第20話 エリーの信念と、その理由
アーサーは安心させるように笑顔で返す。そして折れた剣を一旦鞘にしまうと、猟師を支えるために右手を差し出した。
「ねえエリー、前から思っていたけど、なんで魔物まで守ろうとするの?」
人を襲おうとした魔物を結界で閉じ込めた事で不満を思ったわけではなく、ただ疑問に思った。そんなアリスへ、エリーは少し俯きながら、こう答えたのだ。
「傷つけるのが、怖いから…」
エリーからの答えに、アリスは思い出した。一緒に魔法使いの養成所に通っていたころ、エリーが数か月でどんどん強力な魔法を使いこなせたのを妬んだ他の子供達が、人気のない養成所の運動所に呼び出してエリーへ攻撃魔法を放った時、咄嗟にエリーが最大級の攻撃魔法で逆にその子供らを大怪我させてしまったことを。
その後、駆けつけてくれた隣のアミナ教会の司祭長が。瞬く間に怪我を治した。その光景に、エリーは教会で「回復魔法を学びたい!」と強く決意したのだ。
その後、事情を知った養成所は、エリーが教会で修道女になる事を認めた。なお、その子供らはエリーへ攻撃魔法を放ったことがバレ、次の日に養成所を辞めさせられたのだった。
「あれは、妬んだあいつらが悪いのよ。親がいない事をいつもバカにしていたから」
実は同じように陰で嫌がらせをされていたアリスは、エリーを庇った。もっとも、アリスは実力を身に着けて、一番の成績でギルドへ入った事で周りを見返したが。
「でも…、平気で誰かを傷つける人になりたくないから」
今でも、エリーのトラウマになっている。村の施設に居た頃の、アロガンからの嫌がらせも影響しているかもしれない。
「あ、あれ!」
アーサーの手を握る前に、猟師が叫びながら指を指す。その先には、大きな一本の木があった。
「‼」
その木の陰に、同じ熊の魔物が居たのだ。だが、まるで木の陰に隠れているように見えた。
アリスが、杖を構えて呪文を唱える。が、
「待って!」
強い口調で、エリーが止めた。その剣幕に押され、言葉が出なかったアリス達を残しエリーはその魔物へ近づいていく。
「あ、危ない!」
猟師が悲鳴を上げるが、振り向いたエリーは微笑む。それを見たアリス達は一瞬、エリーを止める事を忘れてしまった。
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