第10話 新たな黒幕

 三匹でぴょんぴょんと帰っている際。少し張り詰めた空気が流れていた。そんな時、妹さんが口を開いた。

「望月ATMさんかっこよかったですよ!まあ、人参を貰えなかったことは不満でしかないですけど」。

「ATMは余計。ところで誠、恩納月区長の言っていた天野って人物知っているか?」

「ああ。天野月次郎(あまのつきじろう)、歳は三歳(人間でいう三十四歳)ぐらいだ。ポストは法務相民間部部長、お偉いさんだ。民間部だから俺たちの家業みたいな民営を法的に監視する部門だな。で、その天野月次郎はなんでも親のコネで政府組織に入ったことで有名だ」。

「親のコネ?」

「何を隠そう天野月次郎の父親は経済大臣。つまり経済相の長。かぐやの君、上弦、下弦の守に続いて絶大な権力を持つ」。

「よし、その天野月次郎に明日にでも直談判しに行く」。

「ジ、ジカダンパン?お前、易々と会えると思うなよ。相手は部長だぞ」。

「時間がない。これしか方法はない、誠も来るか?」。

「お前のそういうところ…嫌いじゃないね。もちろん行く」。

「じゃ、じゃあ私もついていく!」人参依存の妹さんが名乗り上げる。

「いや、もう疲れてるだろう。明日は家で休みなさい。パーティにも潜入してもらい、大量の人参も見てつけてくれるといい、あなたの働きには大いに助けてもらった。ありがとう」。

「へへへ。て、照れるじゃないすか!ATMさんったら!」照れてもらうには何でもよいがいい加減ATM呼ばわりはやめてほしいものだ。横で俺と妹さんが楽し気に話していることをみている誠は何やらにやにやしていた。


 

 そんな時。天野月次郎のいる法務相民間部部長室にて、一本の電話が入った。

「もしもし、天野です」。

「も、申し訳あああありまっせんでしたあ!」

全身全霊の謝罪を聞いた天野月次郎は戸惑う。その電話の向こうではいい年したおじいさんがびくびく震えあがっているのが耳からでも分かる。

「す、すいません、どちら様です?」

「く、区長の恩納月です…」

「ああ!恩納月さん!その節はありがとうございました。」

「そ、その件なんですが、じ、実は当の望月にばれてしまいまして」。

「…」。

「証拠もすべて取られ、すべてを話してしまい…ち、近々、天野さんの元に来ると思います」。

「なっ!私の名前も言ったのか!」

「ももうしわけ…」

「ふざけるな!!君には失望したよ…。次の区長のポストは君にはないと思いたまえ!」。

「そこをなんとか!何でもしますので…」。

「もういい!この件は私がすべてをもみ消す。もちろんの事ながら送った人参もすべて返したまえ!」。

受話器の向こうでため息が聞こえる中、強引に電話を切った。その後天野は電話器をまるごと投げ飛ばす。

「私なら、私ならうまくできる。大丈夫だ…。きれいさっぱり対処できれば見華月さんにも…」

天野月次郎は一人、部長室でつぶやいた。

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