第26話 理由
「…ん?待てよ、確か城は昨日壊れたはずでは?」
ジョージが魔王の妹の話を聞いた後、ある事に気づいた。
「いえ、私が着いた時に城は壊れてなんかいませんでした。この城には、昨日の真夜中に着いたのですが…」
敵である人間にも関わらず、魔王の妹は丁寧に説明する。
「…ちょっと待て⁉俺は確かに魔王を倒したんだぞ!」
昨日戦った時、確かに魔王の首を貫いて倒した。そして、今戦ったのは、鎧を着こんだ妹の方だとは分かった。もし昨日戦ったのがこっちの兄の方だったとしたら、一日足らずで復活したとなる。
だが、兄である魔王の首には、傷跡が全くなかった。そう最初から怪我などしていないように。
「助けられたのだよ。お前達の仲間に」
魔王がそう振り向くと、そこには杖を強く握っていたエリーが近づいてきた。
「エリー、どういう事だ?」
なるべく責める口調にならないように、ジョージは質問する。
「昨日、この修道女が幻覚の魔法を使ったのだろう?」
エリーが答える前に、魔王がそう話す。その言葉にアーサー達は「あっ!」と思い出した。
「確かに、エリーは幻術を使った!それで魔王を倒せたんだ!」
エリーの魔法のおかげで、魔王を倒せた。アーサーはそう証言した。
「だが、お前はその術で『魔王を倒した』と思い込まされたんだ。この城が崩壊した、というのも、その場に居た人間が幻術でそう思い込まされていた」
魔王からの話に、エリーは無言で頷く。そう、魔王が言っていることが真実だ、と。
「ど、どうして⁉」
エリーの信じられない行動に、アリスは叫ぶ。それは国王からの命に背く反逆行為だったからだ。
「…魔王さんは、私にとって恩人だから」
やや俯いていた顔を上げ、エリーはその理由を話し始めた。
エリーがまだ村の施設に居た頃、同じ施設の女の子達が次々と夜に怯え始めた。
まるでお化けが来る!という様子だったが、その時のエリーは特に気にしていなかった。
しかし、ある日の夜、エリーは水を飲みに施設の外の井戸まで来た時、突然後ろから襲われた!
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