第16話 望まぬ再会

「事後処理のためだ。隣の国の王と話をする準備をするためにな」

 ジョージも、警戒しながら話す。アリス達三人を、かばうように。

「何そんなにピリピリしてんの?ガキの頃、同じ村で育ってんのに?」

 アロガンは「やれやれ」と言わんばかりの態度だ。そんなアロガンに対し、アーサーは心から湧き上がる怒りをどうにか抑え付けていた。

「そうそう、これお祝い」

 そう言いながら、アロガンは右手に持っていた大きな花束を差し出した。

 薔薇の花をメインとした、豪華な花束だ。アリスに向けられた事から、見ようによってはアリスへのプロポーズに見える。

「…なんのお祝いだ?」

「魔王を倒したお祝い。そうそう、俺ようやく来月に村長になるから、って事でウチの村への支援をよろしく」

 怒りを滲ませ始めたアーサーへ、アロガンはなめた態度でバラの花束をアリスへ渡そうとする。

「…エリー、悪いけど代わりに受け取ってくれない?」

「…ええっ⁉」

 突然そう言われ、エリーは動揺する。

「エリー、絶対にアリスへ渡せよ」

 アロガンは、そう言いながらエリーへ花束を押し付けた。

「…ええっと⁉」

 混乱しつつも、エリーは花束を何とか受け取った。

「行こう、みんな」

 ジョージの凛とした声が、エリー達にかけられる。その声にエリー達は少し落ち着いていった。

「それでは、失礼します」 

 ジョージとエリーは一礼をすると、足早に国境へと速足で向かった。


「…これ、どうします?」

 アロガンから完全に離れた後、エリーは押し付けられた花束を見て困った顔で聞く。

「こっちに渡して」

 アリスはエリーから花束を受け取ると、それを高く放り投げた。

「戦の男神バリガ様!目の前の敵へ炎の矢を!《灼熱の矢》!」

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