第28話 真相 その②

 ジョージがそう答えると、冷静な魔王が眉をひそめた。まるで「なんの話だ?」と言わんばかりに。

「…あの、それは違うと思いますよ」

 ずっとエリーの魔法で、姿を消したままだったダンクが、静かな口調で言い始めた。

 

 その日の夜、エリー達の国の魔法使い達のギルドはもう営業を終えたはずだった。

 しかし、地下室では何か声がしていたのだ。しかも、何人もの声が。

 黒いフードで顔を隠した、ローブ姿の魔法使いが立っていた。そしてその前に立っていたのは、いかにもガラが悪い、と言わんばかりの大男だ。

 黒い囚人服を着ていた男へ、魔物の皮で作った着ぐるみが着せられていく。頭まですっぽりと覆い、どこからも見ても三本角の熊の魔物の姿となった。

 その近くで、若い女達の声が聞こえた。全員、何やら呪文を唱えている。

魔物の体が淡く光ると、黒いフードの人物が近づいてきた。そして、耳元でこう囁いたのだ。

「いいか、魔物のフリをしていれば、ずっと好き勝手に生き延びられる。死刑にならなくてすむんだ」

 大男は、多くの金品を奪ってきた盗賊だった。死刑になるところを、なぜかこの黒いフードの男が牢から連れ出してくれたのだ。

「では、外へ行こう。お前たちはもうしばらくここで待機していろ」

 そう言いながら、右手からいくつもの金貨を渡す。両手でそれぞれ受け取った若い女達は「わあっ」と歓喜した。

 黒いフードの男がドアへ向かうと、

「…これは、どういう事ですか⁉」

 ドアが開くと同時に、アリスが叫んだ。


「ア、アリス…⁉」

突然現れた、所属している魔法使いに黒いフードの男は戸惑う声を出した。

「ギルド長、説明していただきたい。なぜ、囚人に魔物のフリをさせたのか」

 アリスの後ろから、ジョージが質問してきた。騎士まで来たので、黒いフードの男=ギルド長はさらに慌て始める。

 すると、ギルド長の後ろに居た魔物が。鋭い爪で襲い掛かった!だが、その爪がアリスへ届く前に、大きな光る箱に閉じ込められたのだ。

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