第17話 エリー達の過去

 すかさず攻撃呪文を唱え、綺麗なバラの花束をためらうことなく瞬殺した。

「―あ⁉」

 一瞬で燃え上がり、灰となって風で向こう側へと散っていった花束を見てエリーはあたふたする。

「…え、えっと」

「花には罪はないけど、あんな奴からもらったから…」

 アリスは顔を曇らせながら呟いた。だが、アロガンに対する嫌悪感がにじみ出てきたのだ。

「エリー、お前も分かってるだろ?あいつのせいで、みんなが苦しんでいた事を」

 アーサーからの言葉に、エリーは俯く。エリー自身も、アロガンによって何度も辛い目に遭ってきたからだ。

「…近くに村があったな。だからアロガンが通りかかったかもしれん」

 ジョージはふと思い出したように言う。エリー達が生まれ育った村が、国境の近くにあった事を。

「…もう、戻る気はないけどな」

 子供の事にされた嫌がらせを思い出してしまったアーサーは、今なお許せない怒りを心に秘めていた。



 エリー、アーサーとアリスの兄妹、は物心がついた時から親がいなかった。

 三人とも『親は魔物に殺された』と聞かされていた。それで、村の中にあった施設で暮らしていたのだ。

 アロガンは、その村の村長の一人息子だ。当時から、エリー達施設の子供をいつも見下しており、召使のようにこき使っていた。

 大人の前では優等生のようにふるまっていたため、周りの大人は信じてくれなかったのだ。アロガンが施設の子供達をいじめていたことに。

 それからしばらく経ったある日、まだ騎士になったばかりのジョージが村に訪れた。

 久しぶりに会ったジョージに、アーサーとアリスだけでなくエリーも懐いていた。ジョージにとってエリーは大事な親戚の子供の友達だったからだ。

 その時、ジョージはアリスの顔がかなり暗いのに気付いた。アーサーが小声で事情を話すと、すぐ「一緒に首都へ行かないか?」と持ち掛けたのだ。

 そこには、子供でも入れる騎士や魔法使いの訓練所があり、寮生活をしながら訓練ができる。それを聞いたアリスとアーサーは「ぜひ行きたい!」と叫んだ。

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