第11話 ニンジーンズの直談判
朝。普段通りに太陽は上り始めている。洞窟式の望月家の前には大月誠がいる。今日は潜入ではなく直談判ということで望月政志は普段通りのスカイブルーと白の流水模様の和柄をした羽織を着ている。
「望月、お前本当に天野がのこのこと会ってれる思っているのか?俺たちは一下級貴族だぞ?」
「うん。普通に。会えなかったら強行突破だ」。あまりにあっさりというので大月は肩をすくめる。
「お前のその自信、買えるものなら買いたいよ」。
「いや、買う必要はない。お前はこの短時間で急成長している。自身の自信は十分だろう。お前がいなかったら今の俺はここにいない。本当にありがとう」。
「お前、そのダジャレ寒いぜ…」。
「ふん。じゃ、行くか!」
ぴょんぴょんと飛び続けること三十分。ムーンキャッスルほどではないが大きなコンクリート作りのビルが見えてきた。朝早くからチカチカと窓が光っており、眩しい。あの中にエリート貴族が敷き詰められていると考えるとなんだか不思議な気分になる。
大きな自動ドアが開くと目の前には受付があり、清楚系のお姉さん兎が美しい姿勢で立っている。そこへ望月がどすどすと歩いていく。
「天野月次郎に合わせてくれ!」突然の要求に戸惑うお姉さん。大月がすこし落ち着かせようとするも一切止まることなく、天野月次郎と叫び続けるのでフロアにいた官僚から迷惑そうな視線を向けられている。すると望月がお姉さんと交渉を始めた。
「そこの受付のお姉さん。僕たち近々ボーイズグループに入る予定なんだ(大嘘)。名前は…『ニンジーンズ』って言うんだ。そこでもし今、天野と合わせてくれたらお姉さんに毎年限定グッズを山盛りあげようと思うんだ。どうだい?特別だよ?」
「結構です」。即答。心が折れる望月。おそらく望月のグッズの需要はゼロ。なぜこんな交渉しかできないのだろうかと頭を悩ませる大月だった。そんな時、館内放送がなった。
「受付前にいる望月政志君、大月誠君。二十七階、部長室2にきなさい」俺たちを見ていた官僚たちがどよめく声がする。その中には、あいつらなにをしでかしたんだ…?、ああ、かわいそうに…などという声が四方八方から聞こえる。この雰囲気からおそらく天野本人だろうか。大月が固唾をのみ、立ちすくんでいると
「っしゃ!こいや!」望月は気合を入れ颯爽とエレベーターに乗り込む。その背中を追う大月。新たな戦いの火ぶたが今、切られた。
「ええ。ははは、お孫さんが。へえー、ご立派ですね。将来が楽しみです。」
ムーンキャッスル執務室にて見華月下弦の守が話していたのは日本の東京都に本社を置く株式会社アマテラス重工の社長、最上新一だった。アマテラス重工は日本を代表する大企業である。もちろん、人間が運営する会社だ。今、見華月と最上は月と地球で宇宙間電話をしているところであった。
「いやあ、ところで見華月さん。例の物の提供これからもよろしくおねがいしますよ。お宅のところは安くて本当に助かる。」
「ええ、もちろんです。こちらもたくさんの金銀、餅に高級人参をいただけてうれしい限りです。」
「疑問なんですがどうしてここまで低価格で我々に提供ができるんですか?地球じゃできっこないことですよ」
「うまく私が取り持ってるんですよ。人参をたくさん民(うさぎたち)に与えるんです。すると喜んで作ってくれるんですよ」
「すばらしいご手腕で。今後も期待しておりますよ」。
「お任せください。では。」
電話は終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます