文した。


 3人が揃ったところで、ハルナが虎竜に話しを始める。

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