第19話 村人たちを助け出せ!

 光る箱は、熊の魔物を閉じ込めた。三つ編みの少女を襲おうとしたその魔物だけでなく、金品を奪った魔物も、瞬時に閉じ込められたのだ。

「もう怖くないよ」

 幼女に駆け寄ったエリーは、膝をついて優しく声をかける。幼女の緊張の糸がぷつんと切れた時、走ってきた老女が幼女を強く抱きしめたのだ。

 老女の腕の中でわんわん泣く幼女を見て、エリーは間に合った事にホッとする。

「うわー!」

 少し離れた場所から、男の悲鳴が聞こえてきた。エリーは「失礼します!」と声をかけた後、悲鳴がした場所へと向かっていった。



 木々の間の場所を、熊の魔物が我が物顔で歩いている。

 狙う獲物は、この近くの町から来た中年の猟師だ。何本もの矢が放たれたが、鉄より硬い魔物の体には刺さりもしなかった。

 すでに戦う意思を無くした猟師は、逃げ惑うしかなかった。そして今、熊以上に鋭い爪が猟師の頭へ振り下ろされようとしたその時、

「待てーっ‼」

 叫び声を共に、アーサーが魔物の後ろから剣で背中を刺した。

 だが魔物の体は固く、剣が折れてしまった!

「何っ⁉」

 半分に折れた剣を見て体が固まったアーサーの横まで来たアリスが、呪文を唱え始める!

「―⁉」

 突然、魔物が光る箱に閉じ込められた!

「エリー!」

 同時に振り向くと、十歩ほど離れた場所で、杖を構えたエリーが立っていたのだ。

 「間に合ったあ…」

 両手で握りしめていた杖を下ろしながら、エリーはホッとする。

「…あ、ありがとう」

 猟師はまだ震えながら、アーサー達へ礼を言った。もしアーサー達がいなかったら、生きていなかったかもしれないからだ。

「どういたしまして」

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