第27話 真相

 無理やり抱きしめられ、口を塞がれたエリーが恐怖に怯えた瞬間、急に体を締め付けていた両手が力を無くしてエリーを解放したのだ。

 振り向くと、銀髪の美しい青年が立っていた。その美しさに、エリーは怖さを一瞬で忘れてしまうほどだった。

 見とれていると、青年は口元に笑みを浮かべて去っていった。その時、近くの茂みから「魔王様」という声が聞こえてきたのを、エリーは聞き逃さなかった。

「じゃあ、その時エリーを助けたのが、この魔王だったってことか⁉」

 目を丸くするアーサーへ、エリーは「うん」と言い切る。

「ああ、あれは遠征の帰りにたまたま通りかかった時、悪質な輩がいたから成敗しただけだ」

 かすかに不機嫌さを含ませながら、魔王はそう説明した。

「つまりエリーは、襲われたところを助けてくれたから、俺が魔王を倒すのを邪魔したというわけか」

 魔王退治の手柄をなかったことにされたのだが、アーサーは責めることなくエリーからの説明を聞き入れた。

「…エリー、怖い思いをしたんだね」

 アリスが、肩を震わせながら俯く。まるで、同じ思いをしていたように。

「私はお前達が城から逃げ出す際に、結界の中に入れられていたんだ。先ほど、解放されたのだが」

 エリーが途中で居なくなったのは、魔王を結界から出すためだった。そうしないと、今回の事件は解決できない、と判断したからだ。

「…あなたが、兄を守ってくれたのですね。ありがとうございます」

 鎧姿だが、魔王の妹が礼を声から微笑んでいる事は伝わってきた。

「…ごめんなさいね。今、解放します」

 サッと片手を上げると、王子を捕らえていた黒い霧は瞬く間に消滅した。

 床に座ったまま捕らえられていた王子は、安心して全身の力が抜けたように体制を崩す。すかさずアリスが、王子の傍に駆け寄って丁寧に体を支えた。

「…しかし、王子は助け出すことは出来たが、魔王の件はどうすれば…」

 ジョージは腕を組んで、困ったような顔になる。

「どうして、お兄様を倒そうとしたのですか?」

 魔王の妹が、ジョージ達へ質問してきた。

「この国が魔王に占領された、と王様が聞いたから、それで私達の国へ攻め込む前に先手を打って倒そうとしたんだ」

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