第33話 魔法使いへの提案
アリスは、何度も訂正したが、誰も信じてくれなかった。だから魔王を倒した褒美で、アロガンの悪事を認めさせようとした。
「昨日から使者を派遣して、村人たちへ聞き取り調査をしたところ、何人もの被害者から証言が出た。さすがに村長も認めて、今日から牢へ入れて反省させるそうだ」
「やったあ!」
アーサーとアリスは、手を取り合って喜んだ。ついに、長い間抱えていた無念を晴らせたのだ。
エリーは、他の女の子達がもうこれ以上苦しまない事にホッとしていた。あの時、自分も襲われたが、魔王が助けてくれたので、体の方は傷つかなくてすんだのだ。
「それで、我が妹アリスとの結婚の件についてですが…」
アリスから手を離した後、アーサーは改めてそう話し始めた。
「ギルド長の件は、国王様が隠蔽してくれたおかげで周りに知られずにすみましたが、このままだと魔法使いの地位が低下してしまうのも、確かです」
平和な世の中だと、魔法使いは不要になる。そんな考えがあったからギルド長は今回の事件を起こしてしまったのだ。
「とはいえ、私が君と結婚したとしても、一時しのぎにしかならないと思うが…」
王子が昨日、あんなに悩んでいた理由は、根本的な解決にならないのでは?と思ったからだ。平和な世の中でも、魔法使いが必要とされるにはどうしたからいいか。
「新しい魔法を開発する、というのはどうですか?」
エリーからの提案に、一同は「え?」となる。国王と、王子だけでなく、魔王も注目した。
「怖いのは魔物だけじゃなんです。盗賊もそうですし。そんな怖い人達から守るための、新しい攻撃魔法を作ったらどうですか?」
今までの攻撃魔法は、魔物と戦うために強力な威力なので、人間相手だと確実に命を奪ってしまう。だから人間に対して使ってはならない、いう決まりがあった。
「確かに、悪い人間を倒すための攻撃魔法を使って守れば、まだ支持を得やすくなる。まず、それを開発してみてはどうですか?」
王子から提案され、アリスは少し考えた後「やってみます!」と返事をした。
「それに、魔法使いの地位を高めるための方法として私との結婚を提案したのなら、無理に結婚しなくてもいいのでは?」
さらに王子からそう言われ、アーサーだけでなくアリスも「…そうですね」と納得したのだった。
それから、アリスが新しい魔法使いのギルド長となった。
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