第32話 アーサーの目的

 頭を下げたまま、国王は魔王へそう伝えた。

「この事は、隣国の王へ伝えよう。貴殿の謝罪は、届くはずだ」

 魔物にも偏見なく受け入れてくれた隣国の王を思い浮かべながら、魔王は確信を得る顔になった。

「そなた達にも苦労と迷惑をかけてしまった。本当にすまない」

「いえ、国王様は国を思ったからこそ、そう判断されたのです。王の民を思う気持ちは、私達にも伝わっていますよ」

 ジョージが、はっきりと国王へそう言い切った。魔物から国民を守りたいから、先に魔物を退治しようとしたのだ。

「エリー、お主のおかげで魔物との対立を避けることができた。心から感謝する」

 顔を上げた国王は、今度はエリーへ深く頭を下げる。

「いえ、国王様のおかげで、ダンクさんの無実が証明されました。ありがとうございます」

 昨日、ダンクからの証言を聞いたエリー達はすぐ自国の城まで戻り、王子を助けてきた事を報告した後、褒美としてまずダンクの件を調べてもらった。

その結果、『ダンクが店のお金を横領した』というのは、店主の息子が仕組んだでっち上げだった事が判明し、ダンクは無実だった、と証明されたのだ。

 なお、店主の息子がそうした理由は、片思いしている看板娘とダンクが恋仲だったからだ。ダンクがいなくなれば看板娘と結ばれる、と思い込んでいたらしい。

 しかし、看板娘はダンクの無実を信じていた。そして今日、ダンクは恋人である看板娘と再会でき、店主の息子が逆に牢へ入れられることとなったのだ。

「あの青年にも礼を言わなければならんな。彼の証言がなければ、さらに戦いが起こる事になっただろう」

 ダンクは「冤罪を晴らしていただけで十分です」と答えるだろう。エリーは、心の中でそう思った。

「あの、国王様、私からの願いはどうなりました?」

 アーサーが、昨日国王へ褒美として言った願いについて聞いてみた。

「ああ、お前達の出身の村の村長の息子についてか」

 アーサーが王子救出した褒美として申し上げたのは「出身地の村の村長の息子の悪事を暴いてほしい」という事だった。

 まだ子供だった頃、アロガンはアリスへ酷いセクハラをしようとしたのだ。それを止めたアーサーは、アロガンによって周りの大人から「暴力をふるう悪ガキ」というレッテルを貼られてしまった。

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