第29話 真相 その➂

「…えっ⁉」

 地下室の奥の方にいた女達が悲鳴を上げた。さらに、ジョージの後ろから杖を握ったエリーが現れたのを見て、さらに驚きの悲鳴を上げる。

「あなた達は…⁉」

 その声を聞いたエリーは驚く。悲鳴を上げた女達は、エリーと共に討伐隊に加わっていた同じ教会の修道女達だったからだ。

「どうしてここに…⁉」

 昼過ぎから『町へ出かけていた』と報告があったが、なぜ夜になっても城へまだ戻ってなかったどころか、魔法使いギルドに居たのかジョージも分からなかった。

「あなた達が、あの魔法をかけていたのですね」

 エリーが三人組の修道女の前まで来て、確信するように聞く。真っすぐな目で見詰めるエリーからの視線から目を逸らしながら、真ん中に居た深緑色の髪の修道女は渋々答えた。

「…魔法使いのギルド長から頼まれて…」

「…けっこう貰えるし、これで欲しい物が買えるから」

 続けて、右側に居た茶髪の修道女が言う。教会での生活は質素だから、お洒落な洋服を買う事すらできない、と言わんばかりに。

「…本当は、魔法使いになりたかった。でも、親が『平和になったら、魔法使いじゃ食べていけなくなる』って言われて、無理やり教会に入れられたし」

 左側の黒色の髪の修道女が、不満な顔で呟く。

「そう!このままだと我々魔法使いの地位は低くなる!だから新たな共通の敵を用意しなければならんのだ‼」

 突然、ギルド長がそう叫んだ。まるで、なぜこんな事をしたのか説明するように。

「お前たちが隣国で魔王を倒したとしても、我々が魔物の死体から作った着ぐるみを囚人達に着せて暴れさせれば、国民は恐怖に怯え、魔法使いを頼ってくる!これは、我が魔法使い達のために必要な行為なのだ‼」

 魔王を倒して、魔物がいなくなったとしても、新たな敵を用意すればいい。ギルト長はそう考え付いた。

「だからと言って、囚人たちを脱獄させ、国民達を襲わせるのは危険な行為だ」

 国民を守る騎士の一人として、ジョージの顔が険しくなる。魔法使いの必要性を認めさせるためなら犯罪者を逃がし、国民に危害を加えても構わない、と言っているのだから。

「…あの、アリスと王子様を結婚させる、と言っていませんでした?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る