第18話 魔物が出た!?

 エリーも、アーサー達と一緒に行く事を選んだ。エリーは他の子供達を残していくのに罪悪感があったが、アーサーとアリスは村から抜け出せる事を喜んだのだ。

 それを知ったアロガンは頭に血が上ったが、大人達が喜んでいたので表向きは快く送りださなければならなかった。その顔を見たアーサーとアリスは、心の中で舌を出していたのだった。



「大変です!魔物が出ました!」

検問所に着き、その中で隣国への出国手続きをしていたエリー達の元に、一人の兵士が息を切らしながら走ってきた。

「どこに⁉」

「この近くです!住人が襲われている!と報告がありました!」

 ジョージが聞くと、兵士は続けそう答える。ジョージの後ろに立っていたエリーは、すぐさま駆け出したのだ。

「あっ!エリー⁉」

「ありゃ助ける気だな!」

 困っている人がいると、条件反射のように助けに行く。エリーの性格をよく知っている兄弟は「やれやれ」という顔になると、後を追いかけたのだった。


 検問所のすぐそばにある森の中に、いくつもの悲鳴が響く。

 額に三つの角がある熊が、紺色のワンピースを着た老女へ鋭い爪を振り下ろしていた。

 老女は間一髪よけられたが、両肩にかけていた籠が壊れてしまった。それを見た熊の魔物は、老女より籠の中にあった果物へ手を伸ばした。

 するともう一体の熊の魔物が、果物をむさぼり食っていたその魔物に近づいてきた。その魔物の手には、数個の財布が握られていたのだ。

 慌てふためきながら、老女は魔物から逃げようとする。なぜ、魔物は人間が使う財布を持っていたのか、その不自然さに気づくことなく。

 「おばあちゃん!」

 その二匹の魔物から少し離れた場所で、幼女が立ちすくんでいた。六歳ぐらいの、赤いエプロンドレスを着た少女は震えており、目にいくつの涙の粒が流れている。

「いた!」

 エリーが杖を構えながら、呪文を唱えた。 

「守りの女神アミナ様!彼の者達をお守りください!《守りの光り箱》!」

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